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みちょ
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俏亜
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#こさめ
ことみ
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読了しました。今回、らんの奥底にあった「自分が幸せを願うと周りが不幸になる」という思い込みが痛いほど伝わってきて、胸が締め付けられました。割れたお皿と、求めていた“付き添い”の差に、長年の孤独と寂しさが凝縮されていたのが切ないです。最後のなつの「俺の大切な弟だ」という言葉に、ようやく家族の輪が少しずつ動き出した予感がして、続きが本当に気になります。感情の揺れが丁寧で、引き込まれました。
俏亜
璃亜
俏亜
璃亜
俏亜
璃亜
俏亜
璃亜
自分からしたら素と人形は区別して使っている訳ではない。
時々、今は素みたいだなぁ…、とか感じることはあっても特に気にせずに過ごしてきたのだ。
退院してからはほぼずっと人形の様だったらしく、学校に行く前にも学校から帰って来た後も なつ に散々……そう、散ッッッ々!!好き勝手にされた!!
話す事に人形の状態が減っていっているらしく なつ に好き勝手される事は無くなっていた。それに安堵する。
安堵してる。……はず、なのに……なんだかむしゃくしゃする…!!
土曜日で学校が休みの日、たまたま なつ も休みが被った。
すち の作った朝食を取り終えた らん は起きてこない なつ の部屋まで来ていた。
休日なんだし朝っぱらから起きてこなきゃならないなんてことは無い。気のすむまで寝かせてやれば良い。
なつ
少し助走を付けてベッドに眠る なつ の腹に飛び乗ればかなりの攻撃になってしまったらしい。
まぁ…肉も筋肉も付きにくいとは言っても身長だけは伸びた高校生の体な訳だしねぇ……。
なつ
らん
なつ
なつ
とか言うけど六奏病院の医師はかなり多く、一人週二で休みは普通は取れると聞いてるけれど…。
無理して仕事してんのそっちじゃん、俺悪くない、何て責任転嫁しておく。
らん
なつ
らん
らん
なつ
らん
らん
なつ
むしゃくしゃする。イライラする。
何でか分からないけれど、でも何でか苦しい。
なつ
なつ
なつ
らん
らん
なつ
らん
なつ
なつ
左手を振り下ろせば起き上がりかけていた なつ の額に見事クリーンヒット。
らん
らん
なつ
らん
なつ
らん
らん
実は双子で休暇を取ったらしく、いるま はきちんと朝、らん よりも早く起きて来た。
今自室に居るのか こさめ の部屋に居るのか知らないけれど、なつ の上から退いて扉を開けて叫ぶ。
いるま
らん
いるま
いるま
ちなみに防音部屋では無いので、らん が終始 なつ の部屋で叫んでいたのは兄弟の部屋全てに響いているとは思う。
では何故 らん が騒いでいる時に誰一人として なつ の部屋に来なかったのか……。
それは、らん の人形の状態が無くなって来てからと言うもの、二人の喧嘩がほぼ日常的になっていたからである。
バッタン、ドッタン、と音が響いて、なつ の部屋を除く三つの部屋が開かれた。
いるま
らん
らん
いるま
いるま
らん
いるま
らん
いるま が なつ の部屋の中に入っていき効果音で表すのならチーンと言う音が似合いそうな倒れ方をしている なつ の側へと行く。
こさめ
らん
こさめ
近づいて来た こさめ の寝ぐせが可愛くて思わず抱きしめる。
そう言えば朝食時に居なかったけど喧嘩の騒音で起こしちゃったのかなぁ……。
ちなみに みこと は携帯を構えてこちらに向けているので、多分盗撮してる。
こさめ
こさめ
らん
いじめられた訳じゃない。
