テラーノベル
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「・・・ったく。あいつら、絶対騒ぐぞ」
早川アキさんの背中を追って、古びたマンションの廊下を歩く
今日から3日間、私はこの「早川家」に身を寄せる事になった。憧れのアキさんとの共同生活・・・・なんて浮かれているのだけれど、彼の後ろ姿から漂う「苦労人」のオーラに、少しだけ背が伸びる。
アキさんが鍵を開け、「おい、入るぞ」と声をかけた瞬間ーーーー。
「ぎゃははは!ワシの勝ちじゃ!その肉はワシのものじゃ!」
「んなっ、汚ねぇーぞパワー!今のが俺が先にフォーク刺しただろ!」
玄関まで響く怒号と、何かがぶつかる派手な音。
アキさんが深いため息をつきながらドアを全開にすると、そこにはリビングの床で取っつ組み合いの喧嘩をしている金髪の少年と、角の生えた少女がいた。
「・・・・・今日泊まるゲストだ。礼儀正しくしろと言っただろ 」
アキさんの冷ややかな声に、二人がピタッと動きを止める。
先に反応したのは、金髪の男の子だった。
「げ、女・・・・・・?ゲストって、女かよ!」
金髪の男の子が私を見るなり、パッと表情を明るくした。それも、なんていうか・・・・すごく、下心が透けて見えるような、ギラギラした目。彼はバネ仕掛けみたいに立ち上がると、一瞬で私の目の前まで距離を詰めてきた。
「よお!俺、デンジ!・・・・へへ。あんた、いい匂いするな」
「ちょ、ちょっと、デンジくん・・・・?」
近すぎる。鼻先が触れそうな距離でクンクンと首筋あたりを嗅がれ、思わず後ずさる。デンジくんの目は、獲物を見つけた子供みたいで無邪気で、でもどこか男の子を感じさせる熱があってーー。
「こら、デンジ。離れろ 」
アキさんの手がデンジくんの顔面を掴んで、強引に剥がす。
「痛えなアキ!減るもんじゃねぇだろ!」
「お前は黙ってろ。・・・・おい、パワーもだ。いつまで床に転がってる」
「フンッ!人間ごときがワシの屋敷に来るとは、生意気な奴め!」
パワーちゃんはソファの上でふんぞり返り、傲慢に言い放つ。でも、その瞳は好奇心でキラキラしていて、どう見ても私を歓迎(あるいは面白いおもちゃだって思って)しているみたいだ。
「・・・・すまない。見ての通り、この有様だ」
アキさんが困り果てた顔で振り返る。
「3日間、耐えられるか?」
「は、はい!よろしくお願いします!」
私が淡々と頭を下げる。
・・・・・・私の早川家ステイは、想像以上に心臓に悪くなりそうだ。
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最後まで読んでくださりありがとうございました。第二話もぜひご覧ください!
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