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第1話 - あ

2023年05月31日

#スカッと

#恋愛

田中俊樹

ヒロシ

スミレ、もう出発したのかい？

ヒロシ

町内会の集まりで旅行に行くだなんて、初めてだよな?

ヒロシ

まさか4泊5日で北海道に旅行だなんて思わなくて驚いたよ。

ヒロシ

北海道に行くのは新婚旅行ぶりかな？

ヒロシ

今日は家族のことを気にせず、存分に楽しんできてくれよ。

スミレ

えぇ、もう出発したわよ。

スミレ

昨日朝イチで出るからねって言ってあったよね?

スミレ

本当人の話聞いてないんだから…

スミレ

せっかくの旅行なのに、余計なことでイライラさせないでよね！

スミレ

それに旅行中はあなたのラインで楽しみをぶち壊されたくないから、

スミレ

携帯の電源切ろうかなって思ってたのよねー！

スミレ

それくらいあなたからの連絡が鬱陶しいってことなの！

スミレ

分かってるかしら？

ヒロシ

何もそこまでしなくたって良いじゃないか…

ヒロシ

俺だってなるべく連絡しないようにするけど、ちょっと心配だからさ。

ヒロシ

お金のこととかもあるだろ?

ヒロシ

だから連絡は取れるようにしておいてくれよ。

ヒロシ

スマホの電源を切ってたら、写真を撮ったり出来ないじゃないか。

ヒロシ

せっかくの旅行なんだから、たくさん思い出作らないとな。

スミレ

あー！もううるさいわね！

スミレ

私が専業主婦だからお金がないって言いたいわけ？

スミレ

だったらもっとお小遣いよこしなさいよ！

スミレ

とにかく携帯の電源は切らないでおくからなるべく連絡してこないでよね！

スミレ

本当何から何までうるさい人ね！

スミレ

家にいても外にいてもうるさいなんて、信じられない！

ヒロシ

なぁ、そろそろそういう言い方やめてくれないかな？

ヒロシ

最近同僚や後輩夫婦の話をよく聞くんだけど、

ヒロシ

俺ってそこまで貶されたりバカにされる必要あるのかなって…

ヒロシ

だから少し言い方を変える努力をしてほしいんだ。

ヒロシ

旅行中にこんな話をしてごめんね。

スミレ

なにそれ笑

スミレ

私が悪いって言うの？

スミレ

あなたがはいはいって聞いててくれれば私は何も言わないのに、

スミレ

ぐちぐち言われるのが嫌なら黙ってたらどう?笑

スミレ

あえて気分を下げるような言い方をしてるんじゃないの?

