テラーノベル
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彼女との出会いは少し…いや、とても変だったと思う。
10歳の頃、 私は地獄を見た。
いつも通りの、幸せだった2年前のあの日。
突如壁の向こうからゆっくりと姿を現した“それ”はあまりにも巨大で、 筋肉がむき出しの体からは、ぶわぶわと白い蒸気が立ち上っていていた。 壁と同じ高さ、いやそれ以上。
耳をつんざくような破裂音とともに、 50mもの高さの壁の一部が、 バラバラに弾け飛んだ。
その瓦礫に押しつぶされて、私の大事な人達が死んだ。
土煙と沢山の人の悲鳴が体を覆い、 視界が真っ赤に染まった。
私は一人になった。
あれから2年がたち、 12歳になった。
訓練兵団の入団式。
「貴様は何者だ!」
「何のためにここに来た!?」
震える指先をギュッと握りしめ、不自然に思われないように前だけを向き、教官――キース・シャーディスに怒鳴られている同期の子たちを見守る。
『…ん?』
しばらくそのまま自分の番を待っていると、教官の鋭い怒鳴り声に紛れて、すぐ近くで誰かの咀嚼音が耳に入ってきた。同時に、どこかホクホクとした食べ物に匂いが鼻 最初は緊張からくる幻聴やただの砂の匂いかと思ったが、それにしてはやけに鮮明すぎるそれらに、少しだけ視線をずらした瞬間。
『!?!?』
私は自分の目を疑った。そして次に、今しがた自分の視界に写っている人物の正気を疑った。
私の視界に写っているのは、濃い焦げ茶色の髪を後ろで一つにまとめ、周りよりも少しだけ背の高い、綺麗な女の子。
その少女が握っていたものは、 芋だった。
いや、握っていただけではない。モグムシャと食べていた。
それまで、他の訓練兵である坊主頭の少年を叱りつけていたキース教官が、 それに気が付いた瞬間、 教官は信じられないものを見るような目で彼女を見つめた。
「おい貴様…何をやっている…?」
低く、底冷えするような声が訓練中に響いた。
途端、その場にいた全員の視線が一斉に彼女へと集まり、周囲の空気がピシャリと固まる。
そんな中、当の本人は自分が注目の的だということに気付いていないのか、周りをきょろきょろと見回すと、あろうことかそのままもう一口芋を口に含んだ。
「貴様に言っているんだ!何者なんだ貴様は!」
教官が彼女の目の前に立ち、ぐわっと目を見開いて叫んだ。
その声には流石の彼女も息を呑み、目を大きく見開いた。
そのまま勢いよく口に含んでいた芋を飲み込み、右手を心臓あたり当てて、キリッと口を開く。
「ウォール・ローゼ南区、 ダウパー村出身!サシャ・ブラウスです!」
“サシャ・ブラウス”と名乗った彼女は、右手にまだ半分ほど残った芋を握りしめたまま、 元気にそう答えた。
その拍子に口の端に引っ付いていた芋の欠片がポロポロと地面に落ちる。
「サシャ・ブラウス…貴様が右手に持っている物は何だ?」
教官の眉が僅かにひくりと動いた。
「蒸した芋です!」
「調理場にちょうど頃合いの物があったので!つい!」
調理場から勝手に盗んできたらしいその芋を右手に持ちながら、 あまりにも堂々とした態度で教官に言葉を返す彼女の姿が信じられず、 その場にいた全員が息を呑んで目を見開く。 困惑が続く中、 サシャは何かを思い出したかのように「あっ!」と目を見開くと、一瞬だけ芋を見る。
そして、意を決したように半分に折ると、 教官に向かって舌打ちを零しながら、 小さい方の芋をおずおずと教官に差し出した。
「半分…どうぞ…」
「は…半…分…?」
キース教官は困惑しながらその芋の欠片を受け取った。
それを見たサシャは、満足そうに得意げな表情を浮かべ、 唖然とする教官をフッと鼻で笑った。
彼女はそのあと、罰として食事抜き+5時間ぶっ通しで走らされ、おまけに同期からは「芋女」というあだ名を授けられていた。
それが彼女…サシャとの、初めての出会いだった。
サシャへの愛が止まらずつい衝動書きしてしまいました。文章疎いですが「ほ〜ん」っていう顔で見てくださいませ
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