♡こちらはnmmnとstxxxに当たる作品です。 この意味がわからない方は閲覧を遠慮します。
黄Side
橙「なーるぅちゃん、こっち来て」
半分だけ開いているカーテンから、ひょこっと顔を覗かせてジェルくんは手招きした。随分長い間ベランダにいたようだった。今日は西日が少しだけ暑い。中に入ったらお水を飲ませなきゃ。
可愛らしい顔で手を振るものだから、ドキドキしながら僕はベランダへ出た。いつもは室内でもカーディガンを着ていたのに、それを脱いで半袖で居る姿が珍しく思えた。暑い、と言わんばかりに手で団扇のように顔に風を送った。
橙「ね、あれ見える?」
そう言ってジェルくんは遥か遠い空を指差す。そこには、星と言うには少しばかり大きい一点の光から、ほうきのような一筋の輝きが広がっていた。
橙「あれ、アトラス彗星っていうらしいねん」
黄「彗星?」
橙「そ。次見られるの8万年後らしいで」
黄「え?!8万年も先···?!」
人間が生きるのは約80年だとして、それの1000倍もかかる時間だ。途方もない、想像もできやしないぐらい先の話。それなのに今、僕たちはこうやって見ることができるんだ。
君とこうやって隣で話すことも、一緒に住むことも、キスをすることも。何もかも奇跡だっていうのに、この何億分の一にも満たない確率でこんな景色を見ることができるのがどんなに嬉しいか。
君がこの景色を見せてくれたのなら、欲しい言葉は一つだろう。
黄「8万年後も一緒に見ようね」
それが叶うのであれば、僕は何回だってこの景色を繰り返し見ていたい。この景色じゃなくたって、特別でもそうでなくても、何か共通のものを君と一緒に見れたらなって思うんだ。
橙「8万年後も地球ってあるんかなあ笑」
確かにそうかも知れないな。8万年後この場所でまた見れるってだけで、地球があるなんて保証はない。
でも、見よう。8万年後も、その次も。
生まれ変わるたびに君と同じ景色を見れたら。
それ以上幸福なことってないと思ってる。
僕は君の手を取った。ずっと外にいたからいつもよりあったかい、かわいらしい君の手。ぎゅっと握るとそれに応えるように握り返してくれた。長い間君と彗星を見た。30分ぐらい経つと、完全に日が沈んでアトラス彗星も見えなくなった。
ようやく部屋に入って、ジェルくんにお水を渡した。汗をポタポタと垂らしながらぐびっと飲み干す姿が。僕の心をとろかすような妖艶さがあった。情欲をかり立てられ彼から目を逸らす。このままでは正常な脳でいられなくなる。
8万年後。あまりピンとこないけど、その数字だけでなんとも特別な雰囲気で、ただの彗星だと言われるよりもきれいに見えた気もする。
だけど、それよりも。ジェルくんのあの横顔が、瞳が。君への特別な感情をより一層強くさせていた。
8万年後も君と、あの彗星を見たい。
君と付き合いたい。
君と会いたい。
君と一生を添い遂げたい。
その度に君が、よろしくねって。
はじめまして、って。
大好きだって言ってくれるのであれば。
僕は何度だって君に逢いに行くんだよ。
黄橙でした
数ヶ月前に見られたアトラス彗星の話です
タイムリーに書いた話ですが、
改めて載せてしまうと流行遅れっぽくなりますね
これからも過去作を気分で載せていきます
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