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本文伏字なし
曲パロ ¦ シンデレラボーイ ♪
頭では分かっていたはずだった。
それでも、自分だけが。自分たった一人が、あの人を愛していただなんて。
『考えてなかった、はずなんだけどな』
そう独りごちって、リビングの机に突っ伏す。
なんとも言えないしっとりとした冷たさが頬に触れ、じんわりぬるくなる。
そんな僕の目の前に散らばるのは、僕には縁もゆかりも何もない愛の巣のメンバーズカード。
分かっている、相手はホストだ。しかもNo.1の。
今更枕営業がどうだなんだと、そういう事は分かり切っている。
『せめて、一言でもいいから言ってくれなかったかなぁ』
嘘。「俺枕営業してるから!」とか言われて納得する恋人がどこにいる。
もっと僕だけに、弱いところも、無邪気なところも、格好いいところも優しいところも。
全部、僕だけに見せてほしかった。
僕には何もないから。
ただ愛してくれる不破さんしか居なかったから。
『それに依存するのって、おかしなこと?』
口から乾いた笑い声が漏れる。僕らしくないなとか、今更考える。
突っ伏すのをやめて、背もたれに全体重を預けて天井を仰ぐ。
綺麗な家。多分僕の。これから僕のじゃなくなる僕の家。
時刻はとっくに天辺を過ぎている。
不破さんと交際してから、この時間まで不破さんの帰りを待っていることが多かった。
「甲斐田はちゃんと俺の帰り待てて偉いな」、なんて。そんな風に言われて撫でられるのを心待ちにして、勝手にワクワクして。
こんなことに慣れたくなかった。慣れさせないでほしかった。
僕をこれ以上、壊してほしくなかった。
ひた、と僕の虹彩辺りから水が耳へ、首筋へと流れ落ちる。
せめて、不破さんの前で泣きたかった。心配してほしかった。
ふと視線を机に戻すと、スマホに一件の通知。不破さんから。
心臓がきゅっと引き縮む。
今更「終わりにしよう」、なんて言われたらどうしようだとか、
「今日は別の女と寝る」、とか言われたらどうしようか、だとか。
じゃなくて。
「好きだよ」って、その四文字だけが来るのが一番怖い。
どうせ好きじゃないくせに。
愛してなんかないくせに。
〈 風呂頼むわ 〉
それだけ。
あぁ、こいつはまだ僕を利用するんだなって。
今だけは全世界が敵で、こいつが世界のボスなんだって。
立ち上がって、ティーポットと茶葉、薬袋を取り出す。
『次はちゃんと、一途に僕だけを愛せる不破さんになってくださいね』
そんなことばっか強請って、茶を沸かし始める。
全ては、僕と不破さんが、
一緒に死ぬまで解けない、シンデレラの呪い。
コメント
1件
もうね、読み終わってからずっと胸がギュッてなってる😭💔 「好きだよ」の四文字が一番怖いとか…わかるよ、その感覚、痛いほど伝わってくる… 薬袋出して、茶を沸かすシーン、冷めた優しさと執着が混ざってて切なすぎる…… ぺぽ゜さんの描く“依存と諦め」の空気感、すごくリアルで鳥肌立ったよ…👏✨ 続きどうなるんだろう…一途な呪いがどんな結末迎えるか、めっちゃ気になる…!