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第12話:「地獄の淵から、斎藤海翔の逆襲」
《配信30分前・地下の個室》
コンクリ打ちっぱなしの部屋。
防音も完璧に施されたその空間で、斎藤海翔は、静かに煙草に火をつけていた。
真っ黒なサングラスに、反社会的勢力を思わせる刺青。
だが、彼の物腰は――不気味なほど落ち着いていた。
「全部、仕込んでたよ……なぁ、中村颯太」
その瞳には、狂気と理性が紙一重で同居していた。
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《配信開始・斎藤海翔 登壇》
視聴者数:17万人超え
コメント欄は開幕から騒然。
【うわ、ヤベーやつ来た】
【この人、確かガチでヤクザって噂なかった?】
【過去最高に怖い雰囲気】
【絶対“殺し”の話来るわ】
【通報しといた方がいいのでは?】
モニターに映ったのは、ゆっくりと椅子に腰かける海翔の姿。
口を開いたその声は、驚くほど澄んでいた。
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《斎藤海翔の暴露》
「俺の話は、簡単だ。
6年前、とある裏掲示板に一つの“依頼”が投稿された。
“ある人間を潰してほしい”と。
報酬は……1000万円」
「その依頼人の名前は、“伊藤悠真”。
……そう。今、都内の大手企業に勤めてる“サラリーマン”だ」
視聴者の息が止まる。
【え、誰? 伊藤って…え、家庭教師だった人?】
【蒼の事件に関係してたやつだよな】
【マジで金で人潰すの?】
【裏社会のつながり来た】
「標的にされたのは“田中蒼”――
……正確には、“彼が抱えていた事件の証人たち”だ」
海翔の顔が、笑みを浮かべる。
「蒼が3年前に巻き込まれた事件、
“彼自身が加害者だ”って言い出した奴がいた。
裏で情報をばら撒いていたのは、他でもない伊藤だ。
そして俺たちに、“証人潰し”を依頼してきた」
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《その時、何があったのか》
「だがな――俺は途中で手を引いた。
理由は単純、“面白くなかった”からだ。
やってもスカッとしねぇ仕事に、意味はねぇ」
「だけどよ、あの事件で死んだ一人の女がいた。
名前は、村瀬美月。蒼の元恋人だった女だ」
視聴者、言葉を失う。
【えっ……死んだ人がいたの……?】
【初耳なんだが】
【その女の死と蒼の事件って、関係あんの?】
【まさか……まさか……】
【怖すぎる、これ映画化レベル】
「あれは……自殺じゃねぇ。
ちゃんと“仕組まれた”モンだった。
俺は証拠も持ってる。
送ってやるよ――そこの管理人、中村颯太に」
カメラが、一瞬だけ中村の硬直した顔を映す。
「……あいつが震えてんの、初めて見たな」
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《告白の終わり》
「俺は今でもクズだし、これからもクズのままだ。
だが一つだけ、約束しておく。
――“真実を語らなかった奴ら”は、全員潰す」
「金のためじゃねぇ。
……ケジメってやつだよ」
そう言い残し、彼は静かにモニターを閉じた。
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《コメント欄・炎上》
【情報量エグすぎ】
【伊藤ってやばすぎるやろ】
【蒼、完全に巻き込まれじゃん】
【村瀬美月……誰だよ、それ】
【まじで次の話で全部暴いて】
投げ銭が雪崩のように流れ込む。
だが、それ以上に視聴者が求めたのは――次の真相だった。
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《中村颯太の決断》
中村(ナレーション)
「俺が動かなきゃいけないな……
ここまで引っ張っておいて、“逃げる”選択肢はない」
「次のスピーカーは……俺だ」
配信画面に、新たな文字が浮かぶ。