テラーノベル
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・wesさん→転生後 maiky ifの妄想です。
・vanmai(vanwes)です。
・今回はそこまで腐要素は無いです。
・独り言の方で貰ったコメントを元に作った筈なんですが、方向性迷子になってしまったので、いずれ続き的なものでリベンジします…
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暖かな日差しの下。街中にあるありふれたベンチに座って、出来たてのケバブを頬張りながら、同じくベンチに座っているもう1人へ、ちらりと目を向ける。何かを食べるでもなく、ただじっと目線だけを向けてくる、その人物。しかも、その眼差しはやけに優しく、暖かい。まるで親とか、親密な人へ向けるようなその目。然しおかしいのは、この場にいる2人は、まだそこまでの親密な関係にはなっていないという事、だった。仲が悪い訳では決してないが、会う頻度も対して多くなければ、普段はお互い黒と白として、別々の世界を生きている。しかも隣にいる男__ヴァン・ダーマーは、誰もが知る古参ギャングのボスだ。本来であれば、相容れない存在だろう。(とはいえ、話しかけに行ったのは自分だけれど。)しかしそんな彼が、何故こうして見守るように座って、男の食事風景を見ているのか。
( …食べずらい。 )
何時もなら特に気にしない人の目線も、こうも優しく眺められると、流石に食べずらいというものだ。”昔の自分”だったらどうしただろう。と、彼の戦友だった頃の自分…アルフォート・ウェスカーだった頃の自分を脳裏に浮かべてみる。…いや、昔の自分なら何も気にしないか。今よりも図太い精神の持ち主だったのを思い出して、やめた。
残り半分のケバブを前に、一先ず口の中のものをごくりと飲んで。このまま食べ進める前に、この何とも気まずい状況をどうにかしないといけない。持っていたティッシュで口元を拭きながら、隣の彼に話しかけた。
「…ヴァンさん?」
「ん?どうした?」
「ちょっと…見過ぎじゃないスか?穴空いちゃいますよ」
「…あぁ、随分と美味しそうに食べるもんだから、ついね。見ないようにするよ」
「いや、それは全然良いんスけど…凄い優しい目してたんで。気になったんスよ」
「優しい目?…そんな目してたかな…」
「してましたよ。すごく。」
「そうなのか…」
不思議そうに、何処か遠くを見ながら考える様子に、無意識だったのだと察した。いや、意図的であればそれもそれでよく分からない。ウェスカーだった頃の自分に向けるならまだしも、今の自分に向ける理由が無いのだから。考え始めると自分まで悶々とし始めてしまう。いつもなら大概のことを簡単に割り切れる筈が、こうも頭を悩ませてしまうのは何故だろう。
( …いや、分かりきってたことか )
今の今までずっと、ウェスカーだった頃に芽生えた恋心を引きずっているのだから、当然とも言える。とはいえ一生言う気も無いし、そもそも言うにも姿形が変わってしまったのだから、どうしようもない。諦めに関しては、とっくの昔に着いていた。何故ならこの男…ヴァンさんは引く手数多で、ねねと一緒に居るところもよく見たし、何より自分は男で、ギャング。好きだなんて言えるような、柄でもなければ立場でも、性別でもない。だからこそ、叶わなくても良いと割り切ることが出来た。友としていられるならそれで十分だと、そう思えたから。
今でもそう。ウェスカーは死んでしまったけれど、犬好マイキーとしてまた出会って、話せる事が何よりも嬉しかったから。だから、恋心なんてどうでもよかった。…のに、こうもこの男が優しくするもんだから。無いものとしていた恋心が、また出てこようとしてしまう。
( ……もう考えるのはやめよう。今更考えたとこで意味無いんだから )
