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帰宅して冷静になるにつれて、怒りが込み上げてきた。

先月、見えない目の痛みを我慢しなければいけないのは理不尽だという歌を詠んだ。その日のことはそれ以上に理不尽だと感じたからだ。

人の目を見て話せないのは確かに僕の欠点だ。だからといって童貞だのなんだのと大勢の前で罵倒される筋合いはないはずだ。すぐに怒り出して、人を理不尽に攻撃してくる。だからヤンキーは嫌いだ。僕の勤務校は地域で一番というわけではないけど、一応進学校だから生徒にヤンキーがいなくて本当によかった。

僕自身生徒として通っていた高校は進学校でいじめなんてなかったから、いじめられていたのは中学生だったときまで。いじめてきたのはやはりヤンキーに分類されるような連中だった。

殴られたこともある。面と向かって悪口を言われたこともある。義眼を取って見せろと言われたこともある。そのことはトラウマになっていて、今でも夢に見ることがある。ヤンキーという人種は人が嫌がることを嗅ぎ分ける能力だけは本当に長けている。だから僕はヤンキーが嫌いだ。


雨に濡れてずぶ濡れになったせいで、なんとなく体が熱っぽい。踏んだり蹴ったりだと思いながら、熱いシャワーを浴びてバスルームから出てきた途端に、ピンポンと玄関の呼び鈴が鳴った。

脱衣場に干してあったTシャツとハーフパンツだけ急いで身につけて、宅配便だろうと思いながらドアを開けた。

ドアを開けるとさっきの金髪ヤンキーが立っていたから、開けた瞬間にまたすぐ閉めた。短歌会の会員名簿で僕の住所を見て押しかけてきたようだ。

「おい、なんで閉めるんだよ! 失礼じゃねえか!」

失礼って、初対面の相手を童貞呼ばわりしてみんなの前で罵倒したヤンキーに言われる筋合いはない。金髪ヤンキーはどんどんドアをたたいて騒ぎ続けている。

「あたしが悪かったよ。おまえが許してくれないならもう短歌の会に行かない、っておばあちゃんがゴネてるんだ。だからどうしても許してくれないと困るんだ」

知ったことじゃない。生徒にヤンキーがいるなら給料をもらってる以上指導せざるをえないが、業務外でヤンキーを相手する義務はない。

金髪ヤンキーはあきらめるどころか、ドアをたたく音はますます激しくなっていく。借金取りの取り立ての手口を思い出した。滞納者が居留守を使って部屋に隠れている場合、借金取りはアパートの近隣の部屋の呼び鈴を片っ端から鳴らして住人たちから滞納者について聞き取りをするというもの。そうすると近所には迷惑をかけられないと観念して、滞納者はたいてい自分から部屋から出てくるという。

君はスタジアムに吹く風のように

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