どこまでも広がる夜空の下、隣には、眠るように目を瞑った彼がいる。
これでもう、私の役目は終わり。
私は、「死にたい」というあなたの思いから生まれてきた、あなたの目にしか映らない幻想に過ぎない。
あなたを殺すこと、それが私の役目だった。
あなたは外から帰ってくる時、いつも疲れた顔をした。
でも、私といる時、たまに嬉しそうな顔を見せてくれた。
私は散々あなたを苦しめていたというのに、どうしてそんな顔を見せてくれていたのか今でも不思議でしょうがないけど、
私は、あなたのその表情が好きだった。
もうそんな顔も見れないのかと思うと、ちょっと寂しいな、と思う。
皮肉だよね。
あなたから感情を奪ったのは私だと言うのに。
でも、許してほしい。
あなたが「死にたい」と思ってくれなければ、私は生まれなかった。
私があなたの救いになれていたらいいなとおもう。
私と出会ってくれてありがとう。
感謝と愛を込めて、彼の唇にキスをする。
やはり彼は目を瞑ったまま、動かない。
ああ、ほら、早く行かなきゃ。
死神さんが呼んでいる。
夜空には、たくさんの星が舞うように煌めいている。
人は死んだら星になるらしいけど、
こんな私でも、あの中のひとつになれるのかな。
もしなれるとしたら、
あなたの隣に並ぶ星になりたい。
ああ、でも生まれ変わるのもいいな。
生まれ変わるなら花か蝶に生まれ変わりたい。
長閑な野原であなたと一緒にのんびりと暮らしていたい。
でも、やっぱりまた人間に生まれ変わるのも捨てがたいなと思ってしまう。
人間でいることは苦しいと思っていたけれど、あなたと一緒なら大丈夫なのかもしれない。
そしたらいつか、あなたが心から幸せそうに笑う姿を見てみたい。
もちろん、
私の隣で。
沈むように溶けていくように
二人だけの空が広がる夜に
二人一緒なら大丈夫。
あの遠い夜空へと、どこまでも駆けて行ける。
この手を離さなければ、きっと。
繋いだ手の感触はそのままに、
どこまでも続く夜へと溶け込んでいった。
コメント
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初コメです。(´☆ω☆`)ナルホドネ!
この素敵な小説からあの素敵な曲がうまれたんですね。