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灰色で飛べない鳥たち。

わたしもいつか、 綺麗に空を飛んでみたい…

今日は待ちに待った映画祭。 私はそこを取り仕切る役を 任されている。

失敗は絶対に許されない。

梅澤

あ、それもうちょっと右で。はい。そこで。

あの、ちょっといいですか?

私がフロアのテーブルの位置を 指示していたら、ふいに後ろから 声をかけられた。

梅澤

ん?誰…?あ、さくらか。なに?またやらかした?

遠藤

はい…。やらかしました…

梅澤

うそでしょ…

私の後輩の遠藤さくらは仕事に 熱心なのはいいのだが、 結構何でもかんでも やらかしてしまうのだ。

梅澤

はぁ…今度はなに?

遠藤

実は…ガラスの靴のトロフィー、家に忘れて来ちゃったみたいで…

梅澤

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?

ガラスの靴のトロフィーは 毎年、新人女優賞を受賞した 女優に渡すものだ。 まさかそれを家に忘れるだなんて…

はぁ…って、なんかすごい 視線を感じるんだけど… 少し冷静になって 周りを見渡してみると、 フロアの人間の視線が 一気に私の方に向いていた。 少し大声を出し過ぎたみたいだ。

梅澤

ぁ…すいません…で、どういうこと?トロフィー忘れたって。

遠藤

実はリュックに入れたつもりが玄関に置き忘れたみたいで…

梅澤

もう…どうすんの?あと1時間で映画祭始まるよ?

頭をフル回転させ、 最善策を考えていたところ、 一つの考えにたどり着いた。

梅澤

あ!そうだ。遥香は?一緒に住んでるんだよね?

遠藤

は、はい…

梅澤

じゃあ、すぐに電話して取って来てもらって!

遠藤

はい!

さてと…トロフィーは 遥香に任せたとして…。 私は… あ… 与田さんとこ行かなきゃ… 絶対怒るだろうな…

コンコン

梅澤

失礼します。

与田

あ、梅澤さんどうしたんですか?

梅澤

実は、うちのスタッフがトロフィーを家に忘れたみたいで…。すぐに届けてもらうよう言ったのですが、間に合うかどうか…そのため、もしかすると、トロフィーの授与は見送られる可能性があるということをお伝えしたくて…この度は、本当に申し訳ありませんでした。

与田

わかりました。とりあえず、顔を上げてください。残りあと1時間を切っています。トロフィーの授与が遅れるのは構いませんが、なるべく早く届けてもらうようそのスタッフには伝えてください。

梅澤

わかりました。では、失礼しました。

バタン

梅澤

あと1時間切ってる…早くしないと…

梅澤

さくら!さくら…?

フロアに戻るとなぜか さくらの姿が消えていた。

梅澤

あの、新内さん、さくら見ませんでしたか?

新内

え?あ、そういえばさっきそっから出てってた気がします。

梅澤

わかりました。ありがとうございます。

トロフィー忘れるわ、 フロアから姿を消すわ、 ホント、何やってんのさくら…

遠藤

はぁ…

フロアで仕事を手伝っていても、足を引っ張ってばかりで、 いる意味がないと思って逃げ出してしまった。

かっきーから返信が来たようだ。

はるか

お先に仕事あがるね!頑張って!💪

さくら

トロフィーのガラスの靴…忘れちゃった。。💦

はるか

今、届ける!

はるか

遠藤

はぁ…よかっt…

よかったね

突然、後ろから声をかけられた。

遠藤

うわ!びっくりした…なんだ、あやめか…

筒井

なんだって何よ。とにかく、はやく準備手伝うよ。

遠藤

でも…私なんて足手まといだし…

筒井

それでもいいから、やるの。自分はダメだと思っても、
きっと誰かが味方してくれる。私だって味方だし。

遠藤

…ありがと。

筒井

じゃあ、行こっか。

梅澤

ったくもう…どこ行ったのよ…

遠藤

すいません!戻りました!

梅澤

もう…。で、返事は?来た?

遠藤

あ、はい。今届けるって。

梅澤

わかった。じゃあ、後は待つだけだ。なるべく早く届けるようには言った?

