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第二話―焦土の再会 —静寂を汚す泥の声—
灰の降る再会
魔王城の威容を望む、一面の灰に覆われた荒野。
そこはかつて、ヴルクが冤罪を被せられ、血を流しながら這いずり回った「始まりの場所」でした。
主君の命により、城の周囲の「不純物」を排除しに来たヴルクの前に、その男たちは現れました。かつてヴルクを出し抜き、泥の中に蹴り落とした父と兄弟たち。彼らは今や落ちぶれ、かつての「出来損ない」が魔王の右腕となったことを聞きつけ、卑屈な笑みを浮かべてヴルクの前に立ちふさがったのです。
「……おお、ヴルク! 探したぞ。まさかこれほどの力を手にしていたとは。一族の危機なのだ、過去のことは水に流そう。さあ、その力を持って一族に戻ってこい。お前を『長(おさ)』として迎えてやってもいいぞ」
凍りついた情動
ヴルクは、完璧に整えられた執事服の裾が灰に汚れることすら厭わず、静かに歩みを止めました。
彼の視界に映るのは、父でも兄弟でもありません。ただ、「主君の庭を汚すゴミ」がそこに存在しているという事実だけでした。
「……『戻る』。……『一族』。……吐き気がするほど不快な、泥の響きですね」
ヴルクの声は、焦土を吹き抜ける風よりも冷たく、静かでした。
「私に感情があったのは、あの日、この泥をすすっていた時までです。今の私にあるのは、主の御心(みこころ)という名の規律だけ。貴殿らのその汚らわしい舌で、私の名を呼ばないでいただけますか?」
執行:天墜焦土黙示録
一族の長が、なおも「家族の絆」を説こうと汚れた手を伸ばそうとした瞬間。ヴルクの姿が掻き消えました。
「あ、が……ッ!?」
次の瞬間、ヴルクは父の背後に立ち、その喉元に白い手袋を嵌めた指先を「添えて」いました。
「静かに。貴殿らの声は、主の静寂を乱す。……掃除の時間です」
「天墜焦土黙示録(エターナル・フレア・ディスペア)」
爆発音はありません。ただ、ヴルクの指先から溢れ出した「深く、美しい黒い光」が、一族を、そして周囲の焦土ごと音もなく飲み込んでいきました。
激痛が彼らの体を蝕みますが、悲鳴すら黒炎に吸い込まれ、一音として漏れ出ることはありません。
かつてヴルクを裏切った者たちは、自分たちが捨てた「泥」と同じように、音もなく灰へと還り、存在ごと消去されました。
完璧なる清浄
数分後。
そこには、一族の死体も、彼らが放った虚偽の言葉も、何一つ残っていませんでした。ただ、ヴルクが「清掃」した跡に、鏡のように磨き上げられた漆黒の大地が広がっているだけでした。
ヴルクは一筋の乱れもなく身なりを整えると、魔王城の玉座へと向かい、最も深い跪きを見せました。
「……不浄な執着は、すべて無に。……私の帰る場所は、貴方様の影の中だけでございます、我が主よ」
魔王の指先で、『黒い結晶』が妖艶に明滅します。
「……そうか、よくやった、ヴルク」
その一言。それだけで、ヴルクの心は完膚なきまでに満たされます。
過去を捨て、感情を捨て、主君の完璧な部品となったことへの、至上の幸福を噛み締めながら。