ユキ
…悪い悪夢を、見ていたの。
オスマン
…左様でございましたか。では、今日は眠る前に温かいココアを入れましょう。
ユキ
…オスマンは優しいわね、ありがとう。
オスマン
お嬢様の為なら、このオスマン、全てを捧げる覚悟でいますから。
オスマン
何かありましたら、遠慮なく仰ってくださいね。
ユキ
ええ、分かったわ。
それでは、と慣れた手つきでオスマンは私をドレッサーに座らせる。
オスマン
今日の髪型はどうしましょうか。お嬢様の髪はお美しいですから、何をしてもお似合いになりますよ。
ユキ
もう、そんな毎回言うほどのものでもないわよ。
ユキ
…そうね、今日は三つ編みなんてどうかしら
オスマン
三つ編みですか!いいですね!
オスマン
では、失礼致します
オスマンの手が私の髪に触れる。
私の一日はまず髪のセットから始まるのだが、
ユキ
……
本当に、器用だ。オスマンが作業をしているのを大体目で追ってしまうのだが、する事一つ一つが綺麗で、丁寧で、無駄がない。
本当に私の執事でいいのだろうか、と思ってしまう程に。
ユキ
ねえ、オスマン。
オスマン
…はい、なんでしょう。
ユキ
貴方は、今の生活に満足出来ているかしら。
オスマン
……どういう事でしょうか
ユキ
オスマンは、私には勿体ないぐらい完璧な人間だと思ってる。
ユキ
…もし、もしも。私が処刑される程の反逆者だとしたら、どうする?
オスマン
そうですね…
オスマンが、手を止める。
オスマン
お嬢様がどんな大罪を犯したとて、それがお嬢様から離れる理由にはなりません。
オスマン
私めの幸せは、お嬢様に尽くすことですから。
ユキ
…ふふ。いい子ね、オスマン。
彼の言葉に、嘘は無い。時を戻す前、私が処刑されるその直前まで彼は必死に私の味方をしてくれた。
今更こんな確認をしてしまったのは、私なりの罪滅ぼしだろうか。
オスマン
さっきの悪夢の続きですか?夢の中であろうと、もしも私がお嬢様を裏切っていたのなら、私の事を殺してくれて構いませんよ。
ユキ
悪い冗談はやめてよ。そんな事するはずないでしょう
オスマン
はは、さっきのお返しです。…ほら、出来ましたよ。
鏡の前から退いたオスマンの先にいたのは、ふわふわの三つ編みにセットされた私の姿。
…ふむ、やはりオスマンにセットされた私は世界一可愛いな。
ユキ
今日も素敵なセットをありがとう。これ以上ないぐらいの可愛さね。
オスマン
お褒めに預かり光栄です。
オスマン
では、先に朝食の準備をしていますので、また食堂でお会いしましょう。
ユキ
ええ、また後で。
ユキ
………グルッペン、もういいわよ。
グルッペン
はあ〜〜〜………暇すぎて常世に帰ろうかと思ったぞ
ユキ
気短すぎでしょ