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ムメイ
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耀聖(ようせい)
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どこだろう、ここ。ふわふわする。
誰かが私を呼んでる。
「カナ、カナ! 良かった目が覚めたか」
「…………ここは?」
「城に戻ってきたんだよ」
違う。元の世界じゃなかった――。
「カトル、あの後私は?」
「魔法を使って疲れたのだろう。倒れたんだよ」
「そう――」
魔物がいなくなっても元の世界には帰れなかったのかぁ。
ふぅと息を吐いてから、両手で顔を押さえた。
「カナ」
泣きたいのに、彼の存在が邪魔をする。
片方の手をとられて、私は彼の顔を見た。
「私と結婚してくれ」
ーーー
どこか、一人になれる場所――。
私は、一人走っていた。
「カナ、あそこなら鍵穴に結界をはれば」
ライトが言うあそこって、そうかあの場所なら誰も近寄れないよね。私は、鍵を握りしめ、契約を交わした場所へと――逃げた。
ーーー
「ライト、教えて……」
「なんだ?」
「私はこの世界から帰れないの?」
「聖女の契約は、この国で死ぬ事を誓う契約だ。遠くに行かないように、カナの魂は縛られている。その代価として、僕達の光の魔法で国を守っている」
「な……にそれ……」
「元の世界に帰ることは、僕では無理だ。僕も契約に縛られている精霊だからね。それに――」
ライトの声が止まる。
「それに、何?」
「――、リサなら出来るかもしれないね」
「え?」
リサさんなら、出来る? 何で?
「リサは聖女の契約をしていない。縛られていないんだ」
「何で……」
聖女の契約をしていないの? じゃあ、彼女は元の世界に帰れるってこと? 私は帰れないのに?
「カナ、僕は今から君にとても嫌な知らせをしないといけない」
「え――」
「君はこのままでは、死ぬ」
何? 死ぬって。私が?
意味がわからなくて私は固まってしまう。
「そうだ、カナの中に魔獣の卵がある。魔獣はカナに見えない魔物の別のかたちだ。それが孵化すれば、君は君でなくなるだろう。それに、予言の魔物はまだ生きている」
あれは、違ったの? いったい何が起こってるの?
「君が望む未来が欲しいなら、言う通りに動くしかない。リサに外の国を巡ってもらい強くなってもらうんだ――。その為にカナ、リサはこの国にいらないと王達に言わせるんだ」
ーーー
「きれい……」
誰もいない場所から声が聞こえた。
「誰?!」
誰も入ってこれないはずの場所に、――でもこの声は。
「カナちゃん」
「その声は、リサさん?」
「うん、そうだよ」
聞いた声だ。でもやっぱり、リサさんの姿は見えなくて。
「リサさん、夢なんかじゃないですよね。本当にいるんですよね」
「いるよ。ごめんね、すぐに会いに行けなくて」
「いいです。もう。私、帰れないって……」
ライトとしていた会話を思い出しながら、私は続ける。元の世界から持ってきた、スマホを握りしめて。
「彼氏がいたんです。私。彼に会いたくて、帰りたいのに。もう、帰れないって……」
でも、帰りたい。帰りたいよ!
「お父さん、お母さん、お兄ちゃんにも、もう……」
タツミ、会いたいよ!
涙が勝手にポロポロとこぼれ落ちる。
「だから決めたんです。私! ここで生きていきます。もうそれしかないから。リサさんと違って……」
お願い、リサさん。私を助けて――。
「だから、さようなら、リサさん。もう二度と会わないで下さい。……嘘つき」
「まって!」
リサさんは何か言いたかったのかな。でも、こうしないと、帰れない。違う、帰る為にはこう動けばいいのよね――? ライト。
私は立ち上がって、外に向かう。言われた通りに動かないと――。
バタン
後ろで扉が音をたてて閉まった。
「会いたくない?」
「はい。ライトに聞いたんです。彼女の力は危険だって。私の力を奪っているかもしれないと」
嘘なんてつきたくないのに……。
「わかった。その様に動こう。光の精霊と大事な話があったからあの場所にいたんだね。すまない、気が動転してしまった。急がないから、考えてくれないか――」
カトルはそう言って、じっと私を見つめる。この時、初めて気がついた。彼の瞳は、私じゃない誰かを見ていることに。
「時間を……下さい」
「あぁ、私は話をしてくる。今日はゆっくり休んでくれ」
カトルが部屋を出ていくと、ライトが話しかけてきた。
「リサにも、説明をしてきた。大丈夫だ、彼女はきっと動いてくれる」
あんなこと言ったのに……。やっぱり、彼女が本当の聖女だよ。私より強くて、優しくて。何で私が呼ばれたんだろう。
ちくりと身体に小さな小さな痛みが走った。
「カナ、あまり悪く考えるな――。孵化がはやまる」
わかってる。リサさんが帰ってくるまで、私は負けられない。
彼女が、唯一の希望だから。
ーーー
「カナ様、カトル様からの伝言です」
「はい」
「リサという人間が近づかないようにした。ただこれだけでいいのか? 捕まえて断罪しなくてもいいのか、と」
「聖女である私がそんなこと望みません。ただ、近くにいなければ大丈夫なんです」
「はい、わかりました。伝えてきます」
さっきの声は、リード? ルード? どっちだったのかな。扉の向こうからじゃわからない。声はよく似ているから。
断罪なんて――。カトルは何をそんなに恐れているの?
私が聖女じゃなくて、リサさんが聖女だったら、何かあるのかな。彼女を、守ってもらう人をつけなきゃ、命が危ない?
でも、私の知り合いなんて…………。
ーーー
カツカツカツバーーーン!
あの、えっと誰ですか?
夕刻近く、知らない女の人が部屋に入ってきた。濃い紫色の長い髪、紫の瞳のきれいな人。
「私、メリエルと申します。貴女とお友だちになりに参りましたわ」
彼女の後ろで、片方の目が青い、ルードがあたふたしていた。
「友達……?」
「そうですわ! とあるお方から、お願いされましたの!」
「メリエル様! あまり時間は――」
「わかっております」
メリエル? ルードの知り合いなのかな? どう言えばいいんだろう。
「カナ」
ライト?
「その女に、頼め。リサのことを――」
え?
「今日はご挨拶だけ! それではまた」
「待って下さい」
帰ろうとする彼女を私は急いで引きとめた。
「あの――」
何て言えばいいのかわからなくて、私は言葉に詰まってしまう。それを見た彼女はルードを外に出させてからゆっくりとこちらに振り返った。
「何かお急ぎですの?」
コメント
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うわあ、第13話、胸がぎゅっとなりました……。カナが元の世界に帰れないと知って、スマホを握りしめて「タツミ、会いたいよ」って泣くところ、もう一緒に泣きそうになりました😢 それなのに「もう二度と会わないで」とリサさんを突き放す決断をする強さと苦しさが切ないです。ラスト、カトルの瞳が「私じゃない誰か」を見ている描写、すごく印象に残りました。メリエルという新キャラも気になるし、ライトの「あの女に頼め」の意味も…。続きが待ち遠しいです!