次の日の朝、音楽室の扉の前でうちは立ち止まってもうた。
昨日、あんなふうに先輩に言い返してもうた。
顔、よう見られへん。
堀居瑞恵
でも、ドアの向こうから聞こえるトランペットの音が、うちを呼んどるみたいやった。
思い切って扉を開けたら──
土佐岡春
中におったのは、親友の土佐岡春。
柔らかい笑顔で手を振ってきた。
土佐岡春
堀居瑞恵
堀居瑞恵
土佐岡春
土佐岡春
春は、譜面台に置いたトランペットを片づけながら言った。
土佐岡春
土佐岡春
堀居瑞恵
心のどっかでホッとして、でも寂しさも混じる。
春がうちの顔を見て、少し声を落とした。
土佐岡春
土佐岡春
土佐岡春
堀居瑞恵
土佐岡春
堀居瑞恵
土佐岡春
土佐岡春
春の声は穏やかやけど、どこか自分にも言い聞かせてるみたいやった。
堀居瑞恵
土佐岡春
堀居瑞恵
土佐岡春
笑ってそう言うたけど、その目の奥に一瞬、何か沈んだ光が見えた。
堀居瑞恵
土佐岡春
春は笑ってごまかしたけど、
その笑顔がほんの少しだけ、寂しそうやった。
放課後、二人で屋上に出て、夕陽の中でトランペットを吹いた。
瑞恵の音はまだ少し不安定で、でも、風に乗って遠くまで響いた。
堀居瑞恵
堀居瑞恵
堀居瑞恵
土佐岡春
土佐岡春
春はそう言って、そっと笑った。
──その笑顔の奥にある“秘密”に、瑞恵はまだ気づいてへんかった。