ただ、らん が最近可笑しくて感情操作が上手く出来ていないだけ。
でも何かむしゃくしゃするので なつ のせいにしておいた。
いるま
らん
いるま
らん
悪くない、何も悪くない。感情操作が出来ないのだって なつ のせい。
こさめ
みこと
こさめ を放してバタバタと足音を立てて自室に戻る。
あぁ…やだ、むしゃくしゃする…イライラする…。
何か足りない、何かが分からない。
悲しくて苦しくて、餓鬼みたいに当たり散らして……最低だ……。
あれから なつ がどうなったのかは知らない。
いるま はその後 らん の部屋に来たけど丁度ベッドにもぐりこんでいたので寝た振り撃退した。
こさめ と みこと は多分、いるま にそっとしておいてやれとか言われて来なかったんだと思う。
話しは変わるがこの家で食事を作れるのは すち、なつ だけ。軽いものならば みこと も作れる。
因みにずっと隠していたが、すち や なつ の様な食事は作れなくとも、らん も食事が作れる。
…まぁ……こさめ ばっか甘やかしてた兄たちが五人で遊びに行くこともあったので必要に駆られて得られたスキルみたいなものだよねぇ……。
らん
どこも“家族”と行った事は無い。
らん
まだ幼稚園児の頃だったから乗れないものも多くてギャン泣きしたっけ…。
その中でもお化け屋敷は身長規定も無かったのでパパがヘトヘトになるまで何周も何周も……。
らん
いるま
らん
不意に聞こえて来た声に驚いてそちらを見れば、脱衣所に繋がる扉が開かれていて丁度今しがた入って来た様子の いるま と瞳が合う。
いるま
らん
いるま
らん
らん
いるま
詮索しないで、早く気付いて、来ないで、近くに居て、構わないで。
らん
いるま
らん
感情がぐちゃぐちゃだ。気持ちが悪い。
吐き出してスッキリしたいのに、吐き出すものが何か分からない。
足りないのに、足りない何かが分からない。
いるま
言葉に詰まる。息が詰まる。
“家族”って何?“愛情”って何?
馬鹿みたい、馬鹿じゃん。出来る訳ないのに。成れる訳ないのに。
我儘ばっか、困らせてばっか、傷付けてばっか。
昔の方が五人は幸せだったんじゃないかな…。
俺一人だけが不幸になれば、五人は不幸にならないんじゃないかな…。
らん
いるま
らん
いるま
らん
いるま
らん
いるま
いるま
息が詰まる。喉が詰まる。むしゃくしゃするのはそのせいだ。
イライラするのはそのせいだ。そうだ、絶対にそうだ。
ガシャン、と音を立てて座り込む。
あ……お皿…、大事な、お皿…割れちゃった……。
らん
いるま
らん
いるま
なつ
なつ
いるま
なつ
いるま
なつ
あ……良かった……生きてた……。
兄に当たるだけ当たって怪我させて……、本当、皆の弟としても、こさめ の兄としても、“失敗作”だなぁ……。
呼吸を乱し苦しそうな らん を抱きしめて背中を撫でる。
何で?最近は精神的ストレスも無くなったかの様に吸入器も全く使っていなかった。
“喧嘩”と言う発言出来る事が、らん にとっては良かったのだと思う。
だが らん に与えられた苦しみはそんな事では簡単に癒されてはくれなかったのだろう。
バタバタと足音が聞こえて来て なつ が吸入器を持って戻って来る。
場所を変わって少し抵抗した らん に薬を服用させて抱きしめて背中を撫でる。
苦しそうな息を吐く らん の視線の先には割れた皿。大切なもの……だったのだろうか……。
数分もすれば らん の呼吸も落ち着いた。
丁度キッチンにいたのでうがいさせ、体に力の入っていない らん が崩れ落ちて仕舞わない様に一度座らせる。
いるま
らん
なつ
らん
なつ
いるま
らん
皿の破片に手を伸ばす らん の腕を掴めば、そんな言葉。
そりゃ、大切なものに決まっている。
だって兄弟は一度も らん に誕生日プレゼントを渡したことは無いのだ、祝った事もないのだ。
約10年も前の、唯一誕生日を祝ってくれたであろう父からのプレゼント。
