コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
⚠︎︎ 捏造、心中要素有り 。
━━━━━━━━━━━━━━━
夏のある日、俺は罪を犯してしまった。
どうすればいいかわからなくなって、震える足で何とか彼奴の家に向かった。いつも俺の事揶揄ってくる蛸。理由なんてない、今思えばいつものように揶揄ってほしかったのかもしれない。彼奴なら冗談で終わらせてくれるって、事実を消してくれるって、信じてたのかもしれない。
家の前へと足を進め、インターホンを押す。はーい、といつものように笑って俺を迎えてくれる彼奴を見ると、気が緩んで思わず涙してしまった。急に涙を出した俺を見て慌てる蛸。
「小柳くんどうしたんですか??え、ちょ??あのーー。俺はどうしたらいいんですか??」
珍しく慌てる彼奴が見れてちょっと満足した!涙を拭いて目の前の彼奴の目を見て、口を開く。
「俺、やっちゃった。」
最初は、彼奴も驚いていた。驚きというか、なんというか、って感じだけど。意外だった。てっきり笑ってくれると思ってたから。冗談だと解釈してくれると思っていたから。こいつなら、俺の事許してくれると思っていたから。
しばらく経ち、俺も彼奴も落ち着いてきた頃。玄関外に座りずうっと、ぼーっと空を見ている俺の隣に彼奴が座る。
「とりあえず、なにがあったか話してくれます?」
俺は変わらず空を眺めながら答えた。犯した罪のこと、その経緯、ここに来た理由まで、全部。俺が話し終え、彼奴に顔を向けると彼奴は怪訝な顔をしていた。
「あのさぁ…俺なら冗談だと思ってくれるってなに!?笑ってくれるって!!あの小柳くんが泣きながら家凸してきたら信じるしかなくない?罪の重さ桁違いすぎて笑うにも笑えないんですけど!!」
その答えに、俺は苦笑いをして返した。彼奴は変わらず「あのねぇ…!!」と続けていたが、そんなの知らない。
それから数時間、俺は彼奴と二人でこれからどうするかを話していた。星導は何も関係ないのに俺が来ちゃったせいで巻き込んでごめん、と謝ると小柳くんの罪は俺も一緒に背負わないとなんかアレじゃない?ってさ。よくわかんないね。別に星導が罪背負う必要なんてないのに、全部俺が悪いのに。
罪から逃れるため、罪が時効になるまで隠れ過ごすことにした。二人で。何度も1人でいいと言ったものの何を言っても俺も着いていく!の一点張りだったため、一緒に隠れてもらうことにする。長寿の俺らからしたら時効になるまでなんてすぐだろ、なんて事を話しながら山の奥へと足を進める。
「こことかめっちゃ住めそうじゃないですか??秘密基地みたい」
「狭くね?もうちょい広いとこ探そうぜ」
「こら、わがまま言わない!やっと屋根あるところ見つけたって言うのにさぁ!!」
「足疲れました」
「がんば」
「おんぶ希望。」
「断る。」
「泣きそう。」
逃げ始めて、5ヶ月ほど経っただろうか。あっという間に冬が来て、雪の降る山の寒さに震える俺を他所に彼奴は変わらず元気に洞窟内を走り回っている。なにしてんの?彼奴。
「お前なんでそんな平気そうなん?寒いんだけど俺」
「俺の出身がよく雪降るほうなんで慣れですね、小柳くんもそのうち慣れますよ!俺と一緒に走りましょう、暖かくなりますよ」
「いや、やめとくわ。絶対走らんね、俺は。」
「小柳くん」
ある日のこと。珍しく、星導が面と向かって名前を呼んできた。少し困惑しながらもどうした?と返す俺。
「海に行きませんか?」
海…?、こんな真冬に?マジで言ってる? 俺 の動揺を全く気にせずに話を続ける星導に「待て待て」、とストップをかける。
「えー、なんですか?」
「今真冬ね、分かってる?海とか夏に行くもんでしょ」
「夏行けなかったじゃないですか!!!ずっと山にいて飽きたでしょう、ちらっと見るだけでいいんでどうですか?」
…まあ、それぐらいなら…と返す。俺自身も山には飽きたし別の場所に移動…ぐらいは考えてた。けど海はおかしくない?水で死ねるでしょ普通に。
「すごー!冬の海とか初めて来ました。想像通りですが人いませんね。」
「逆にいたら怖いわ。」
「まあそれはそう…」
浜辺にしゃがんで砂を触る。雪が混じって砂とは言いづらいような感覚を前にして即座に砂を手から落とす。
俺が再度海の方を見ると、海に下半身を沈めている星導が居た。慌てて駆け寄ると、星導は俺を見て悲しそうな眼をした。
「ねぇ、小柳くん、本当にこのままで逃げれると思ってるんですか?あの山に続々と警察が入り込んで来てるの、小柳くんなら分かるでしょ。」
「…一緒に、海へ、天へ。逃げませんか?」
俺は、震える手で目の前のこいつの手を握った。握る以外、選択が出来なかった。