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私の発言を聞いて皆さん驚きの表情を浮かべている。でも多分……一番驚いてるのは自分自身だ。咄嗟に口が動いてしまった。私がいたらミシェルさんの邪魔にしかならないだろう。普通に考えたら分かることなのに。撤回しよう。気まずくて堪らない。


「それは、いいかもしれないな」


「レオン殿下?」


てっきり他の方達と同じ反応をなさると思っていたのに……殿下のお顔は何やら思案を巡らせているようだった。


「あの……自分から言っておいて何ですけど、お邪魔では?」


「そんなことはないさ。もともとリズもクレハが帰宅する際に付き添って貰う予定だったからね。君さえ良ければミシェルの手助けをしてくれると嬉しい」


殿下は私から見たニコラさんの様子についても教えて欲しいそうだ。見る者が違えば印象も変わってくるからだと。複数の人間の意見が聞きたいんだって。


「ミシェルが気付かなかったこともリズなら気付くかもしれない。そして、その逆も然り……ふたり共よろしく頼むよ。ただ、絶対に無理はするな。少しでも危険を感じたらすぐに引け。分かったな」


あっさりと殿下の許可が下りてしまった。ミシェルさんと一緒に私もジェムラート家のお屋敷に行くのが決定する。


「リズちゃんがいてくれたら心強いよ! 屋敷の事にも詳しいものね」


「リズはミシェルよりもしっかりしてそうだしな。お前の方が足引っ張らないように気をつけろよ」


「ちょっと、るー君!! いくらなんでもあんまりな言い草じゃない!?」


「ルイスさん、それはさすがにちょっと……って、ああっ……」


「リズちゃんがしっかり者なのは分かってるけど、私だってお仕事はきっちりやりますからね」


「耳に響く。キーキー喚くな」


「大体、るーくんはいっつも……」


段々と熱が入る会話の応酬。このままだとケンカに発展してしまいそうだった。自分の事が発端なので何となく責任を感じてしまう。それでも私にはおふたりを止めることは出来なくて、隣であたふたするばかり。そんな時、目頭を抑えながらセドリックさんが声を上げた。


「やめないか、ふたり共みっともない」


「だって……セドリックさん、ルイスの奴酷いんですよ〜」


セドリックさんのおかげで、ミシェルさんとルイスさんの舌戦は終了した。おふたりが揉めてる間、他の方達はどうしていたかというと……お茶を飲んだり雑談したりと、あまり気に留めていない様子だった。慌てていたのは私だけ。


「リズもそのうち慣れるよ。レナード、先生とリズにお茶のお代わり淹れてあげて」


「はーい。あのふたりの口喧嘩はいつもの事だから……気にしなくて良いよ、リズちゃん」


殿下は呆れ混じりの笑顔を浮かべながら、レナードさんにお茶を用意するよう指示を出した。私はレナードさんから淹れたての熱い紅茶が入ったカップ受け取る。紅茶をひと口喉に流し込むと、ほっと息をついた。


「ルイスは思ったことをズバズバ言うし、ミシェルも気が強いから負けじと言い返すし……このふたりはしょっ中衝突するんです。ルーイ先生、騒がしくてすみません」


「賑やかなのは嫌いじゃないよ。俺の知り合いにも似たような奴らがいるから平気。お茶を飲みながらゆったりと待つさ。あっ、クライヴ君はこのクッキー食べた? これ栗が入っててめっちゃ美味いよ」


先生はクライヴさんとお話をしていた。ルイスさんとミシェルさんの言い合いは日常茶飯事らしい。今回は会合の最中(さなか)なのでセドリックさんが止めに入ったけれど、よほどの事がない限りは放置なんだって。


「ところで殿下、先日お伝えしました二番隊の隊員についてなのですが……」


「ああ、余所者が紛れてるかもしれないって奴か。一応、三隊長に調べるよう指示は出しておいた。しかし根拠がお前とルイスの勘ってだけだからなぁ。クライヴのとこは問題無いか?」


「現在隊員全ての身元確認を行っていますが、今のところ不審な点はありません」


「私達の思い過ごしなら良いのですけどね」


「あんな事件があったばかりだ。神経質になるくらいで丁度良い。何も無いならそれに越したことはないからな」


「次から次へと……穏やかじゃないねぇ」


殿下達の会話……先生と同じく不穏な内容だと思うけれど、これは魔法使いについて尋ねるチャンスなのでは? 殿下の出した『余所者』という言葉から、ニュアージュの魔法使いに繋げられるかもしれない。


「あの、殿下。その『余所者』は釣り堀を襲った犯人と関係があったりするのでしょうか。同じ魔法使いだったり?」


「まだ本当にそんな者がいたのかどうかは分からないけどね。グレッグとの繋がりの有無は気になる所だ。ヤツ以外の魔法使いの存在は、シエルレクト神が否定してはいたけど……」


「そう……なんですか」


他に魔法使いはいない……ということは、ジェフェリーさんは魔法使いではなかったの? あの時私が目撃した彼が魔法を使っているような光景は、やはり見間違いだったのか。それならそれで良い。ジェフェリーさんが事件と無関係だとはっきりするなら……


「リズも釣り堀にいて襲われたのだから不安になっちゃうよね。シエルレクト神が言うには、ニュアージュの魔法使いは最大でも30人程度しかいないそうだ。そして、事件があった日……王都にはグレッグ以外の魔法使いはいなかったと証言してくれたんだよ。でしたよね? ルーイ先生」


「そうだな……シエルレクトはサークスの位置を把握しているから、間違いないと思うぞ。嘘はついてないだろうしな」


殿下の話をルーイ先生が肯定した。それに、ニュアージュの神様が仰っている事なら疑いようがない。ニュアージュの魔法使いは30人ほどなのか。多いような少ないような微妙な人数だなぁ。


「ただ、シエルレクト神がそう断言したのは、あくまで事件当日なんだよ。王宮内に光る蝶がいたのはその前日……全てをグレッグの行いだと決め付けるには早いだろう」


殿下はまだ他の魔法使いが関わっている可能性を視野に入れている。ジェフェリーさんはずっと王都にいるはずだから、事件の日に魔法使いがいなかったというだけでも、彼は候補から除外して良いのではないだろうか。

不安な気持ちが完全に拭えたわけではないけど、殿下と先生のお話から、ジェフェリーさんが魔法使いだという可能性が低くなる。ゆっくりと胸のつかえが下りていくのを感じた。

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