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あれから数日、僕は何度もバルサーク卿を見かけた。
目が合う度に僕に駆け寄り話をしてくれた。
「今日の紅茶は何だ?」
「えっと……今日はバルサーク卿の好きなミルクティーですよ。」
「ミルクティー…!私の好物まで覚えてくれるとは嬉しいな…!」
目を輝かせて話してくれるバルサーク卿を見る度、何度も見る度に。胸が熱くて、ずっとこのまま居られたらと思ってしまうようになった。
初めての感覚。今まで感じたことの無いその感覚に、僕は混乱するばかりだった。
そして、初夜を共にしてから1週間程経った時、それは起きた。
「宴会執事、ルーカス様がお呼びよ、早く行きなさい。」
「は、はいっ…!」
冷たい声で言い放つメイドのアビー。
彼女はバルサーク卿の専属メイドである。そして、彼女はバルサーク卿に恋をしているらしい。そんなバルサーク卿がメイドのアビーではなく僕を呼ぶなんて珍しい。
僕が足早に部屋に向かうと、既にドアの前で待っていた。
「来てくれたんだね!嬉しいよ。」
ぎゅうっとハグをしてはニコニコと笑うバルサーク卿、でも、ハグされた時に、バルサーク卿の手に持っていたハンカチが、何だか甘い匂いがした。
「バルサーク卿…なにか御用ですか…?」
「あぁ…実はね、君に頼みというか…お願いがあるんだ。」
そして、次に放たれた一言で、僕の思考は止まった。
「今夜……また抱かせてくれないか?」
しばらく考えた末、僕は小さく首を横に振った。
「ダメです…バルサーク卿と僕では位が違いすぎます……」
「そうか……ならダメ元だ…。」
そう言うとバルサーク卿は僕を壁に寄せて腕を掴み、口を鼻を覆うように甘い香りの着いたハンカチを押し付けた。
「ふぐっ…?!んんっ!んんん〜っ!」
細すぎる僕の身体では到底押しのけるなんて出来ない。息を吸う度に甘い香りが頭まで刺激してくる。だんだんと視界がぼやけてきて、体に力が入らない。
そんな中、バルサーク卿は僕の耳元で囁いた。
「ごめんよ……。」
酷いことをする人じゃない、ちゃんと分かっていたのに。気持ちに応えられなかった僕が、バルサーク卿のお願いを聞けなかった僕が。この逃げられない状況に涙を浮かべてしまったからか、バルサーク卿は申し訳なさそうな声で言った。でも、僕はそんなことよりも先に。彼に酷くされた為に、この後のことを妄想してしまったが為に。
堪らなく興奮していた。
目が覚めるともう夜になっていて、僕はバルサーク卿の部屋のベッドで寝ていた。
「おはよう。」
僕が起きたのに気が付き、バルサーク卿はベッドに歩いてきた。
「あ…あの………僕…」
「いいんだ。ごめんよ、無理にここに連れてきて。」
ベッドに乗り、少しずつ僕に近付いてくるバルサーク卿。その目はまるで小さなウサギを狙うオオカミのような目だった。
「こ…これから僕……どうなっちゃうんですか…?」
「これから?ふふっ……これから君は、私の愛に溺れるんだ。」
そして、バルサーク卿は僕の口にピンク色の液体の入った小瓶を宛てて、中の液体を流し込んできた。
「んぐっ?!んんっ…」
甘い…あのハンカチと同じ匂いがする。本能的に飲み込んでしまった僕は、その危険な香りに困惑した。
「大丈夫…すぐに良くなる……」
その言葉は本当だった。
身体がどんどん熱を帯びて、差程の大きさも無いソレは服の上からでも分かるほどにビクビクと主張してくる。
「あっ…う……」
「可愛い……可愛いよイソップ……♪」
耳元で囁かれる度に、息が耳にかかって身体が跳ねてしまう。服を脱がされる感覚にまで反応してしまうほど、僕の身体は敏感になっていた。
そしてその夜は、甘くて、暑くて、忘れられそうもない時間になった。
僕の身体はどうかしてしまったのだろうか…。
バルサーク卿に身体を触られているのに、男同士の行為なのに。
こんなに気持ちいいなんて。