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#魔道具職人
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「ふっふっふ。アイナさん、ついにこの時が来ましたね!!」
「そうですね!!」
夜のイベントを2時間後に控え、私とポエールさんは最後の打ち合わせに臨んでいた。
ポエールさんの言葉からも、イベントに対する強い意気込みが伝わってくる。
私もたくさん準備をしてきたから、ここは負けるわけにはいかない。
「ちなみにご報告ですが、昨晩の前夜祭は無事に終わらせることができました。
『魔女の試練』を免除して街に入ったのはおよそ500人だそうです。
もちろん、あらかじめお話を頂いていたガルーナ村の方は、全員入っていますよ」
「おお、ありがとうございます。
前夜祭は行けなかったので、ちょっと心配だったんです。
確かに昼も、人の数がいつも以上に多くて――
……『ガチャの殿堂』なんかも、大賑わいでしたし」
「ははは。うちの職員もてんてこまいでしたよ。
今回の目玉、『金の成る木』の剣は……私も欲しかったくらいですから」
「ジェラードさんも欲しがってましたね。
あれは家宝レベルの逸品ですから、狙う人には頑張って頂きたいものです」
……実際、臨時収入を毎日期待できるなんて、それだけで一生楽しくなりそうだもんね。
効果を考えると私も欲しいくらいだったし、正直後ろ髪を引かれているところはあったりするのだ。
「しかしこのままいけば、明日のどこかで全部売り切れてしまうと思います。
せっかく収穫祭のために補充したのに、最終日まで持たないとは……いや、嬉しい悲鳴なのですが」
「うーん、今後は母数を増やした方が良いかもですね……」
「そうですね……。
それと、内容をもう少し見直しても良いかもしれません。
今までの目玉は『超豪華な一点もの』ばかりなので、『価値はあるけど他でも手に入るもの』も混ぜてみるとか」
「なるほど、それも考えてみますか」
あまりに良いものばかりを出してしまうと、そのうち何かのバランスが崩れてしまいそうな怖さがある。
そもそも特殊な効果の付いた武器なんて、市場には滅多に出回らないものだからね。
「――さて、それよりも今日の本番です!
アイナさんとグリゼルダさんに作って頂いた、例の照明装置もかなり良い感じでしたよ!」
例の照明装置……というのは、錬金術と魔法を組み合わせて作った、強力なライトのことだ。
『光の魔導石』はたくさん使うものの、結構な光量を出してくれる優れものだ。
「グリゼルダの協力があると、いろいろなものが作れますからね」
「アイナさんの力も不可欠ですけどね……。
まったく、お二人がいれば魔導大国を目指す道もあるかと思いますよ」
魔導大国……それはとってもファンタジーな響きがする。
ちなみに私の作る国は、今なお最終的なイメージが無い。
もしかしたら、魔法に傾倒した国を作る可能性もあるのだろうけど――
……まぁ、候補としては入れておこうかな。
ちなみに私とグリゼルダで一緒に作ったものとしては、あとはガチャの設備くらいのものだ。
ガチャをまわすたびに補充が必要になるから、そこだけ魔法の提供をお願いしたんだよね。
ちょっとした転送魔法を常駐させる形にしてもらって――……いや、正直あのガチャは、グリゼルダがいなければ完成できない代物だったのだ。
「――アイナさんっ!!」
「え? あ、どうも」
不意に、私の後ろから女性の声が聞こえてきた。
ジェラードのお気に入りの子……ではなくて、最近入った新人――でもなくて、それなりに以前からいる、いわゆる中堅どころの職員さんだ。
「今日も良いですか!?」
「ダメですよ?」
「まぁまぁ、良いじゃないですか! えいっ」
「ぐあっ」
……この女性、私を見ると何故か抱き付いてくる。
一応許可は求めてくるものの、却下しても抱き付いてくる。
変な目で見られることも無いし、変なことをされるわけでも無いし、時間も長いということも無いし――
……正直ちょっと面倒なので、あるがままに身を委ねることにしているのだ。
「こらこら、お前の仕事はもう終わっただろう」
「ポエール様、まだ受け渡しが残っています!
あと、できれば調整もしたいです!!」
「えぇ? 残り時間も少ないのに、調整もするのか……?」
何やらポエールさんと女性が仕事の話をし始めた。
言っていることがさっぱりだけど、ひとまず私には関係ない話なのかな?