スミレ

そういうところが本当に嫌いなのよね〜

ヒロシ

嫌いって…

ヒロシ

スミレは昔からそういうところがあるよな。

ヒロシ

自分優先で普段から周りのことなんて考えたことないじゃないか。

ヒロシ

俺たち家族はみんなスミレに気を遣って生活しているんだぞ。

ヒロシ

気に食わないことがあると、怒ってヒステリーを起こすし、

ヒロシ

すぐ物に当たるからもう俺たちも嫌なんだ。

スミレ

へぇ〜

スミレ

じゃあ私と離婚したいんだ？

スミレ

それならそれで全然良いんですけど笑

スミレ

私は私で新たな人生を歩むからどうぞご勝手に〜

ヒロシ

そんな…売り言葉に買い言葉じゃないか…

ヒロシ

とにかく旅行中にこんな話をした俺も悪かったよ…

ヒロシ

今は俺たち家族のことは気にせずに旅行楽しんできてくれ。

ヒロシ

道中気をつけて。

ヒロシ

こちらからはほぼ連絡しないと思うから、何かあったら連絡してな。

〜翌日〜

トモゾウ

ヒロシ！！助けておくれ！！

トモゾウ

婆さんが転んで頭を打ってしまったんだ！！

トモゾウ

今救急車を呼んで病院に向かっている最中だから、すぐ来てくれないか！？

ヒロシ

父さん！？

ヒロシ

分かったよ！すぐ行く！

ヒロシ

意識あるのか！？

トモゾウ

今は意識がないんだよ…

トモゾウ

ひとまず呼吸はしているが、容態が急変する場合もあると言われている。

トモゾウ

家族や身内を集めてくれと言われてしまったから、

トモゾウ

ヒロシみんなに連絡を取ってくれるか？

トモゾウ

俺は母さんに付き添っていたいからさ。

ヒロシ

分かったよ。

ヒロシ

連絡取ってすぐに病院に行くからな！

〜その直後〜

ヒロシ

スミレ！何回も電話したんだけど出ないからラインに残すよ。

ヒロシ

さっき父さんから連絡が来たんだけど、

ヒロシ

母さんが転んで頭を打ってしまったそうなんだ。

ヒロシ

今は救急車で病院に向かっているらしいが、

ヒロシ

意識がないみたいなんだよ。

ヒロシ

高齢だし、容態が急変する可能性もあるから家族を集めて…と。

ヒロシ

旅行中申し訳ないが、すぐに戻って来れるか？

ヒロシ

早急に連絡をくれ！

スミレ

ラインも電話もしつこいんだけど！！

スミレ

お義母さんが転んで頭を打ったって？

スミレ

意識がないから旅行を切り上げて早く帰ってこいって？

スミレ

マジでありえないんだけど！！

スミレ

お義母さんも何でこんな時に転ぶのかな！

スミレ

状況考えてほしいわ！！

スミレ

とりあえず私は帰らないよ！

スミレ

まだまだ旅行の日程はあるし、存分に楽しんでから帰ることにするわ！

スミレ

どうせ転んだ程度ならすぐ意識戻るって！

スミレ

お義父さんも大袈裟に言ってビビらせてるだけでしょ笑

スミレ

私は私の用事を優先させてもらいますので！

スミレ

お義母さんのとこにはヒロシ1人で行ってください！

ヒロシ

はぁ？

ヒロシ

スミレ、本当に何言ってるんだよ?