あぁ……問いかけなければ良かったのか?何処に行きたがっていたのかを…。
フラリと らん が上体を崩し皿の破片に突っ込みかけたところを、なつ と いるま が慌てて抱き止めて事なきを得た。
なつ が気絶してしまったらしい らん を抱え上げ自室へと連れて行く様子を見てから、割れてしまった らん の大切な皿を片付け始めた。
仕事中に悪いとは思ったが らん の身に起きた事をザックリ説明した所、午後休暇をとって帰ってきた すち も合流して五人はリビングに集まり、いるま が細かく全員に説明した。
すち
いるま
すち
すち
すち
いるま
確かに不思議極まりない。家で らん がキッチンに立っているとすれば洗い物をするくらいなもので、料理を作っているところなど見た事も無い。
すち
なつ
すち
なつ
すち
そこで怒るの普通じゃないと思う。
午後休暇を取らなければ らん の手料理を食べる事も一生無いのだろうし…。
みこと
すち
みこと
いるま
すち
みこと
みこと
すち
すち
なつ
なつ
すち
なつ
スゥゥゥ……と すち と なつ が息を吸い込む。
こさめ
こさめ
みこと
こさめ
一先ずとして予想ではあるが らん が手料理を作れるようになった理由は暫定的にコレが一位だろう。
ちなみに、らん が二度目の自殺未遂をする前までは土日の昼食は すち と なつ が居無い事がほとんどなので、冷蔵庫に作り置きしてくれていた。
そうしてその後では、みこと が軽食ならば問題無く作れる様になったこともあって作り置きでは無くなったのだが…。
すち
すち
幸せ何か願わない。家族に何かなれない、なりたくない。
言葉の一つ一つが以前までの関係を思い起こさせてくる。
間違っていないのだろう……。
でも、今の生活でも、いるま たちは十分幸せを感じていると言うのに。
らん だけが…やっぱり何か、違う考えを持っているのだろう。
なつ
すち
すち
なつ
すち
なつ が半ば無理矢理の形で人形の状態から素の状態に戻してはいたが、我儘も不満も今まで誰も、だっっっれも、聞いていない。
なつ と らん の喧嘩なんて本当に些細な事で核心に至るようなものではない。
二人の性格上、喧嘩に発展しやすいと言うだけだ。
さて、どうしようか。そう考えた所で不意に、ガチャ……バタン、と玄関の方から聞こえて来た。
なつ
いるま
なつ
と言いながら走って追いかけようとした なつ の携帯がピコンと音を立てた。
携帯を取り出した なつ が確認をして眉を寄せる。
追いかけるのを止めてチャットをし出すので、らん から一応連絡が入ったのだろう。
やり取りをして数秒の後に大きく息を吸う なつ を見て慌てて こさめ の両耳を塞いだ。
なつ
こさめ
なつ
なつ
すち
みこと
バタバタと階段を駆け下りてそのまま玄関の扉が音を立てたので吸入器を入手して らん を追いかけたのだろう。
三度目の正直……は、まぁ……兄弟が らん に対して過保護発動しまくっているので訪れる事は一生無いだろうなぁ……と いるま は苦笑を零した。
起きたら自室で、数分くらいぼうっと天井を眺めていた。
むしゃくしゃする…。ぐっと胸を抑えて上体を起こす。
らん
らん
酷いのは俺じゃんか…。
自己嫌悪。最近こればかり。
人形よりも素の方が良いと兄弟は言うけれど、こんなにも辛いなら人形であった方が楽に感じる。だって、感情が遠いから辛い事も押し込められるんだもん。
らん
そうだ…“俺の”お皿が無いと夜ご飯食べられない…。
パパが買ってくれた奴ってまだ売ってるのかな…。もう十年も前のものだけど……。
良し、思い立ったが即行動。
月は一月、まだまだ寒い冬の季節。
コートでも羽織れば問題無いかな、とハンガーに掛かっていたコートを着て財布と携帯をポケットに突っ込み準備万端。
部屋を出て階段を降りる。
すち
リビングから声が聞こえてくる。あぁ…全員リビングにいたんだ…。
ん?何話してるか分かんないけど仕事のはずの すち の声も聞こえる?
