たばこ
『好きな人の好きな物は』
『私の嫌いなものでした』
昨日の夜から君がいなくなって24時間がたった
僕は君の残り香が漂った雑多な部屋で
1歩も外に出れずただ一人でうずくまっていた
ふと顔を上げ時計を見ると
僕
を指そうとしていた
スマホの電源を入れると
僕
と表示されている
僕
僕
僕
でも君がいなくなった今
それはもう意味を失ってしまった
カーテンが揺れるのと同時に
風がさーっと吹く
僕
急にまた寂しさが込み上げてきた
ベランダで吸ってたよね、
君は。
たばこが嫌いな僕を気遣って....
でももうそこに君はいないんだな、
多分、
そんな君が
僕のことを一番よく知ってる。
僕
僕
僕
僕
その時ふと思った
僕は君の事をどれだけ分かっていたんだろうか...
1番先に浮かんできたのは
他でもなく君の好きなタバコの名前だった
僕
僕
僕
僕
その言葉が君には重かったのかな
その言葉を言わなければ君は此処にいたのかな
僕
僕
僕
今更気づいても遅いよね
僕
僕
僕
僕
机の上には君が置いていったであろうタバコがある
今頃君はこれと同じタバコを買って吸っているんだろうか
それとも
趣味が変わって違うタバコを吸っているんだろうか
それでも
君が吸っていた匂いを確かめたくて
味を確かめたくて
僕はどうしてか
大嫌いなタバコに火をつけてしまった
1口吸ってしまった匂いの中から
君の匂いがして
君の匂いがした
僕
でもやっぱりむせる
ちょっとぐらい余韻にひたらせてくれよ
僕
僕
僕
言わなければ
君はまだ此処にいたのかな
僕
僕
僕
僕
少し苦い君の匂いに泣けた
泣きながら僕はタバコの匂いがする雑多な部屋で
一人うずくまった
『好きな人の好きな物は』
『私の嫌いなものでした』
たばこ
END
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