ヒロシ

俺の母さんが意識ないって時に旅行を優先するなんて、

ヒロシ

人としてどうかと思うぞ！！

ヒロシ

他人ならまだしも、スミレにとっては義母じゃないか！

ヒロシ

スミレがそんな人間だとは思わなかったよ。

ヒロシ

こんなときに自分の用事を優先するような女とは離婚だ！

ヒロシ

状況が落ち着いたら絶対に離婚してやるからな！

スミレ

義母なんて所詮他人じゃないの！

スミレ

私はこの旅行が何よりも大切なのよ！

スミレ

こんな程度のことで離婚を選択する夫なんて、

スミレ

こっちから願い下げだわ！

スミレ

あんたみたいなオッサンより、ホナミさんの方がよっぽど良いし！

ヒロシ

は？ホナミさんって…

ヒロシ

お前まさか…！？

スミレ

そうよ！ホナミさんと私はお付き合いをしているの。

スミレ

今回の旅行は町内会の旅行じゃなくて、ホナミさんと2人きりの旅行よ。

スミレ

初めての2人で行く北海道なのに、邪魔しないでよね！！

スミレ

とにかく私は帰らないから、離婚でも何でも好きにしてちょうだい！

ヒロシ

お前、自分が何を言っているか分かってるのか？

ヒロシ

ホナミさんだって家庭があるというのに…

ヒロシ

スミレ、お前には心底幻滅したよ。

ヒロシ

とりあえず離婚は確定事項だから、旅行から帰ったら覚えておけよ！

〜3日後〜

スミレ

ちょっと！あんた最低なんだけど！

スミレ

ホナミさんの奥さんにバラしたでしょ！！

スミレ

北海道から帰って来たんだけど、空港に着いたら奥さんがいて！

スミレ

私に向かって「泥棒猫なんて言うのよ！？」

スミレ

奪われるってことは自分の魅力がないということなのに

スミレ

人のせいにするなんて本当ありえない！！

スミレ

それにホナミさんは目の前で土下座してて、

スミレ

「こいつとは1回きり愛してるのはお前だけだからって、」

スミレ

私のことをこいつ呼ばわりしたのよ！？

スミレ

どれもこれもお義母さんが倒れて意識を失うからじゃないの！！

スミレ

何もかも最悪なんだけど！！

スミレ

私の人生を壊したんだから少しくらいお詫びしてよね！

スミレ

どうせあの後生き返ることはなかったんでしょうし、

スミレ

保険金が降りたら全部私にちょうだい！！

スミレ

それくらいしないと私の気が済まないわ！！

スミレ

ちょっと！聞いてんの！？

ヒロシ

おい、お前。言っていいことと悪いことの区別もつかねーのか。

ヒロシ

お前の人生を壊したのは母さんじゃねぇだろう。

ヒロシ

お前自身が自分の人生を壊したんだろうが！！

ヒロシ

舐め腐ったことばっかりいってんじゃねぇよ！！

ヒロシ

それに母さんは生きてるぞ。

ヒロシ

あの後、懸命な処置のおかげで無事に意識を取り戻して、

ヒロシ

今は普通に会話も出来ているんだ。

ヒロシ

一時は危ない状況だったが、ここまで回復してんだよ。

ヒロシ

それなのにお前はなんなんだ？

ヒロシ

人の母さんを勝手に死人扱いして、保険金をよこせだと？

ヒロシ

バカにするのも大概にしろや！！

スミレ

へ…？

スミレ

お義母さん生きてるの…？

ヒロシ

もちろんだよ。

ヒロシ

転んでぶつけたところはたんこぶになってしまったけど、

ヒロシ

腫れもだいぶ落ち着いてきているんだ。

ヒロシ

それより、実はこのライン父さんも見ているんだが、

トモゾウ

「母さんを何だと思っているんだ！」

ヒロシ

ってかなりブチギレているぞ。

ヒロシ

あの温厚な父さんがキレるなんてよっぽどだよなぁ。

スミレ

一緒に見てるって…本当？

スミレ

あの、お義父さん！全部冗談ですよ！

スミレ

お義母さんに対してそんなこと思ってもいませんし、

スミレ

生きててくださって本当に本当に嬉しいです！！

スミレ

私の言うこと信じてくれますよね！？

ヒロシ

お前さ、俺たち家族のことバカにしすぎじゃねぇか？

ヒロシ

俺も父さんも母さんも全員温厚な性格だからと舐めていたんだろ。

ヒロシ

じゃなきゃこんなこと出来ないはずだ。

ヒロシ

不倫旅行を優先して義母の命を危機を蔑ろにするなんて…

ヒロシ

これだけ言われても自分が非人道的な発言をしたと

ヒロシ

分かってねぇみたいだな。

ヒロシ

お前の脳内、お花畑どころかラフレシアだらけなんじゃないか？

スミレ

なにそれ！酷い！

スミレ

私はこんなにあんたやあんたの家族に尽くしてきたのに、

スミレ

どうしてそんなこと言われなきゃいけないのよ！！

スミレ

あんたはいっつも私のこと否定するばかりだったじゃない！

スミレ

だから私は不倫したの！

スミレ

ホナミさんはあんたと違って優しくて、素敵だったのよ！

スミレ

不倫したのは私が悪いんじゃなくてあんたのせいだから！！

ヒロシ

でも空港で振られたんだよな?笑

ヒロシ

ホナミさんからしたらお前はその程度の女だったってことだろ。

ヒロシ

それなのに自信過剰に恥ずかしい女だな。

ヒロシ

何が奪われるのは自分の魅力がないから〜だよ。

ヒロシ

ふざけんな。

ヒロシ

お前には魅力なんてこれっぽっちもねぇよ！！

ヒロシ

約束通りお前とは離婚するからな！

ヒロシ

もちろん慰謝料も請求するし、子供達の親権は俺が貰うからな！

ヒロシ

養育費も払ってもらう予定で弁護士に相談してるから。

ヒロシ

お前に文句を言う権利はないぞ！

スミレ

はぁ！？

スミレ

親権のことや慰謝料のことまで勝手に決めるんじゃないわよ！！

スミレ

あんただけ弁護士雇うなんてずるい！！

スミレ

私は弁護士ついていないんだから、あんたも弁護士雇うのやめてよ！

スミレ

あんたばっか贔屓されて全然平等じゃないじゃん！

ヒロシ

お前って本当に話が通じないな。

ヒロシ

15年間連れ添ったのにこんなに話が通じないやつだとは思ってなかったよ。

ヒロシ

あとは弁護士を通して話をしてくれ。

ヒロシ

俺はもうお前に関わることが疲れてしまったよ。

ヒロシ

子供達にも今回のこと話したら、

ヒロシ

「お婆ちゃんが大変な時に帰って来ないなんて最低ととても怒っていたぞ。」

ヒロシ

もうお前には二度と会いたくないそうだ。

ヒロシ

これ以上関わる気はないので、さようなら。

スミレ

え、子供達までそんなこと…

スミレ

でも私は悪くないから！

スミレ

せめて慰謝料は払うから、子供達の親権は私にちょうだいよ！

スミレ

私専業主婦だからお金がないのよ！

スミレ

子供達が中学を卒業したらすぐ働きに出すから！

スミレ

ヒロシ！聞いてるの！？

スミレ

ちょっとー！！

〜後日談〜

ヒロシ

昔から自己中心的なスミレにたくさん我慢をしてきた私でしたが、

ヒロシ

今回のことでついに堪忍袋の尾が切れてしまいました。

ヒロシ

母に対しての失礼な態度や言動に加え、ご近所さんとの不倫発覚。

ヒロシ

温厚な私でも流石に譲歩出来ませんでした。

ヒロシ

ホナミさん夫妻は離婚せず、再構築することになったそうです。

ヒロシ

詳しくは聞いていませんが、ガチガチの束縛網が引かれているとか…

ヒロシ

離婚後、孤独になってしまったスミレは自分の魅力？を活かして、

ヒロシ

夜のお仕事を始めようとしたらしいです。

ヒロシ

ですが、「年増！ババア！等取り合ってもらえなかったようで、」

ヒロシ

心が折れてホームレスになってしまったとか…笑

ヒロシ

慰謝料や養育費支払いのために借金をしたそうなので、

ヒロシ

怖いお兄さん達に連れて行かれるのも時間の問題ですね。

ヒロシ

母のことでスミレの不倫が発覚するとは思ってもいませんでしたが、

ヒロシ

ひとまず収まるところに収まって良かったとホッと胸を撫で下ろしました。

ヒロシ

母が落ち着いたら父や娘達と旅行にでも行こうかと話しています！

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