らん
今日の出勤って午前だけだったんだ、知らなかった……じゃあ、ご飯…俺が作らなくても良かったな……。
らん
出て来ると皆に伝えようと思ったけれど過去の事を思い出して怖くなって止めた。
いつだって「行ってらっしゃい」の挨拶は無かった。
ガチャ……バタン。
らん
らん
らん
携帯を取り出してチャットアプリを開きながら歩き始める。
LAN 「ショッピングモール行ってくる」
良し、これでおk……って直ぐ既読つくやん……。
何だろ……ゲームでもしてたのかな…?邪魔しちゃったな……。
なつ
らん
なつ
らん
良し、今度こそこれでおk。
予定ではあるけれど一時間程で帰宅するのだ。持って行かなくても問題無い。
学校の場合だと数時間と滞在するので念のため持って行っているけれど、短時間外出(例えばコンビニとか)なら基本持って行かないしね。
ショッピングモールまで歩けば10分から15分くらい。そこまで遠くない。行き帰りで30分、目的行動に30分。うん、丁度良い…!
考えて居れば突然背後から肩を掴まれた。
なつ
らん
振り返りざまに拳を入れようとしたが、肩を叩いて来た人……なつ が掌で受け止めた。
丁度顔面を狙ってしまっていたみたいなので受け止めてくれて助かった。
流石に伸びた なつ を放置して買い物にはいけなくなるからね…。
らん
なつ
らん
なつ
らん
らん
らん
ニコリと微笑めば なつ が眉を寄せた。
なつ
らん
らん
らん
なつ
らん の左手を掴んだ なつ が近くの路地裏へと入っていく。
あぁ……いやだなぁ……胸の、変なものが、大きくなる。
人形の面をした らん を路地裏に連れ込み壁に押し付けて顔を寄せれば、ふい、と らん が顔を逸らす。
そう抵抗したって力では敵わないともう分かっているはずだろうに。
らん の両手を片手で掴んで壁に押し当て、顔を片手で掴みこちらを向かせて唇を奪う。
感情を映さない表情も、瞳も、全て嫌いだ。感情をむき出しにして喧嘩している らん の方が余程好きだ。
割と結構な回数キスをしたお陰か、らん はキス時に鼻で息をすることに慣れて来たらしい。
けれど不思議だ…今回は全く抵抗をしてみせない。
なつ
少し長めにキスをして拘束を解き抱き寄せて頭を撫でながら問い掛ける。
数秒の沈黙、キス後の蹴りすら飛んでこない。
らん
なつ
なつ
らん
らん
らん
らん
だから抵抗も無く、蹴りすらも無かった、と……。
なつ
らん
らん
なつ
らん
らん
らん
らん
なつ
らん
なつ
らん
らん
らん
なつ
冗談でも無く本気で言っていそうなのが、本当に悪趣味。
らん
らん
なつ
らん
なつ
分かっている。
でも、少しでも らん の心が傾いてくれなければ何も変わらない。
近付いたって一線引いて距離を取って行ってしまう。踏み込んでも拒絶される。
らん
らん
なつ
らん
らん
らん
なつ
らん
なつ
なつ
なつ
なつ
らん
なつ
なつ
らん
なつ
なつ
医師である三人は何となくそうだろうと考え付いていたが、まさか らん がその事に付いて悩んでいるとは思わなかった。
もしかしたら今日も、感情任せに なつ の額に拳をかまして気絶させた事に罪悪感を感じていたりしたのかもしれない。
らん
なつ
らん
なつ
らん
らん
なつ
らん
やっと剥がれて素になった。
だがそれよりも、初めて零した不満に なつ は心臓が絞めつけられたかのような感覚になった。
五人で話していた事に対する感情は恐らく“疎外感”。
今までずっと一人だったのだから、寂しい という感情は大きく、そして口に出せない事も察するべきだった。
突然ガクリと らん の体から力が抜けた。
支えながら座らせて らん をみれば、両手で口を抑えて涙を堪えていた。
らん
待っていれば我儘も、不満も、全部言ってくれるようになると考えて居た訳じゃない。ここまで追い詰めて吐かせようだなんて思っても無かった。
こさめ の心は多分、良く知っているから望む事も何となく分かる。
それでも兄弟全員、らん の心は全く知らないから望むことも分からないのだ。
なつ
なつ
らん
なつ
らん
なつ
らん がどう言う考えを持っているのかをぶつけてくれれば良い。
なのに今までの喧嘩は全て らん の感情は曖昧なもので何の解決にもなっていなかった。
らん
らん
らん
なつ
らん
なつ
らん
なつ
らん
なんつー理論だ……。
流石に不可抗力で〇人だけは犯さない様に見張っていた方が良いだろうか…?
