⚠ご本人様とは一切の関係ございません
基本🟪視点のみ(🟨🟪)
学パロ
®️なし
メンバー以外の人物表現→⬛
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話が盛り上がるとついページをめくる手が早くなってしまう
いよいよ佳境に入りかけたところで、教室の前方の扉が開く音がした
目だけをそちらに動かす。心臓が微かに高鳴った。しかも嫌な方向に
その友人は用事から帰ってきた直後らしく、手に数枚のプリントを持っていた。辺りを見回した後、お目当てのクラスメイトの方へと向かっていく
🟨「─あ、いた。次だろ?面談」
「期末の結果返されるから覚悟した方がいいぜ」
⬛「マジかー、俺今回やばいよ?」
🟨「さっきお前の事で先生頭抱えてたって話しとく?」
⬛「うーわ絶対詰められるって、余計行きたくねぇわ…」
きりやんより出席番号がひとつ後ろのそいつは、大袈裟に頭を抱えながら教室を出ていった
この時期、三年生は授業が早く切り上がる代わりに、担任との二者面談が入っている。中間テスト後の進路希望と、今回のテストの結果を元に話を進めていくと昨日のHRの時に言っていた
俺は今日の一番最後に割り振られていた。よりにもよって一番最後、前の人の時間が押せば押すほど、帰りが遅くなるのだけはいささか不満だった
それまでの時間を潰そうにも、部活はそもそも入っていないし、委員会の取り組みも今はない。ならば積読でも消化しようと数冊持ってきていたのだが、どうやら正解だったらしい
目線をページに戻そうとした時、やや離れたところから自分の名前を呼ぶ声が聞こえた
今度は顔ごと動かして、声のした方向を向く。肩に鞄をかけたきりやんが、こちらに歩んでくるところだった
🟨「スマイルも今日なんだっけ?面談」
🟪「ああ、そうだよ。しかも一番最後」
🟨「うわ可愛そー、ドンマイ」
どう考えても微塵も可哀想なんて思っていない。その証拠に、ニヤニヤと目が笑っていた。軽く睨みつけるとおどけたように肩を竦められる
🟨「じゃ、俺先帰るから。また明日な」
🟪「……おう」
軽く手を挙げて、彼は今しがた入ってきた扉から出ていった。他の友人と待ち合わせていたのか、その人物たちに待たせた旨を謝る声が微かに聞こえてくる
その声も聞こえなくなって、俺はようやく本に視線を戻した
数行読み進めては、同じ場所から読み直す。さっきまで文章に食らいついていたはずの目線が、今は何故か滑ってしまってしょうがない
目を閉じて眉間を軽くほぐす。嫌な心臓の高なりと、ざわざわとした不安感に段々と蝕まれていった
この度にあの梅雨初めの日を思い出す
・・・
なかむに己の醜態を見せたのも、これで二回目。どちらも雨の降る日での出来事
きりやんの恋が実って欲しいと思っているのは事実。でも他の人間が彼の横で、幸せそうに笑いあっている様子なんて思い浮かべたくないし、それが現実になんてなって欲しくない
さっの出来事と共に、グズグズと呂律も頭も回らぬまま、涙とともに床にぶちまけた
些細なことで舞い上がるのも、勝手な考察と思い違いで苦しくなるのも、これで何度目だろう
🟪「─……俺は…おれが、さっき、きりやんに言ったことも、…あれが正しかったのか分からない」
「…もう、疲れた……こんな、こんな事になるんだったら…っ、おれは──」
『きりやんなんて好きにならなければ良かった』
そう言おうとした矢先、先程まで無言で俺の背中をさすっていたなかむに、両肩を思い切り掴まれた。痛みを感じるほど強く掴まれたことに驚きと困惑が入り交じる
思わず項垂れていた頭を上げると、彼は今までにないくらい眉を吊り上げて俺を睨みつけていた
🟪「な、なかむ…?」
⬜「それ以上言葉を続けてみろ、その時はお前を殴るからな」
🟪「……は?、な、なんでいきなり」
⬜「…一時的な感情で言葉を口にすると後悔するよ?」
「少なくとも、その言葉はお前の心からのものじゃない。そうだろ?」
🟪「……お前が何を感じとったのか知らんが、俺の本心は─」
⬜「ちがう!!!」
教室が震えるほどの大声に、こぼれそうだった涙が引っ込む。その声は怒りよりも、切実に願うような響きを孕んでいた
