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私はアヤカの言葉に納得する部分とそうではない部分を見つけながら、それでも、もう1つ聞いておかなければいけないことがあることを思い出した。それは私のおでこに手を当ててきたこと。私としてはさっきのプランターを用意したとかそういう話よりもむしろこっちの方が重要な気がするのだけれど。


「ねえアヤカ、私のおでこに手を当てたことと、この本は関係あるの?」


「うん、もちろんあるよ」


「まあ、そうでしょうけど・・・何なの?あれは」


そう聞くとアヤカは立ち上がり、ぐっと背伸びをするようにしながら手を上に出し、開いていた手を閉じると再び、座りなおす。


「美香、電気を消してくれる?」


言われるがままに立ち上がると、電気のスイッチを切りに行く。部屋が薄暗くなると、さっきまで何でもないように見えたアヤカの手が薄く輝いているのが見えた。けれども、輝いていた時間はわずか数秒。すぐに消えてしまった。


「今のは何?」


「美香のおでこに手を当てたのと同じことをやってみた」


確かに見えた輝きはプランターの上に置いたものと似ていた。似ていたけれど、それは同系統という感じ。全く同じものでは無かった。


「私の時のは青白かった。でも、今のはなんて言うの?それよりも明るかったけど」


「どうして差があると思う?」


唐突に出された質問ではある。差がある・・・。つまり私から出てきた輝きと今、アヤカが手に取った輝きの差ってことなんだろうけど、分かることは取り出している先の差にありそうだった。一方は私から、そしてもう一方は空中から。

これをアヤカに伝えると彼は私の方を向いた。


「先に有るモノを気にするのがアヤカの世界。でも、僕の世界はその手前。例えばアヤカに到達するまでの間のことを気にする」


「手前?」


「そう、手前。この間言ったと思うんだけど、何を通して世界を見るか。その通じている部分を取り出すとああいう輝きに見えるモノになる」


手前というのはつまり媒体みたいなものだろうか?例えば音は空気を媒体にして伝わって来るけれど、その空気のようなものを掴んで取り出しているのか。でも、もしそうだとしてもそれを取り出しても何も起きないような気がするのだけれども。


「・・・じゃあその輝きの差って言うのはつまり・・・その、見えている世界が人によって違うってことの証拠みたいなもってこと?」


「そうだとも言えるね」


なるほど、つまりそういうことか。私から取り出した青白い輝きは私の手前に存在するモノ。それが一体何なのかはわからないけれど、アヤカはそういうのを取り出す力があるらしい。


「だから美香、あの青白い輝きは〝ある視点から、ある人物がキミを自身見た時に見える輝き〟だと思ってくれればそんなに大変なことじゃない」


アヤカは続けた。


「けれど、輝きは実体化していない。常時、流動性を持って僕らとか美香に到達する。懐中電灯の光は電源を切れば消えてしまうような感じ。水みたいに出したらしばらくそこにあるようなものではないでしょ?」


「そりゃあねぇ。輝きって言うのがアヤカの言っていたあれでしょ?フィクションとかも含まれるわけでしょ?」


「そうそう」

アヤカはベランダを指さした。


「だからそこまでが僕の世界。そこから先はアヤカの世界に有るモノを使う。そうすると輝きは実体化する」


「それがこの本ってわけ?」


「うん」


にわかには信じがたいのであるが、こうして手に取ることが出来しまっている以上、アヤカが言っていることはその通りなのだろうと思う。けれど、どうしてプランター・・・まあ、この場合は土になるのかもしれないけれど、それを使わないと実体化出来ないのだろうか?


ちょっとまてよ。


今、アヤカが言ったのはこの本がつまり、私自身の輝き〝でもある〟ということだった。それがどういう理屈かは分からないけど、アヤカを通してプランターの土で実体化した。ということはこの本の元になるもの自体、私の内側や周辺にすでに存在していた。ということになる。


となると私はこの本を開かなくても中身を知っているはずである。けど、何が書かれているのかなんて言うのは全く見当もつかない。


そうなると中に何が書かれているのか気になって来た。


アヤカは「開けてもいいよ」というので私は本を開こうと手に力を入れる・・・のだけれども本は開かない。あれ?開かない。もう一度試してみる。けど、やっぱり開かない。本を縦にしてページの重なりの部分を見た。・・・うーん、ちゃんと紙が重なっているように見える。


「アヤカ、これ開かないけど」


「なんでだろうね」


少しだけ笑って返すアヤカを私は本を通して見つめた。

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