遠藤

はい。

梅澤

よし。もう、かっきーを信じるしかないね。

賀喜の返事はもらえた。あとは間に合うことを祈るのみ。 けど、万が一のために司会には伝えておかないと。

梅澤

あの、新内さん、実は、今ある事情でトロフィーがないんです。
今大至急で届けてもらってるんですけど、
もしかすると間に合わない可能性があるのでその時には
授与を遅らせるといった旨をアナウンスしてもらってよろしいでしょうか。

新内

わかりました。

梅澤

ホント、急ですみません。

新内

いえ。

さてと。これで準備は整った。あと残り30分。 賀喜の姿は一向に見当たらない。 賀喜…間に合って…

賀喜

お先に仕事上がるね!頑張って!💪

遠藤

トロフィーのガラスの靴…忘れちゃった。。💦

賀喜

今、届ける!

賀喜

さくらからのラインを受け取り、すぐさま家に向かった。 すると玄関先になんとも美しいガラスの靴が置いてあった。

賀喜

たぶんこれだよね。

すぐにバッグにつっこみ、玄関を出て、駅まで走り出した。

が、駅に着いたはいいものの、なんと道路のど真ん中で 歌を歌っている人がいたのだ。 その人に群がる人たちのせいで道が塞がれてしまっていた。

飛んでみたい?

賀喜

うそ…

それなら

もう諦めるしかないのか…… いや!だめだ。 さくらのためにもここで諦めるわけにはいかない。

走ることだよ

賀喜

電車に乗れないなら、もう走ればいい!

私は映画祭の場所へと全速力で走り出した。

賀喜

はぁはぁ…ついた…。

駅から全速力で走ってきた私の体力はもう限界に近かった。

賀喜

うそ…もう始まってる…

会場のビルに入ると沢山の記者たちがいた。 もう映画祭は始まってしまったようだ。 Twitterで“♯映画祭”で調べてみると、

名無し

コーラス隊めっちゃ歌うまいww

名無し

コーラスの後ろのピアノの子かわいい♡

など、まだトロフィー授与は行われていないようだった。

賀喜

まずはさくらを探さないと…たぶん、あそこにいるはず。

さくらはいつも落ち込むと人が少ない場所に行く。 このビルは2階に時計台がある。 きっと人があまりこないためそこにしょんぼりと座っていることだろう。

賀喜

さくら!

遠藤

え?かっきー!

ガシッ

私はさくらの腕をつかみ、走り出した。

賀喜

行くよ!

遠藤

あ…うん!

私はさくらを連れて映画祭会場の1階大広間へと向かった。

新内

さぁ、みなさま長らくおまたせいたしました。
では、お呼びしましょう、
新人女優賞受賞、齋藤飛鳥さんです!!

あぁ。やばい。まだ賀喜が来ていないのにとうとう授与が始まってしまった。早く…早く… 私は一人ずっとそわそわしながら新人女優賞受賞の女優を見つめていた。

新内

…なるほど。齋藤さん、ありがとうございました。
と、本来ならここでトロフィーの授与が入るのですが、
こちらの諸事情で授与は見送らせて…

新内が万が一の時に使うあのセリフを使ったそのとき

バタンッ

突然大広間のドアが勢いよく開いた。 これって、まさか…!

梅澤

遥香!さくら!

遥香はガラスの靴を右手に掲げていた。

賀喜

ふぅ…さくら、行くよ!

バタンッ

私は勢いよく大広間のドアを開けた。 すると大勢の人の視線がこちらに向けられた。 そして舞台の上には齋藤飛鳥の姿が。どうやらギリギリ間に合ったようだ。 私はガラスの靴を右手に大きく掲げた。

新内

授与は見送らせて……!?…というのは間違いでした!何というサプライズ!
では、彼女にトロフィーを授与してもらいましょう!

賀喜

え?あ、わ、私!?

新内

ええ。では、齋藤さんの前へ。

私は恐る恐る新人女優賞受賞の女優の前へと向かった。

賀喜

齋藤さん、こちらを…

齋藤

ありがとう。

そう言うと齋藤さんが私の腕に触れた。

齋藤

あなた、名前は?

賀喜

え?か、賀喜遥香です。

賀喜

ってうわ!

急に齋藤さんが私の腕を引っ張り、舞台上へと上げてくれた。

賀喜

齋藤さん、急に何を…

齋藤

賀喜さん、あなたこそ、シンデレラよ。

賀喜

え…

齋藤さんが私の手を取り、まるでレスリングの勝者かのように上に掲げた。 その瞬間、

ワァァァァァ

パチパチパチ

周りの記者さんのカメラや照明さんがこちらを向きながら ニコリとほほ笑んでいることに気が付いた。

あぁ。なんて美しい景色なんだろう…。 間に合って本当に、よかった。

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