テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
卑怯者のたわごと。
私はワガママさんだ。
なぜなら、弱みすらも、愚かさすらも好かれたいからだ。
それは、克服する億劫さがゆえか、立ち向かう怖さが故か、どちらにせよ楽したいのか。
どちらかでなく、どれもだ。
そして、少なくともこんな事を思うのも、進行形の時間稼ぎだ。
そんな戯言を塞ぐようにチャイムが鳴る。
彼が友達に手を振り、席に戻る。 号令し、席に着く。
私は彼の横顔を、視界に収める。
光を溜めた瞳に、ゆっくりと長いまつ毛が下りる。
そして、また潤った瞳が焦点を合わせ始めている。今日も私はひとつ、それになにか奪われた。
日々奪われ続けている。いや、捧げている、貢いでいる?
少なくとも悪い気はしないね、ほんとに。
「次は、安達。ここの答えは出てるか?」
「あっ、はい。」
スラスラと答える彼。一つ一つの言葉に伴う声の重みが心地いい。これから告白されることも知らないで、あんなしおらしい姿勢をしている。
そう、私は告白をするのだ。彼に。今日。
募る思いを声に出すのだ。彼に、私を見せるのだ。
授業が終わり、放課後となる。
赤茶けた教室には野球部の掛け声や、吹奏楽部の演奏が響く。
そして、手紙で伝えたことを守った彼は、教室に残っていた。気づけば、教室には私と彼の2人。
1つ席をとばした席に、彼はいる。
私は口を開く。
「安達くん。ありがとう、教室居てくれて。」
彼は長く息を吸い、答える。
「……告白だよね?…」
その言葉に、頭からつま先までを、一気に熱が襲う。バレてんじゃん、おい。
「あれ……ちがう?」
「いや、告白だよ。……このクラス割と可愛い子居るけど、みんな怖いよ?」
「まじ?」
「うん。女子だからわかる。」
「わかるんだ?」
「……うん。だから、悪いことはいはないから、私にしちゃいな?」
そこからの記憶は薄い。上手く息継ぎができてなかったのか、軽い酸欠になっていたらしい。
顔が好調して、鼻や耳に熱が集まる。瞬き一つするのにも、勇気と自信が必要だった。
でも、そんな満身創痍になりかけだった私が唯一聞こえ、未だ響いている彼の言葉は、
「それじゃあ、そうさせていただきます。」
でした。