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おーおー、弦〜そんな悲しそうな顔すんなってー!俺も晴も無事なんだからさ、 え、こうなった経由を話せって?…そーだな、 夜、っても深夜だな。一時とかそこら辺。晴の部屋からドスンドスンって感じの音が聞こえてきて目覚めたんよ。なんだ?と思ってさぁ、晴の部屋行ったとこから始まんだけどよぉ… ーーーーーーーーーーーーー 『はるぅ…?どしたぁ?』 眠い目を擦り毛布を肩に掛けて、余ってしまった分を床に引きずりながらペタペタと冷たい廊下を歩く。 『ッ…?!』 晴の部屋に来た瞬間、久しぶりに感じる凄い量の瘴気。それから膨大な魔力。恐らくこの扉を開けたらもっと酷いだろう。と感じるほど、戦場と同じ緊迫感に迫られた。 その時点で 嗚呼、魔が出てきちまったか、と感じ取った。 それでも、賭けではあるが、まだ彼の自我があるかも知れない、と思って、いつもの調子で話す。 『はる?はいるぞ〜?』 [ダメっ!景来るナっ!!] 『んぇ゛〜…?お邪魔しま〜』 拒否しているのであれば、ギリギリ自我を保っているであろう、と思い、晴の拒否を聞かなかった事にし、部屋の中へ入る。すると急にとてつもない量の瘴気に襲われ、喉が刺されるように痛くなって呼吸がし辛くなった。 (これは…ちとやばいか?) 『我が名、景の名の元…』 [ケイ?ナニシテルノ??] (くっそ邪魔された…詠唱最中は攻撃すんなっつーの!!) 自身に入ってくる瘴気を軽減させる術を掛けようとすれば、晴の術式ではない術を使ったナニカに阻止される。 これは完全に取り込まれている。こうなると晴が自力で起きるか俺が無理矢理引き起こすかのどっちかしか無い。別に無理矢理起こして良いが、最近こう言うのが頻繁に起こっているため、もうあいつも慣れただろう。まぁもしもの時は此方で無理矢理引き起こす準備は整っている。いつでもこいや。 『ハル!!ケホ… 部屋だとなんだし外出ねぇ?多分このままだととーじろーに怒られるぞ〜!』 [ソレハ…ソウカモ。シカモ、ケイ刀持ッテナイジャン] 『ケホ、ヒュッ、刀…そーいや、急いで来たから持ってねぇなぁ…』 こいつの瘴気はとても濃いから、やられるのがはやい。現に、喉が変な音をたててきている。呼吸が出来なくなる前に術を展開しなくては。これ以上瘴気を吸うと喉に傷がつく。外に出れたら良いな、とか、せめて窓開けたらまだマシになるな、とか考えているうちに晴じゃない何かが話しかけてくる。…てか話しかけんなよぉ…こちとらお前とはちげぇんだよ…もう喉死んできたぞ…??? [ケイ大丈夫ジャナイジャン!ホラ、コッチ来ナヨ。手当シテアゲル。] 『ッヒュー…いや、いい。ケホッ…それより俺はお前を静めねぇといけねぇ。』 […ソレデ痛イ目見ルノハケイダヨ?] こんな時だからこそ、この自己治癒が出来にくいこの体を恨んだ。絶対自己治癒あった方が楽なのに。てかこれ酷くなったら藤士郎に怒られるだろ絶対。うわ〜…藤士郎怒るとこぇーんだよなぁ… 『それよりも、ゲホッ…外いこーぜ、?ハヒュッ…流石に此処だと本調子で戦えねぇ』 [ンー…マァ良イヨ。] 『おー、あざ〜す。…ゲホッ!…、』 そうして俺と魔は庭に出て見合った。 『ッふー…ぉし、ケホ…っしゃ、おーい!はるぅ!!今起こすからな〜!!』 […ウルサ…ソノ声、気ニ入ラナイナァ…ソウダ!喉カラ潰ソウ!] 『ッ!!ッハ カハッ… !』 潰そう、という単語が聞こえたと共に風か何かが凄い勢いで自身の喉に絡まり、締め付けてきた。 [アハハ!ケイ、苦シイ?ッテ、ワワッ!!] 霞む視界でそっちを見やれば、藤色の髪色の彼が居た。 『ッぐ…ぁ…ヒュ』 「晴くん?!景くん!何してるの?!」 [ナンダ、弦月様ジャン。何ノ用?] 「景くんの首のやつを取って!」 [ムリ、折角ヤッタノニサ、アト、ケイノ首二ツイテルヤツ、至ル所ニ飛ンデルカラ、神様モ気ヲツケテネ?] 今、状況的に有利なのは晴なので、藤士郎はその場から動けないでいる。 何かなすすべは無いかと考えていれば、遠くから、藤士郎が、 「…景くんっ!大丈夫?!」 