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春のあいさつ
目の前に広がるピンク、ピンクそしてピンク。これは梅色だの薄桃色だのとか、もっと細かい色の名前が花びらの一枚一枚にあるんだろうが今はそんなのどうでもいい。目の前の景色がソメイヨシノと愛しさでいっぱいなんだ。
凍った時代から2025の現在まで、いつまでも春を待ち侘び焦がれて続けた。
お互いの為、世間に配慮し最終的に犬猿の仲と認められた。
そんないつもの今日、俺達は遂にここ日本で焦がれ続けた春を迎えた。
嬉しそうにくるくると回る君の柔らかい白いマフラーがまるで天使の羽のよう…ちょっとおっさんくさいかい?
いつも営業スマイルの君は今日この瞬間だけは本当に目を輝かせて、白い頬は桜の影のせいか、君の血色のせいか、ほんのり薄ピンクに染まっている。
舞い落ちて来た桜の花びらを高々と掲げまたそよ風へと返す。
その一瞬、どこからともなく春風が吹いて辺りの花びらが一気に舞い上がった。
いつもより柔らかい軽い服を着ていた君は、まるで某魔法学校の主人公のように初めて魔法に触れたような驚きと希望に溢れた顔をして、浮き上がった自分のマフラーを楽しそうに笑った。
「アメリカくん、ナンタケットに花びらがついてるよ」
ついとその花びらを掴まれて、君はまた笑う。
言葉じゃ表せきれない幸福の波で溺死しそうだ。てかもうしてる。愛しい、愛しい。
今日は桜を見に来たんじゃないな、君を見に来たんだな。レフガンカメラの一台でも持って来たら良かった、プロの技術は無いがプロよりも今の君を美しく撮れる自信がある。
「ねぇお昼にしようよ」
「そうだな!」
冷酷で残虐で平和を求め続けたいつかの今日の俺達は、きっとこんな暖かさと愛しさで溢れる今日を想像してなかった。叶わぬ夢で終わらせていた。
でも今日やっとリアルになった。夢なんかじゃ無い、白昼夢な気分だが違う。触れて、聞いて、愛すことができる。
どうか、どうか桜が散ってしまったとしても、また君をこうして愛させてくれますように。