さっきまでと形成が打って代わり、今度は彼が俯いている。雨音が、痛いくらいに静かな教室に囁いていた
⬜「ちがう…やめて、ダメだよスマイル」
「お前の気持ちは痛いほどわかる。だからこそ、迂闊に言葉にしてほしくない」
🟪「……お前と俺とじゃ、そもそもの条件が違うだろ!俺にはハナから望みなんて─」
⬜「俺が!後悔したから言ってんだよ!」
再度怒号が落とされた。今度はハッキリと、怒りを露わにしたような声音で告げられる。思わず体が小さく跳ね上がった
⬜「…いいか、聞けよスマイル。本当なら、俺は中学の卒業式できんときに告白するつもりだった。好きな人もいないって言ってたから、…俺にも望みがあると思ったから、」
「でも、卒業式の一週間前、予行練習があった日にクラスの奴に聞かれたんだ、『きんときのこと好きなんだろ』って。それも皆がいた場所で。もちろんきんときも居た」
🟪「なかむ、」
⬜「その時さぁ、…俺、なんて言ったと思う?」
俺の肩を掴む手が小さく震え、彼が顔を上げる。数分ぶりに見た顔は怒りとは程遠い、泣きだしそうとも、笑いだしそうとも取れる表情を浮かべていた
⬜「……『好きなわけない』って言ったんだよ、男なんて恋愛的に見るわけないだろ、…はっきり言ったのを覚えてる」
彼の瞳が大きく揺れて、雫が頬に伝う。俺はかける言葉がうかばず、反射的に彼のことを抱きしめていた
⬜「…自惚れてるのかもしれないけど、あの時のきんときは、…すごく、凄く悲しそうな顔してた、」
「周りの人間に囃し立てられるのが怖くて、揶揄われたことにムカついて……!一時的な興奮状態のまま、俺は…俺の中で、取り返しのつかない事をして…っ」
俺の肩にかけられていた両手は、力無く彼の顔を隠した。彼がきんときの話をする時、幸せそうに話すのに陰りがある理由が、ようやくわかった気がした
一度大きく身体を震わせて息を吸った後、涙に濡れた声で彼は言葉を続けた
⬜「…今でも、鮮明に思い出すくらい後悔してる。あの時、素直に答えていれば…もしかしたら、いや、きっといい結果になっていたかもしれないのに、って」
「……言葉ってさ、行動よりも記憶に残りやすいんだよ」
「だからさ、一時の迷いだとしても、お前がきりやんの事を想う気持ちを、スマイル自身が否定しないであげてよ…」
最後はほとんど掠れて聞こえなかった。けれど、ただただ、頷くことしか俺には出来なかった
少しした後、鼻をすすって彼から離れる。目元を赤くして、涙でぐちゃぐちゃの顔面を見て、互いに思わず笑ってしまった
ひとしきり笑ったところで息をついて、彼に向き直った
🟪「……さっきは、その…悪かった」
⬜「ん?何が?」
🟪「なかむの言う通り、感情が昂りすぎてた」
「それに…嫌なこと思い出させただろ」
⬜「いいよそんなこと、俺も言葉強くなっちゃったし、お互い様ってことで」
そう言って彼は立ち上がり、中庭側の窓を開けた。湿り気と雨の匂いが鼻先をつく。窓越しの紫陽花に、小さな雨粒が跳ねているのが見えた
⬜「それに、スマイルの言うことも一理あるからさ」
🟪「…?何か言ったっけ」
⬜「もう疲れたー、なんて言ってただろ」
「お前は自分の感情に振り回されすぎ!いくらなんでも初めてじゃないだろうに」
🟪「え?あ、…っう、……ぅん」
⬜「……まじ?」
・・・
思い出したくない所まで記憶が蘇ってしまう。教室の温度が上がったのか、顔が熱くて仕方がない
いつの間にかページをめくるだけめくって、後書きまで進んでいた。内容なんて当然分からないし、しおりも挟んでいないからどこまで確実に読んだかも分からなくなっている
諦めて本を机の上に置き、時計へと目をやる。思っているよりも進んでいたが、まだ自分が呼ばれる気配は無い
さて、どうしたものか。もう一冊あるからそれを読むか、それとも課題を進めてみようか
🟦「─まだ気づかねぇのかお前」
続く
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また前後で分かれます…
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