⚠️注意⚠️こちらはnmmnです。
本人様とは一切関係ありません。
含まれる要素:記憶喪失、過呼吸
以下本文
星導が、消えた。
本当に急だった。いつも通り寝て起きて、待ち合わせ場所に着くとそこに星導は居なかった。次の任務にも姿を現さず、店にも足を運んだが人っ子一人居ない。 まるで、この世から星導だけが消えてしまったように感じられて、狂ったようにそこらじゅうを探した。来る日も来る日も、太陽が登り月が出るまで。
「「ロウ」」
振り返ると、ライとカゲツが俺を見ていた。
どうしてそんな目をする?どうしてそんな冷静でいられる?星導が行方不明になったんだぞ。怒りにも似たような感情がふつふつと腹から湧き出てくる。
「もう、やめない?あれから全然寝てないじゃん」
「ほんまに。星導どうこうより、先にお前がぶっ倒れるぞ」
二人が心配の言葉を投げかけてくれているのは分かる。けれどこればかりは譲れない。
「別にどうだって良いんだよ、俺は」
アイツと比べたらどうだって。
デビューしてヒーローになって、いざ再開したら俺のこと綺麗さっぱり忘れてて。それでも猛アタックすれば前と同じように好意を抱いてくれた。 少しでも隙を見せるとすぐにからかい、たまにやり返すと耳を赤くして茹で蛸のように大人しくなる。そんな星導が大好きで、次は絶対手放さないと誓った。
それなのに。
「良いだろ俺の好きにして。もうほっといてくれ」
そう吐き捨てるようにこぼし、随分と細くなった足でまた歩き始める。もう二人は諦めたのだろうか。何も言わず、ただ俺の背中を見送るだけだった。
星導を探し始めてからどれくらい月日が経った頃だろう。ふと路地裏へ目をやると、見慣れた白い生物が浮遊しているのが見えた。
星導のオトモだ。
急いで後を追いかける。見失わないよう、今までで一番の集中力で気配を探った。 追いかけた先で辿り着いたのは、人気のないがらんとした空き地。 ここに星導が居るのかと しばらく辺りを歩き、
その目が捉えたのは、風に揺れる見慣れた紫髪の男。星導で間違いなかった。
やっと、見つけた。生きてた。また会えた。
様々な感情が己の中を駆け巡る。今すぐにでも走り出して抱き着きたい気分だ。
「星導、」
期待を混じえた声色でそう声を掛けると、彼はゆっくりと振り返る。ああ、早くその顔で微笑んでくれ。その柔らかい声で俺の名を呼んでくれ。
「…?」
「どちら様ですか?こんな所で」
その瞬間、胸の内にある何かが、音を立てて崩れ去った。
「ぁ…」
口から声にならない声が漏れ出ているのが自分でも分かる。
頭が、痛い。
呼吸が苦しくなり、徐々に浅くなっていく。
「っは、はぁっ、は…」
「ちょっと…!大丈夫ですか?!」
思わずしゃがみ込んでしまった俺の元へ走り寄る星導を捉えた後、ブツっとテレビの電源が切れるように意識が途絶えた。
目が覚めると、目の前には知らない天井が広がっていた。ゆっくりと上半身を起こし、周りを見渡す。俺は…確か意識を失って…。そうだ。星導と再会できたのか。急いで探しに行かなければと慌てて動くと、ズキンと頭が痛んだ。ふらつく身体をベッドへ預けるように倒れ込み、クソ、と呟く。
「良かった、目覚めましたね。気分はどうですか?」
音がする方を向くと、星導が胸を撫で下ろして立っていた。手元には水や軽食などを持っていて、自分が星導に看病されていたことを悟る。
「びっくりしましたよ。まさか目の前で倒れるとは…」
そう言いながらテキパキと俺の身の回りを整える星導。その手入れの行き届いた綺麗な髪から覗く横顔が変わらずに綺麗で、思わず手を伸ばしてしまった。 星導が屈んだタイミングで、ちゅ、と頬にキスをする。
「は…何して…っ」
きっと星導は俺のことを覚えていない。だから今こうやって手を弾かれているのだろう。でも、それでも止まれなかった。 星導が行方不明になってからずっと、こうやって触れたかった。ここに存在するんだと、彼の熱を感じたかったから。
「何なんですか貴方…これ以上変なことしたら警察呼びますよ」
うん。ごめん、と一言呟き、続けて口を開いた。
「星導、俺さ、」
お前のこと大好きだったよ。
その声はきっと、空気中で消えてしまい彼には届かない。 「具合が良くなったら勝手に出て行って下さい」とだけ伝え、星導は部屋を出て行った。
これで良かった。そう思う。
でも何故だか、目からは涙が止まらなかった。拭っても拭ってもこぼれ落ちてくる。 おかげでシーツが濡れてしまった。星導怒るかな、とか、あの時もう少し欲張ればよかったな、などを冷静に考える。 脳裏に焼き付いた星導の嫌悪に塗れた顔が、じっくりと心を蝕んでいくのが分かった。
「…お前はいつもそうだよな……」
誰も居ない静かな部屋に、そんな女々しい俺だけの声が響いた。
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