と、聞いてきた。勿論、大丈夫な訳はないが、まだ窒息死するような弱さではないので、取り敢えずを刀優先して、藤士郎に取ってきてもらおうと思い、 『ッヒ、クフッ、ハ、げ、んっ!かたなッ!もって、ッグ、』 途切れ途切れではあるが、伝えたい事を話せば、弦月は分かってくれたのか、 「!、わか、った!景くんも意識飛ばさないでね!」 と言って、屋敷の中へ入っていった 『お、うッ!』 [行カセチャッテイイノ?ッ…?!ウワッ…!!待テ!マダ憎キ祓魔師ヲ痛ブッテナッ…ウワァア!!] 『は、るッ?ッぅ…』 どうにか首についているのを緩めようと悶えていたら魔が急に叫び出した。それと同時に白い煙が上がって、甲斐田の姿が一気に見えなくなった。 [っ、景…?] 『はる…ッ?』 嗚呼良かった、自分で起きられたんだ。と少し安心すれば彼が小走りで近寄ってこようとする。 [景ッ…なんで、こんなッ!っあ…!] 甲斐田が急にしゃがんだかと思えば、急に少し緩んでいた首に付いているやつが締まりだした。 『ッヒュ ! 、カハッ…! 、』 流石に我慢出来なくなり地面に膝をつく。息が出来なくなって、意識が遠くなって… [魔力の制御がッ、できなッ!!!] 「け、いくんっ!!これ!!」 『ッ、』 弦月が力任せに此方へ桜華水刃を投げてきた。勿論、軌道が外れ、俺の横を過ぎて行くが、気にしない。それに、弦月の大声で幾分か意識が戻った。 俺は喉を潰しに行く勢いで 『ぐッ…来いッ!桜華水刃ッ!!』 と叫ぶ。そうすれば手に慣れている感触。喉なんていらない。こいつがあれば何だって出来る。長尾家から公認で手渡されたソレは半分魔になっても変わらない俺の愛刀だ。 『ッヒュー ッ、ゲホッゲホッ! 』 一瞬叫んだだけ、叫んだだけなのに、絞められていた喉は限界なのか、一度咳き込むと、口の中に不快な鉄の味がした。恐らく喉かなんかが切れたな、なんて思いながらも、口の中の不快感の原因であるそれをペッ、と口から吐き出すと、 「景くんっ!!」 と焦った様子で藤士郎が走ってくる。 『ゲホッケホッ…と、じろ、はる、が…魔力 制御、でき、てない、ゲホッ』 「分かったからはやく首のやつ取っちゃって!景くんの喉、これ以上は持たないよ!」 ガラガラのカッスカスの声で、途切れ途切れに今の状況を伝えたら弦月に喋るな、と止められた。 『ふー…スーー…っし…我が名、景の名の元…我・束・首・絞・解!』 術を唱えた瞬間首がスッと楽になった。口内の不快感は一向に消えないが、まだマシだろう。 [景っ!避ケてっ!!] 晴がそう叫んだと同時に此方にクナイが飛んで来た。それを避ければ後ろの木に当たってバラバラと崩れる。 『おーおー…術の練度すげぇな。…ちょっと〜、はるきゅん!アタシの綺麗な肌が切れちゃったじゃない』 崩れたと同時に自身の頬から血が少量垂れてくる。それを寝巻きで拭い、桜華水刃を抜刀する。 『ちょーいと、本気出しますかー!』 「援護なら任せて!」 [弦っ、景っ!たすけてっ!!] 『おう。まかせろ!』 「我が名、藤士郎の名の元、我・前・護・他・魔」 藤士郎が自身と俺に護術を施した。 『さんきゅー!とーじろー!』 「うん。頑張ってね!」 クナイがどんどん飛んできて、それを綺麗に避けていく。 [うぅ…っ、とまん、ないっ!!] クナイを避けきったと思ったら、次は火球が飛んで来た。それもものすごい速度で。 それは俺の横を通り過ぎて藤士郎の方へ飛んでいった。 「ぇ、」 『藤士郎!!』 俺は咄嗟の判断で藤士郎を押し倒す。パキン、と音を立てて藤士郎がかけてくれた護術が解けた音がした。それを知っているのか知っていないのか、もう一つ、火球が飛んで来た。 ジュゥ、と背中から音がして、それと同時に人肉が焼ける時の独特な変な匂いがした。 『ッ゛ぅゔ…ぃッて〜、』 「?!、我が名、藤士郎の名の元…我・前・者・傷・癒!!」 じくじくする痛みは少しの間だけだった。すぐさま藤士郎が治癒術を使ってくれ、どんどん痛みが引いていった。 『さんきゅー!とーじろー!』 痛みが引いたら動ける。俺は藤士郎の護術を待たずに、刀を構えた。 『はる〜?止まりそうか〜?』 [むりっ…!!変にっ…魔力が出てくるッ!!!] 『おー…これはどーすっか…とーじろー!』 「…晴くんの魔力が尽きるのを待つか、こっちで強制的に落とすかどっちか…、けど、尽きるのを待ったらこっちまで尽きちゃうよ!」 その言葉を聞きながら、自分に飛んでくる術を避けたりして、考える。 『そーか…ん〜…むじぃなぁ…』 このままではジリ貧だ。やはり、こっちで落とすしかないか、 『はる!ちょいとゴメンな!』 と、少し謝ると、ヒュン、なんて音がしそうな程素早い動きで晴の背後に回る。 [っ…?!…ぅ] 手刀を晴の首に少し強めに打ち付けると、晴は気を失って、此方に倒れてきた。 『ぅお、っと、セーフ!』 とっさの所で受け止めたのは良いものの、一回りも二回りも小さくなってしまった自身では180㎝の体は支えきれなくて、倒れそうになる。すると、藤士郎が近寄って来て、晴を回収してくれた。 『あ゛〜、疲れたぁ…、とーじろー、俺も連れてって〜…』 「景くんは大丈夫そうだし、自力でおいで〜」 『ゔぇ〜…ねーぇ゛、おれ疲れたぁー、とーじろー、』 「も〜…とりあえず晴くん置いてくるから待ってな?」 『あ゛〜い…、』 そう言うと藤士郎は晴を抱えて屋敷に入っていった。俺はその間、庭の草っ原にゴロン、と寝転がる。 しばらく、といっても数十秒くらいだろうか、夜中に起きて、それに戦闘もしたこの小さい体はもう限界のようで、どんどん意識が落ちていく。 微睡んだ意識の中で見た月は、光を宿していなかった。 ーーーーーーーーーーーー 晴くんを布団へ寝かせて、今度は手の掛かる最年長を迎えに行こうと、もう一度、腰を上げる。そこら辺に放置してあったゴム手袋を着けて、庭へ向かって歩き出す。 庭はとても静かで、人っ子一人も居ないような、そんな雰囲気があった。 「景くん…?」 少し心配になって、小声ではあるが、同期の名前を呼ぶ。 「…景くん…?返事してよ…、」 不安になって、呼びかけてみる。でも、声は届いてないらしく、何も返ってこない。 「ぇ…景くん、返事しt『すぴょー』…は?」 『すぴょー…すぴょぴょ…』 「けい…くん?…は〜…変な心配して損した…まじで景くんさぁ…」 草っ原ですぴょすぴょ寝ている長尾の側にしゃがんで、手袋をつけたままの手で、彼のサラサラの髪の毛を撫でる。 「久しぶりに素手で触りたいな…」 しかし、素手で触ってしまったら彼の綺麗な紙がボロボロになってしまう、と考えてしまって、思わず手袋から出しかけていた手を引っ込める。 「…はぁ、ほんと不便。ちっさくなった景くん抱っこしておちょくりたいのに…今度、上の方に言ってみようかな。」 そういえば、景くんが起きていない。祓魔業から離れた今でも景くんは気配を探るのが得意だ。寝ているところに近付いたら基本起きるのに。そこで気付かなくても喋っていたら飛び起きるのに。 それ程疲れた、という事だろう。 「…おつかれさま、景くん、」 僕は、景くんに護術をかけてから、抱き抱えて立ち上がった。 晴くんは自己治癒能力が高いから、護術をかけなくても大丈夫だけど、景くんは前凄い事になってたから、もうあんなん見るの嫌だよ僕。 「首、傷痕残ってる。景くんが起きる前に治るかな。」 景くんを起こさないように、ぽそぽそ呟きながら歩く。 「…よっ、と…、」 部屋に着いたら晴くんの横に景くんを寝かす。 おろした瞬間、景くんが『ん゛ぅう…』と唸りながらもぞもぞと動くもんだから、起こしてしまったかと心配になって、手でポンポン、と布団越しにお腹あたりを優しく叩く。 そして空いた手で電気のリモコンを探す。 「…あった。えっと、豆電球…ここか。」 ピッ、と静かな部屋に小さく機械音が響く。それと同時に明るかった部屋が、ほんのり薄明るい、夕方みたいな色に包まれる。 先程身動きしていた景くんも、ぐっすり眠っている。これなら離れても大丈夫だろう。 「ふふ、景くん、晴くんおやすみ。」 僕はそう言って、二人の元を離れ、自室へ戻った。 次の日、朝起きたら隣に腕の骨剥き出しで僕に引っ付いて眠る景くんとそれに引っ付いている晴くんがいて僕がめっちゃ驚いたのはまた別の話_________