夢見草の下で

特別校舎のドアを開ける。

私達6人は学問・運動・芸術の 各部でトップの「特待生」なので 特別校舎と特別寮が与えられるのだ。

彼は私の婚約者。 土御門は安倍の分家の中で1番偉く、 家の都合というやつだ。

朝のこの時間は、 あまり好きじゃない。

婚約者として仲を深める為の、 朝の会話時間。 決められた時間、邪魔できない時間。

彼はとても良い人だけれど、でも 異性としてじゃない。

けれど現芦屋当主である母が 意識不明の今、私から婚約破棄は できない。

陰陽師として力があり、そして安倍の 分家であること。 均衡を重視する老人共は そうじゃなきゃ納得しない。

ただ、それを鵜呑みにできる程 大人にもなれないだけ。

ごめんね土御門くん、はるちゃん。 いつも気を遣わせてしまってる。

…あぁ、チャイムが鳴る。

自然と笑みが溢れるなんて