ぬいぐるみに恋するわけないじゃんっ！

今から13年前…… 私がまだ4歳だった時のこと

私は、 おばあちゃんとおじいちゃんに連れられて 海がよく見える旅館に行った

その時のことはあまり覚えていないが……

でも、一つだけ、 確かに覚えていることがある

私はその旅館で、 初めて仔犬のぬいぐるみである 『ちゃっぴー』と出会ったのだ……――

まだ重たい瞼をゆっくりと開けると、 私は目の前に広がった光景に とにかく驚きすぎて……

なんというか、 一瞬で目が覚めた

『信じてほしい』って言われても……

ぬいぐるみが人間になっちゃうなんて、 普通あり得ないし……

大体あんなに可愛かったちゃっぴーが、 全裸で……

……全裸

私はタンスから 適当に服を引っ張り出して、 偽ちゃぴに向かって放り投げた

まあ女物の服しかないけど、パッと見 偽ちゃぴは私と同い年かちょっと幼い感じに 見えるし、サイズは大丈夫でしょ

偽ちゃぴは ちょっと褒めただけなのに、 それはもう子供の様に 無邪気に喜んでいた

……いや、子供か

…………

……でも、 ちょっとだけ、私も嬉しい

置時計の針が指している数字を見て、 私はめちゃくちゃ驚いた！！

バタンッ

なんて…… 急いで飛び出してきちゃったけど……

やっぱり学校なんて行きたくないな

楽しくないし、嫌な思いするだけだし……

でも……

『1日だけ……』

……そう、 今日1日頑張れば、明日は死ねるから

今日までずっと 学校休まないできたんだもん

せっかくなら このまま皆勤して死んだ方が かっこいいよね

ヒソヒソと 私の悪口が聞こえる

でも、こんなの 気にしちゃダメだ

今日を乗り切れば 死ねるんだから……

椅子の上に 何本か画鋲が置いてあった

床に落とせばいい話なんだけど……

……テープか何かで固定されてて、 どかせない……

これじゃ、 座れない…………

『キャハハハハ』

笑い声が聞こえる

……やばい、 泣きそうだ

やっぱりあの時、 死ねばよかったんだ

生きてたって辛いだけで 幸せになんか……っ――