そんなことを考えていると、ポエールさんが私の方を振り向いて言った。
「……実はですね。アイナさんに、プレゼントがあるんですよ」
「え?」
それは突然の申し出だった。
しかしプレゼントをもらえると聞けば、やはり嬉しくなってしまう。
自分の知らない間に、自分のことを思って準備してくれる――そんな気持ちは、とても嬉しいものだからね。
抱き付いていた女性は私から一旦離れて、すぐ足元にあった少し大きめの箱をテーブルに置いた。
いつの間にこんな箱を――というのもあったけど、それなりに大きくて、あまり重くは無さそうな箱だった。
「うふふ♪ アイナさん、気に入ってくれると嬉しいんですけど♪」
「今日のイベントでは、是非これを使って頂きたいんですよ!」
「はぁ……。
――うぇっ!?」
女性が箱を開けて、中から取り出したのは――……何だか可愛らしい衣装だった。
いわゆるファンタジー服といわゆるアイドル衣装を、足して2で割ったような感じの衣装――
「ささ、アイナさん♪
時間も無いことですし、フィッティングをしてしまいましょう!」
「これで今日のイベントも大盛り上がり、間違い無しですね!!」
「え? あれ? ポエールさん? 私、何も聞いてませんよ?」
「それはもう、サプライズですから!」
「わ、私にサプライズしてどうするんですか!!?」
「まぁまぁ! まーぁまぁ!!」
ポエールさんは大きな声を出しながら、身振りだけで女性に指示を出した。
そして私は流されるまま、奥の部屋へと連れ込まれてフィッティング。
……いや、可愛い衣装ではあるんだよ?
でも、見るのと着るのとでは違うからね……?
しかも、イベントでかなりの参加者が見込まれる中での、急なこの丸振りはちょっと――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
……調整をするまでもなく、その衣装は私にぴったりだった。
なるほど、何度も抱き付かれると思っていたら、そのときに採寸をしていたわけか……。
ポエールさんも女性を全然注意しなかったから、不審には思っていたんだけど――まさかこんな展開になってしまうだなんて。
今日のイベントのステージの裏、ちょっとした控室に入ってから、私は身体を覆っていたマントを脱いだ。
下にはしっかりアイドル衣装――もとい、今日の衣装を着てしまっているから、あとは本番の開始を待つだけだ。
「アイナさんのプロ意識は凄いですよね!
ここまでの間、その衣装を隠して移動するだなんて……流石です!!」
ポエールさんは興奮気味に、満足そうに頷いた。
……いえ、それは違います。
普通の街中を、こんな姿で歩きたくなかっただけです。
ステージの上はそういう場所だから、それとごちゃ混ぜにしないでください……!
「まぁ、盛り上がるなら良いんですけどね……。
……でも、盛り上がりますか?」
「間違いないですよ!
アイナさんも、裏ではファンクラブがあるくらいですからね!」
「えぇ……? それ、初耳ですけど……」
「それならご紹介しましょうか?
トップを務める方は、私も知っておりますので」
「えぇ……?」
私もそれなりに、この街では表舞台に立ってきたことは否定できない。
ファンククラブだなんて、もしかしたらあってもおかしくは無いのかもしれないけど――
……それにしても、出来るときはこんなにこっそりと出来ちゃうものなんだ?
……というと、ルークとかエミリアさんにも、もしかしてファンクラブがあるのかな?
二人もそれなりに目立っているし――……となると、グリゼルダとかにも?
あぁ、確かに自分以外のことだったら面白いかもしれない。
しかしその反面、自分のことになると、本当に微妙な感じになってしまう……。
……まぁ、それはあとで考えることにするか。
いや、別に考えなくても良いか……。
うん、今はひとまず、イベント進行の仕事に集中することにしよう。
よーし、頑張るぞっと!
コメント
1件
512話、楽しく読ませてもらいました!アイナさん、まさかのサプライズ衣装でステージに立たされる流れが面白かったです😂 ポエールさんたちの「まぁまぁ!」攻撃に押し切られる感じ、思わず笑っちゃいました。採寸のために抱きついてたってオチもニクいですね。ファンクラブの存在が初耳だったアイナさんの戸惑いも可愛くて、イベント本番がどうなるのか気になります!