太宰治
しかし腑に落ちないね
太宰治
合理と論理の権化たる森さんが
太宰治
こんな茶番に人員を割くとは
太宰治
しかも一人は準幹部ときた
後頭部で手を組んで云う太宰。
樋口一葉
茶番ではありません
樋口一葉
貴方を守る為です
太宰治
守る為?
樋口ちゃんが神妙な顔をしながら答える。
太宰は欠伸をしながら聞き返す。
杏堂〇〇
首領は"Q"を座敷牢から解き放った
太宰治
!
私の言葉に太宰は顔色を変えた。
太宰治
莫迦な
太宰治
Qに敵味方の区別などない
太宰治
命あるものを等しく破壊する、
太宰治
狂逸の異能者だよ
樋口一葉
闘争を征する為ならばマフィアは手段を選びません
樋口ちゃんが拳を握り締めて云う。
太宰治
何を解き放ったか判っているのか
太宰の低く、冷淡な声が響く。
太宰治
あれは呼吸する厄災
太宰治
何故Qが座敷牢に封印されたと思う?
太宰治
異能の中でも最も忌み嫌われる
太宰治
"精神操作"の異能者だからだよ
杏堂〇〇
知ってるよ
杏堂〇〇
私も首領の命令に最初は反対した
杏堂〇〇
Qの詛いが発動した者は幻覚に精神を冒され
杏堂〇〇
周囲を無差別に襲う
太宰治
詛いを発動させる契機は詛いの根源たる
太宰治
人形が破壊される事だ
太宰治
但し人形が破壊された時、詛いを受けるのは受信者のみ
太宰治
受信者になる条件はQを傷つけること
太宰治
受信者の躰には誰かに掴まれたような痣が浮かび上がるから
太宰治
判別は容易だ
太宰治
全員に警戒を徹底させれば今なら未だ間に合……
太宰治
……!
太宰が何かに気付いた様に目を見開く。
太宰治
此処に来た時……「私を守る為」と云ったね?
樋口一葉
……
杏堂〇〇
……
銀
……
樋口ちゃんも銀ちゃんも私も何も云わずに太宰を見詰める。
諭す様に、頷く様に。
太宰治
………しまった……!
太宰は冷や汗をかきながら踵を返し、走って行った。
私達の誰も、其れを止める事はしなかった。