どさっ
地面に落ちた小さな音は、彼の心に重くのしかかった
ゆっくり広がる黒い血、生臭い鉄の臭いが喉を焼く
心臓の鼓動が一拍遅れる
目眩と吐き気が同時に襲う
視界は、大粒の涙で歪んだ
優羽
なんで、ハ、ハァッ、なん、で……
優羽
みんなッグスッ
暗転しかけた視界が、虹色のノイズのようにうねりだす
優羽
みんなが死ぬところなんて、これ以上見たくない……ッ!
優羽
やだ、嫌だッ…!
優羽
もう、戻りたくない……ッ!
絶望?わかんないな〜!……でも、君の泣き顔はいやだな
笑うように軽やかな声
君は生きろ。……ただ、それだけ
低く短い声。命令のようでいて、優しさが滲んだ声
あー……やっぱいいなぁ、この名前
あの時、嬉しそうに笑った顔が浮かぶ。宝物に触れるような、懐かしむような声
そんな幻聴が聞こえ始めた頃には、涙混じりの呼吸を最期に
意識は、深い闇の中に沈んだ
プロローグ.終







