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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

久留間父

悟、おいで

久留間父

この子はね、渋谷大くん

久留間父

今日からお友だちだ

神職である父、そして祖父が神職姿のまま帰宅し

俺を玄関に呼んだときに立っていたのは

少し気まずげにモジモジと目を泳がせている

気弱そうな男の子だった

???

ほら、大ちゃんご挨拶

???

こんにちはーって

??

申し訳ない

??

人見知りでして……

久留間祖父

いえ、お気になさらず

久留間祖父

今まで色々と言われていたんです

久留間祖父

警戒するのも当然でしょう

久留間父

大ちゃん、あのね

久留間父

うちの子もお化け見えるんだよ

にこやかな父達の言葉に、その子は明らかに

不機嫌な顔になって唇を噛んでいた

幼少大

……うそだよ

久留間父

ホントだよ

幼少悟

とーさん?

幼少悟

それいっちゃっていいの?

久留間父

この子にはね

久留間父

大ちゃんも見えるんだ

久留間父

しかも、驚くなよ

久留間父

この子もお前と同じでね

久留間父

霊に触れるんだよ

幼少悟

さわれるの!?

幼少大

っ!?

幼少大

え、あのっ

幼少悟

じゃあじゃあ、あそこ!

幼少悟

あそこにいるネコ、わかる!?

幼少大

幼少大

……ちゃいろいトラネコ?

幼少悟

みえてるぅ!!

幼少悟

な、こっち!こっちきて!!

幼少大

え、わっ!?

幼少大

な、なにすんの!?

幼少悟

このこさぁ、だっこさせてくれるよー

幼少大

はわっ、ふぇ

幼少大

……ホントに、みえてる

幼少大

ホントにさわってるぅ……

幼少大

ふぇえ……

幼少悟

なんだよ、なくなよぉー

幼少悟

みえてるこ、ぼくもはじめてあった!

幼少悟

さとるくんです!

幼少悟

な、あそぼー!

幼少大

……さとるくん

幼少大

しぶやだいです

幼少大

よろしくおねがいします

出会いはこんな感じだった

それ以降、別の保育園に預けられていた大ちゃんは

俺と同じ幼稚園に転園してきて

それこそ毎日、一日中

大ちゃんと手を繋ぎっぱなしの日常が始まった

幼少悟

だからさぁ

幼少悟

ほかの人はおばけみえないからさ

幼少悟

みえてもナイショなんだよ

幼少大

だってビックリするんだよ……

幼少悟

あ、でもわかる!

幼少悟

スッゴいかおしてるひといるよなー!

幼少悟

むししなきゃだよ

幼少悟

みてるのバレると、ついてこられちゃうしさ

幼少悟

だいちゃん、こわいのヤダだろ?

幼少大

ん、ヤだし……

幼少大

ねーちゃん、あぶなくなるのも

幼少大

……ヤだなぁ

幼少悟

やさしいもんなー!

幼少悟

だいちゃんのねーちゃん!

幼少悟

だいちゃん、こまったことあったらさぁ

幼少悟

おれにぜーんぶきいたらいいよー

幼少悟

いっつもいっしょにいてあげるしさー

幼少悟

そしたらさいきょーだしさー!

幼少大

っ、うん!

幼少大

あのさ、おれねぇ

幼少大

さとるくんいたら、がんばれるんだぁ!

……まぁ、こんな可愛いことを言ってくれてたのは

正直、小学2年までだ

小学校に入ってからはサッカーに体操にドッヂボールにと

まぁアウトドアな遊びに目覚めまくり

そもそもインドア、かつ修行とかもあった俺とは

一緒にいる時間がだんだん少なくなっていった

……だからまぁ、すねちゃったわけだ

俺が

今まであんなにくっついてきてたのに

ほかの友だちがたくさんできて

いろんな奴に囲まれてる大ちゃんを見て

まぁ、その

勝手にすねちゃったわけだ、俺が

幼少大

悟くんー!

幼少大

なんで先にかえるんだよ!

幼少大

ちょっとまっててくれてもいーだろ!

幼少悟

……修行あるし

幼少悟

つーか大ちゃんさ

幼少悟

もうオレいなくてもいーんじゃね?

幼少大

……へ?

幼少悟

サッカーとかドッヂとかつよいし

幼少悟

めっちゃ友だちいるじゃん

幼少悟

オレ、いるイミないよね

幼少悟

こまったこととかあったらさ

幼少悟

また話しにきたらいいじゃん

幼少悟

それまではなれよ

幼少悟

だからバイバ

幼少大

なんでそんなこと言うんだよ!