なつ
らん
らん
いつもこう分かりやすい反応してくんねぇかな……そうすれば なつ も構いやすいと言うのに……。
なつ
なつ
らん
なつ
らん
なつ
なつ
らん
なつ
なつ
頭を撫でてそのまま頬を撫でる。
嫌だったのか顔を逸らした らん が突然立ち上がり、なつ から逃れる様に歩き始めた。
本当こういう所……、とため息を吐いて なつ も立ち上がり らん の隣を歩く。
らん
なつ
らん
なつ
隣を歩く らん はこちらから顔を背ける。
ほんっと…素直じゃねえから困る。
ずっと こさめ は素直だったからどう対応したら良いのか誰も分からないのだ。
まぁ……それもこれも全て、なつ たちが悪いのだけれど……。
なつ
らん
らん
なつ
らん
らん
らん
なつ
らん
何で知ってんの、と言いたげな表情に思わずと笑ってしまった。
なつ
なつ
らん
そう言って小さく舌打ちが零された。
それから無言になって数分程で大型ショッピングモールに到着。
買い物の理由は聞いていないけれど逸れない様に らん について行けば問題はないだろう。
休日なので人は多いし店の中で らん も走ったりはしないだろうし。
ショッピングモール内を歩いて数分ほど。三階の食器屋へと来ていた。
なつ
らん
なつ
なつ
らん
なつ
らん
あれちょっと待て?もしかして何かア〇ジャッシュでもしてる?
なつ
らん
なつ
らん
何もアンジャッ〇ュはしてい無かった。
だと言うのに らん が言っている意味が全く持って理解出来ないのだ。
食器屋に入っていく らん を引っ掴んで近くのベンチに腰掛け詳しく話を聞く。
なつ
なつ
らん
なつ
らん の食器は全て一つにまとめて棚に入っていた。
要は平皿、深皿、お椀、茶碗、スプーン、フォーク、お箸、コップは重ねられて食器棚に入っていたのだ。
それが らん の物だと知っていたから、なつ も すち もご飯はそれに盛り付けていただけの話しで、ソレが無くなったらご飯を与えないとか言う話ではない。
なつ
割れてしまったのは平皿。
桜と兎の絵が描かれた子供っぽいお皿。
十年も割れたりせずに残っていたのは物持ちが良過ぎる気もするけれど…。
なつ
なつ
そう言えば……、こさめ の誕生日に兄弟でお揃いの平皿を買ったっけ……。
でも、やっぱり らん のものだけは購入していなかった。
?
なつ
なつ
?
?
なつ
突然話しかけて来たおばあ様。
掌で指し示す方を見れば隣に座っていたはずの前髪ピンクが食器屋の奥で商品を見ていた。
なつ
?