今にも特大ため息をついてしまいそうな自分の傍ら、ヴァンさんといえば未だ喋ることなく口を閉ざしたままで。どうしたのだろう、と顔へ目線を向けてみれば、サングラス越しに見える瞳が、どうも寂しそうで。誰かを想うような、切なげに写ったその目。一体誰に向けたものだろう。ヴァンさんのような人が、そこまで想いを向ける人とは誰なんだろう。そう何処か探るように、じっと見つめていれば、ふとばち、と目が合った。考え事が終わったらしいヴァンさんの、もう寂しさはないけれど、懐かしさを含む眼差し。そんな目線に、口を開こうとして……その前に、彼の大きな手が頭に乗って、遮られた。
「……え、と…?」
「…私もつくづく、女々しい奴だ。関係の無い君に、重ねるなんざ」
「……ヴァンさん?」
「…君は本当に、彼に良く似てる。声も…押しが強い所も、思った事を素直に言う所も。まるで本当に彼を見ているような、そんな気分になるよ」
「…彼?」
「君は知らないだろうけど、私にとって唯一無二の…友が居たんだ。肩を並べて、笑いあった…大事な戦友がね」
優しく、割れ物を扱うような手つきで撫でられながら、昔を懐かしむように話すヴァンさんを、ただ呆然と見ていた。知らないだろうと言ったけれど、知らない訳が無い。何せ、その”彼”は自分なのだから。けれど重ねてしまう、と話すヴァンさんの事が分からなくて、疑問符を浮かべた。ウェスカーと自分…犬好が似ているのは、同一人物なのだから当然だけれど。重ねてしまうと言うその話し方が、想いを寄せる人へのそれだったから。きっと違う。きっと、勘違いだろう。そう分かっていても、1度気になってしまっては止められなかった。
「…ヴァンさんの、大切な人だったんですか?」
直接的ではないけれど、もしかしたらと期待を込めて、聞いてみた。はぐらかされてしまうかもしれない。いや、そもそも違うかもしれないし、ただの思い過ぎにすぎないかもしれない。それでも、知りたかった。諦めたとは言っても、見て見ぬふりを決め込んでいただけにすぎなかったから。
そんな質問にヴァンさんはまた考えるように目を逸らして、暫く悩んで……ぽつり。まるで独り言のように、独白をするように…話した。
「……そう…だろうね。彼は……私にとって、誰よりも大切な存在だった。…そして誰よりも、好きだったよ。彼の事が…何よりもね。」
そう話す彼の、苦しそうに、今にも泣いてしまいそうに見える顔が、その言葉の重みを物語っていた。それを聞いた自分は、どうしようもなく……酷く後悔した。こんなにも好きでいてくれたなら、どうして気付かずに諦めてしまったのだろうと。弱気になってしまったあの頃の自分が憎くて、堪らなくなった。けれど、それと同じくらい嬉しさがあった。一方通行だと思っていた愛が、そうじゃなかったんだと知ることが出来たから。
「……こんな事、君に聞かせてしまってすまないね。言ってもしょうがないだろうに…」
「いいんスよ!そういうのって、話せる人が居た方が楽になるって言うじゃないっスか」
「……ふふ、嗚呼…そうだね。確かにそうだ。」
「あ、あと俺口硬いンで!誰にも言わないスから、安心してください!」
「そこは心配してないよ。…君はしっかりしてるからね」
「え、信頼してくれてるって事ですか!うわ、嬉し!」
「ははっ、本当に君、素直だなぁ。」
作り物じゃない、楽しげな笑顔を浮かべる姿に、心の中で安堵した。あのまま暗い気持ちのままにさせずに済んで良かったと。そしてそれと同時に、1つ決心をした。あの頃にはもう戻れないけど、今からだってきっと遅くないだろう。然し自分から暴露をすればきっと疑うだろうから、幾ら時間が掛かろうとも、沢山話して、話しまくって……そうして、気付かせてやる。目の前に居る自分が、貴方が好きだと言った、アルフォート・ウェスカーだと言うことを。
( 覚悟してろよ〜〜、ヴァンさん! )
もう絶対、諦めてやらないから!
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