幼少大

なにカッテに友だちやめよーとしてんの!?

幼少大

ぜったいヤだかんな!?

幼少悟

……かってにって

幼少悟

お前がオレとあそばなくなったんじゃん!

幼少悟

サッカーとかさぁ!

幼少悟

オレ足おそいからできないのに!

幼少大

サッカーできなきゃ友だちじゃねーの!?

幼少大

そんなんカンケーないだろ!

幼少大

そんなのもわかんないの!?

幼少悟

大ちゃんにはわかんないんだよ!

幼少大

――っっっ!!

幼少大

悟のわからず屋ー!!

……思えば

大ちゃんが俺を呼び捨てにしたのは

このときが初めてだった

その事がまたひねくれたガキだった俺の気にさわって

あっという間に殴り合いのケンカになってしまった

二人そろってクタクタのボロボロになって

泣きながら帰るその中で

大ちゃんがやっぱり、俺の手を握りながら言ったんだ

幼少大

悟くんのウソつき……!

幼少大

いっつもいっしょって、言ったのに……!

幼少大

オレ悟くんいなきゃヤだもん……

幼少大

一ばんなかよしなの、悟くんだもん……!

あんまりわんわん泣きながら怒るから

俺は仕方なく、その場でゴメンナサイしたんだ

だけどこのとき、はっきり気づいてしまったわけだ

大ちゃんに選んでもらえたことが嬉しい、それ以上に

俺がいいんだと泣き叫ぶこいつの声が

ゾクゾクするくらい独占欲を刺激することを

それからまぁほどなく

俺は大ちゃんへの恋心を自覚した

小学校に上がってすぐに大ちゃんの姉さんが死んで

それを隣で慰め続けたのも大きかったのかもしれない

ちなみに、この感情についてあんまり悩んだりはしなかった

誰かにバレたら面倒くさそうだとは思ってたけど

霊が見えない人間を好きになれると思えなかったし

ただ見えるだけの相手にも興味は持てなかった

俺と同じように、霊に触れられるほど強い能力者

ただそれだけが、俺が興味を引かれる条件なのに

そんな人間は俺のまわりに、大ちゃんしかいなかった

つまりは俺の恋愛センサーに引っかかるのは

最初っから、一人しかいなかったわけだ

――なもんだから、思春期にはえらいことになった

少年悟

大ちゃん、ちゅー!

少年大

やだやだ!

少年大

もうやだよ、バカ!

少年大

テンション上がりすぎだってマジで!

少年大

ふざけすぎなんだよバカ!

少年大

お前らも笑ってないで止めろって!

少年大

ん゛ん゛ーーー!!

よりによって修学旅行の男子部屋で

テンションが上がりすぎたフリをして襲いかかり

その場で何度もキスをしまくったわけです

今ならノリでいける!と思った……んだろうけど

好きな子に堂々とキスできる背徳感というか

まぁそんな感じのものにハマッてしまったわけで

真っ赤になって涙目で怒る大ちゃんに

よりいっそう興奮してしまっていた俺は

あの日から性癖が歪んでしまったのかもしれない

そういえば中学で初めて読んだエロ本は野外プレイモノだったし

今ではわざと人目につきそうな場所で

やらしーことをするのが楽しくって仕方ない

……まぁ、それはさておき 数年後に聞いたところ

女の子より運動しているほうが好きという

典型的なガキんちょだった大ちゃんは

この事件で初めて俺を意識してくれたらしく

なんでもやっとくもんだなと思いました

……

反省はしていない

それから、たった2年後のことだ

中学に上がってから、急に俺がモテはじめた

まぁ顔がいいとか頭がいいとか、その程度の理由だ

正直、全然嬉しくなかったし面倒くさかった

だけど、ある日気付いちゃったのだ

俺が女の子からの告白で呼び出されるたび

物言いたげに、作り笑いで送り出す大ちゃんに

 

――あ コレはもう俺のにしていいんだ

そう直感してからは、早かった

そうです、俺は卑怯なので

相手が落ちると確信してから、動くんです

少年悟

大ちゃんー

少年大

んー?

少年悟

俺さぁ、告白されるの疲れちゃった

少年大

なにそれ

少年大

イヤミにもほどがあるだろ

少年悟

や、だからさぁ

少年悟

次に告白してきた子と

少年悟

付き合おうかなぁって話

少年大

……え

少年大

え、マジで?

少年悟

うん

少年悟

ちなみに今日の放課後

少年悟

もう告白予約は入ってますけどね

少年大

……その子のこと、さぁ

少年大

好きなの?

