主
主
主
主
主
主
オツキン
氷虎
夜が寝静まった頃。とある山の奥には、未だに明かりが灯っているこじんまりとした工房があった。
2つの影がカチャカチャと音を立てながら、なにやら作業をしている。
…が、片方は飽きたのか体を大きく伸ばし、試験管を乱雑に置いた。
オツキン
重い体を持ち上げ、オツキンはかすかに香る匂いの出処を探る。いつもは感じないような甘い匂いに、不快感を覚えた。
氷虎
相棒の声ですっかり集中力を切らした氷虎は彼とは違ってドライバーを丁寧に仕舞う。
1本1本を大切に片付ける彼の動作に見惚れていたオツキンは我に返って首を大きく横に振った。
オツキン
氷虎
またもやオツキンは首を横に振る。粘り強く工房をくまなく見渡すと、机上の白い紙袋に目が留まった。
ただの紙袋ではなく、それなりに上等な物。
先程から探っているものの正体に一瞬で気が付けるほど、その紙袋からあからさまに香りが漂っていた。
オツキンは「これじゃん」と口を開きかけた。
…が。
よくよく考えると、何故氷虎の工房にこんな物があるのだろう。
富裕な訳でも無いし、彼の性格的に自分で購入したものとは思えない。 …貰い物か? というか、この紙袋の中身は何なんだろうか?
悶々とした表情でいるのに気がついた氷虎は、怪しげにオツキンを見ている。
オツキンは何故か自分が悪いことをしている気分になり、そそくさと目線を紙袋から逸らした。
オツキン
動揺のあまり、オツキンは口を滑らせて突拍子もない発言をしてしまった。
突然の質問に氷虎は有るのか分からない目を白黒させる。
氷虎
オツキン
そう吐き捨てて、オツキンは氷虎に紙袋をつきつける。 しばらくの沈黙の後、「えぇ…」と言わんばかりの顔で、氷虎が口を開く。
氷虎
オツキン
氷虎
気まずそうにオツキンから目を背ける氷虎を見て、オツキンはみるみる顔を真っ赤にさせる。
なんだ、勘違いだったじゃん。恥ずかしい。複雑な感情が心を蝕み、いつの間にかオツキンに残っているのは安堵だけだった。
オツキン
氷虎
どこか甘ったるい雰囲気が二人の間に流れる。そんな雰囲気をぶち壊すかのように、氷虎が口を開く。
氷虎
……言われてみれば確かに。オツキンは紙袋を覗く。
そこにはたくさんのアロマオイルと、少し小さめのガトーショコラが2つ入っていた。
コメント
1件
氷乙最高です!!!二人が永遠と一緒にいることを願ってます!