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コメント
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「絶対来ます」
その約束通り、例のバイク屋の近くまで来たのはいいものの
足がまったく進まない。
お兄さんの他に店内に居るのは、
恐らく一般のお客さんなどではなく
紛れもない"不良"だったからだ。
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ワカが顎で指した先に居たのは、 確かにこの前の子だった。
学校の制服を着た、 この前と同じ髪型とメガネの女の子
目が合って、軽く手を振ると、
ぺこりと浅く会釈して返してきた。
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「また来ます」 この言葉通りだ。
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店の中には、黒龍時代の後輩がいる。
全員良い奴だけど、傍から見たらただの不良で近寄り難い奴。
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どうやら私に気づいたらしいお兄さんは、軍手を脱ぎ捨てて
ひらひらと手を振りながら こちらに近づいてきた。
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その間、お店の中の不良たちはぞろぞろと出てきてどこかへ行ってしまった。
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バレてた。
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お兄さんは、 頭をかいてバツが悪そうに笑った。
店内には、ピカピカに磨かれたバイクが1列に並べられていて、
ほのかに煙草の香りがした。
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「せっかくザリ直したんだけどなー」
独り言を呟きながら、床に脱ぎ捨てたままの軍手を両手にはめ直した。
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ジャッキの横に並べられたバイクを指さしそう言った。
お兄さんはジャッキの上に乗せられたバイクに向かい、
工具を手に持ち、床に座り込んでメンテナンスを始めた。
カチカチと時計の秒針は進み続けている。
店内に残るタバコの香りと金属音が妙に落ち着いて、
時間の経過なんてすっかり忘れていた。
そんな私とは反対に、 チラチラと私に視線を向け
落ち着かない様子のお兄さん。
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動きを止め工具を置いて、身体ごとこちらに向けたお兄さん。
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多分それは、 明日からも吸うやつ。
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ツナギのポケットから煙草とライターを取り出し、
手馴れた手つきでカチと火をつけ 口にそれをくわえた。
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眉をひそめて控えめに笑いながら、 バイクへと向き直る。
お兄さんから少し離れた場所にあるバイクを見ていた私からでも、
お兄さんの表情は明るく、 心底楽しそうにみえた。