少年悟

んーん

少年悟

こないだ初めて名前知った子

少年大

そんなの

少年悟

でも付き合う内にさぁ

少年悟

好きになるって事もあるらしいし

少年悟

そういうのもいい経験かなーって

少年大

……誰でもいいの?お前

少年悟

誰でもいいわけじゃないよ

少年悟

好きな子はいるんだけどさ

少年悟

望み薄かもしんないからね

少年悟

今日その子に告白されなかったら

少年悟

予約してる子と付き合うよ

今考えると、我ながらひどい

俺は男同士ってことに一切抵抗はなかったけど

大ちゃんはきっと、そうじゃなかったはずだ

なのに俺は、自分を人質に取る形で脅しをかけた

最後のチャンスだぞ、どうするんだ?って

幼馴染みに告白して、嫌われるかもしれない

だけどそうしなきゃ、確実に誰かに盗られる

そんな感情を天秤にかけさせた

ひどい脅迫だし、ひどい話だ

その時の大ちゃんの顔は今も覚えてる

完全に絶望した、真っ青な顔

ごめんなって思いながら、こっそり

本当にこっそりとだけど

俺だけに見せてくれるその顔に、俺は少し酔っていた

少年悟

――そんじゃ、行ってくるねー

その日の放課後、教室に二人だけ

黙りこくったままの大ちゃんに死刑宣告をするつもりで

俺はゆっくり立ち上がった

それでも大ちゃんは動かない

俺も、足を止めない

勝算はあった。だからこそ意地でも止まらなかった

机の間を縫って歩いて

教室のドアに手をかけて

一気に開く

いや、一気に開こうとしたのに

大ちゃんの手が

扉が開くのを、防いでいた

少年悟

大ちゃん?

追い詰められきった、かわいそうな顔だった

少年大

あの、あのさぁ

少年大

俺、すっげーいっぱい考えて

少年大

すっげー、いっぱい悩んだんだよ

少年悟

……うん

少年大

なんだけど、どうしてもさぁ

少年大

……嫌、でさぁ

少年悟

うん

少年大

……悟くん、俺さぁ

少年大

俺以外が、お前の一番

少年大

なったりするのさぁ

少年大

――ヤだよ

言ってしまった後悔なのか

それとも、やっと言えた安心感だったのか

大ちゃんはそれきり、めいっぱい泣きじゃくって

髪も顔もグチャグチャにしたまま

ただ、逃げ出したそうに肩を震わせていた

少年悟

大ちゃんあのさぁ

ビクッと肩が震えた

オレの声が、まさに死刑宣告に思えたのかもしれない

だけどそれを俺は引き寄せてやって

デコとデコをくっつけて

好きをいっぱいいっぱいこめて、口に出した

少年悟

俺もね、そう思ってるよ

――この時の大ちゃんの顔のことは、ナイショにしておく

ただ最高にかわいそうで、最高にかわいくて

そんで最高に、キレイではあった

久留間悟

――まぁ、まさかね

久留間悟

こんなガッツリ筋肉ついたゴリラになっても

久留間悟

好みのドストライク決められるとはね

久留間悟

さすがに予想してませんでしたけども

渋谷大

あー?なにー?

久留間悟

個人的な備忘録書いてるだけー

久留間悟

気にしないでくださーい

渋谷大

だったらテレビ通話切ってくださーい

久留間悟

嫌でーす

久留間悟

大ちゃんはサクサクお仕事してくださーい

久留間悟

俺は見張り役でーす

渋谷大

んぬぅうううう……!!

渋谷大

悟性格悪いぞー!

久留間悟

知ってまーす

久留間悟

今実感してたところでーす

渋谷大

なんだそれ

久留間悟

いいから気にしないの

久留間悟

大ちゃんのマジ顔見ててやるから

渋谷大

アホか、見んな

久留間悟

口悪いなぁお前

久留間悟

……まぁでも、俺もアレだなぁ

久留間悟

俺と同等の霊能力持ってないと

久留間悟

そもそも他人に関心を持てないって時点で

久留間悟

……ヒトとしてどうかって話だよねぇ

この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

小さい頃の渋谷さん髪短い! 悟さんもメガネかけてなかったりするんでしょうか☺️ 個人的に学生の頃の二人の危ない距離感が好きです…!! 悟さんめちゃくちゃSっ気あるじゃないですか! そして渋谷さんはもう可愛すぎて女の子じゃないですか!

ユーザー

小さい頃から2人はそのままの性格なんですね! うん、小さい頃はめっちゃ可愛くて、大人になるにつれかっこよさも出てくると... 控えめに言ってこのCP最高だと...!

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