教えてくれたおばあ様に礼を伝えて立ち上がり食器屋に入って らん の元へ。
なつ
らん
なつ
らん
何を言ったって直ぐには信用も、信頼も、期待もしてくれない。
らん は今までそう思っていて、それは違うと説明した所で らん は理解してくれない。
なつ
なつ
なつ
らん
なつ
らん
暗い表情をする らん にどう声を掛ければ良いのか分からない。どう解釈すれば良いのか分からない。
結局言葉が思い浮かばず、ポン、と頭を撫でた なつ は らん の要望通りの皿を探すために動き始めた。
数十分ほど探し回ったが らん のお眼鏡に叶う食器は無かった。
違う。そうじゃない。これじゃない。
一体何ならばお眼鏡に叶うと言うのか……。
父親からの誕生日プレゼントだと言うあの割れてしまった食器は十年も前のもの。アレを探しているのなら、もう見つかるはずもない。
何も買わずに結局は手ぶらで二人は歩く。
子供用の食器売り場に行けばあるだろうか…?いや、もういっその事依頼して作ってもらうのが一番早いんじゃないだろうか?
なつ
なつ
隣に視線を向ければ隣を歩いていたはずの らん が居ない。
少し視線を彷徨わせて探せば近くの店に入っていくのが見えた。雑貨店の様だ。
なつ
一つの棚の前。デフォルメされた恐竜らしきぬいぐるみを両手で持って眺めている。
なつ
なつ
らん
恐らくは値札を見て名残惜しそうに棚に恐竜を戻そうとしている姿を見て小さくため息を吐き、恐竜の頭を鷲掴んでひったくりレジへ。
らん
慌てた様子の らん を放置して会計を済ませて値札を切って貰い、らん の腕を引っ掴んで店を後にする。
出た所で らん に恐竜を渡せば驚いた様に受け取った。
なつ
なつ
らん
なつ
らん
悲しそうな、辛そうな表情をして俯いてしまった。
何でそんな顔をするのか…。
“家族になれない、なりたくない”。
らん が不幸にならなければ、他が幸せになれないから……?
帰宅して手洗いうがいを済ませて速攻で部屋に向かおうとした らん を引っ張ってリビングに連れて行きソファにぶん投げる。
らん
らん
なつ
らん
未だに会議をしていたのかダイニングでは四人座っていて、こちらは らん の隣に座ってテレビを付ける。
この時間でおもろいのやってねぇかなぁ……とチャンネルを切り替えていれば らん が立ち上がったのが見えて思い切り引っ張ってソファに連れ戻す。
らん
なつ
らん
なつ
らん
確かにこんな言い方では無かったけれど、付き添いを望んでいた上に五人の輪に入りたかったと言う事は側に居たかったと言う事だろう。
なつ
なつ
いるま
なつ
らん
ちなみに今、らん が逃げられない様に右手を掴んでおり、らん は左手で恐竜のぬいぐるみを抱きしめていたのだが、図星だったのか左手を振り上げて なつ に目掛けて振り下ろす。
逆に左手で捕まえて右手にリモコンを持っていた なつ は振り下ろされた らん の左手を楽々と受け止めた。
なつ
らん
なつ
受けとめた左手を引っ張って隣に座っていた らん を足の間に座らせて背後から抱きしめる。
身長差は同じなので丁度良い位置に肩があったので顎を乗せて再びチャンネルを弄り始めた。
らん
いるま
らん
兄弟の中で一番力が強いのは互角で いるま と なつ だろう。ちなみに体力で言えば みこと が一番あったはずだ。すち はどちらかと言えばインドア派で美術が得意だったりする。
なつ
すち
すち
なつ
らん
なつ
らん
らん は心の奥底にある本音を打ち明ける事は無い。
不調も言わないし、我儘も言わないし、強請る事も無い。
だから なつ だけに限らず兄弟が不調に気付かなければならないのは少しだけ大変だ。
こさめ
らん
コイツのこの弟だけに対する切り替えが少しイラっと来る。まぁ言わないけれど。
こさめ
らん
らん
ニコリと張り付けたのは笑み。それは こさめ も分かって悲しそうな表情をした。
なつ
らん
なつ
なつ
らん
それ以上は話す気は無い様子で恐竜を両手で抱えながら なつ に全体重を掛けて来る。
チラリと見れば瞳を閉じていたので眠る様子だ。
気絶して二時間程眠っていた癖して良く寝るな……、と考えながら みこと にブランケットを取って貰って らん に掛けた。