紗羅
ごめんエマ、私今は散歩の気分じゃな―
万次郎
おれだ。
紗羅
!
万次郎
お前の好きな、スイーツとか、いろいろ買ってきた。
万次郎
少し、話さないか?
紗羅
………
万次郎
場地のこと、すまなかった。
紗羅
!
紗羅
おにいは何も悪くないよ!!
万次郎
………。ありがとう。
万次郎
でも俺が、結局一虎を許せてなかった。
万次郎
場地に諭されて、許そうとは思ったんだ。
万次郎
それでもやっぱり駄目だった。
万次郎
そういうとこから関係性がズレてっちまったんだろうな。
挙句の果てにみんなを巻き込んで。
紗羅
………
万次郎
シンイチローのことも紗羅に隠してきた。
そのせいで動揺させた。
紗羅
おにい―
万次郎
俺のせいだ。
万次郎
一虎まで、ヤッちまうところだった、。
万次郎
ごめん
紗羅
はいこれ。
万次郎
?
紗羅
たいやき!
紗羅
おにいは悪くない!スマイルだよスマイル
万次郎
……優しいな、紗羅は。
万次郎
でも、無理すんな
紗羅
無理なんてそんな―
万次郎
最近、学校行ってないんだろ?
紗羅
何で知って…!
万次郎
俺も場地のことで整理がついて無くてな。学校休んだり早退したりしてんだ。まあ普段からそんなに行ってないけど。それで家にお前がずっといて。
紗羅
………
紗羅
うん。行ってない。
紗羅
あの日からずっと。
万次郎
紗羅……
万次郎
当たり前だ。泣いたっていい、強がりすぎなんだよ、。
紗羅
……………
紗羅
後悔してるの。
紗羅
考えたらさ、ケースケが何かしようとしてる予兆はあったんだよね。
万次郎
……………
紗羅
なんでもっと聞かなかったんだろう、、
紗羅
なんで、ケースケがいるのが当たり前だと思ってたんだろう、
涙があふれてきた。机の上に並べられたスイーツや缶ジュースが、歪んで見える。
万次郎
誰だってそうだ、。紗羅だけじゃない。お前は何も―悪くない。
紗羅
……………
紗羅
私、何も言えなかった。
紗羅
好きだって、、、言ってくれたのに
紗羅
ケースケの気持ちに気づいてもいなかった。
紗羅
こんな―こんな最低な女なのに、
紗羅
笑った顔が好きだって、幸せになれって、
万次郎
……………
紗羅
言ってくれてっ―
自分でも何が言いたいのかわからない。ただ、ぐちゃぐちゃだった。
紗羅
「私も」って言いたかった―
紗羅
でもっ、
紗羅
言えなかった、―嘘はつけなかった、
紗羅
本当のことにしたかった―。
万次郎
紗羅……。
紗羅
嘘だとしても言ってあげたらよかったのかな、?
紗羅
ただの自己満かもしれないけどっ、
紗羅
もしかしたら、幸せにしてあげられたのかな
万次郎
それは―
万次郎
…………
紗羅
ケースケさ……、私の腕の中で死んだんだ
万次郎
!
紗羅
大好きだよ。幸せになれよって。そればっか、。
万次郎
……………
紗羅
だったらっ!
紗羅
いなくならないでよ―、
紗羅
ケースケがっ!
紗羅
しあわせにしてよ、、
止まらなかった。
涙も、気持ちも。
「好きな人」ってなんだろう。タカ君とケースケ、、、もう何が何だかわからない。
万次郎
紗羅―
紗羅
!
万次郎
俺が言っていいことじゃないかもしれないけど、、
万次郎
確かに場地の気持ちは通じ合わなかったかもしれない。
万次郎
だけど、ずっと好きな女のそばにいられて、好きな女の腕の中で死ねたんだ。その上自分のことを思って泣いてくれてる―。最高だと思う。
紗羅
おにい―
万次郎
俺もお前の笑った顔が好きだ。だから笑ってくれ。
空にいるシンイチローにまで、俺怒られちゃうよ。
紗羅
うっ、うっ―。う
マイキーが抱きしめてくれたのなんて何歳のとき以来だろうか。
しばらく私は、兄にしがみつきながら泣き続けた。