この作品はいかがでしたか?
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コメント
31件
時差コメ失礼します!めっちゃ泣きました😭
わわわっ…好き……涙が止まらないよぉ…(((
Kailu
Kailu
Kailu
Kailu
Kailu
Kailu
Kailu
Kailu
Kailu
公園のベンチに2つ年上の君と並んで座り紙コップを耳に当てる
君も紙コップに手に取り耳に当てた
紙コップ同士で繋がっている糸
『もしもし?』
『もしもし!』
隣りにいるのにも関わらず 紙コップを耳に当てた二人。
『調子はどうですか?』
『絶好調です!』
お互いの顔を見ず前をみて会話をする
まるで電話をしているかのように
『昨日こっちの方ではこんなことが____』
『それ本当!?w』
『こっちの方では___』
そんなことはお構いなしに紙コップ越しに会話を続けた
ひと通り終えると口癖のように言ったあの言葉
『明日もここで話しませんか?』
『それじゃあここで待ってますね』
明日も会うための誓いの言葉のようだった
俺は耳に当てていた紙コップをベンチに置いた
紙コップと糸を素早くまとめると『それじゃあね』と手を振りそのベンチから離れていった
あとに続く『また明日』
離れていて少し小さく聞こえた
今日もいつもどおり約束をしたあの公園に駆け走る
いつものあの公園のあのベンチに座る君の姿が目に入る
いつも俺よりも早くいる君は少しだけ普段とは違った
ないこ
If
彼に駆け寄ると見るにも痛々しい姿で座っていた
いかにも悲しそうな声に表情に…
ないこ
それを見て自分のことのように苦しくなった
ないこ
恐る恐る質問すると
君は表情をふにゃっ…と柔らかくした
If
If
ないこ
If
ないこ
If
If
俺の横に置いてある糸電話を指さしてニカッと明るく振る舞う君
その笑顔にドキッとしたのは気のせいだろうか
それにつられて俺も笑った
ないこ
紙コップに耳を当てる
If
紙コップ越しに聞こえる君の声
普段より何倍も近くで話してるみたいに聴こえる
ないこ
If
ないこ
If
普通に話しても変わらないような内容を糸電話越しに話す
それが俺らの日常だった
あれから5年後
俺は中学3年生になり今も受験真っ只中だ
受験勉強や面接などが重なりいつものように会える日がどっと減った
ここ数ヶ月会えていないほどに
ないこ
ないこ
そう思いながら受験勉強も一段落ついたところで 俺は久しぶりにあの場所に行った
公園に着くとベンチに座っている青髪の男性が見えた
見覚えのある顔
ないこ
If
ないこ
1年前のまろと見違えるほどに変わっていた
髪の色も青一色に染めていて、身長も前まで俺と変わらないほどだったはずなのに驚くほどに伸びている、服装も一段とおしゃれだった
ないこ
声が詰まる
まろを見て、声を聞いてすごくて心拍数が上がった
きっと…久しぶりに会えて内心めっちゃ嬉しいんだろう
きっとそうだ。多分…
If
ないこ
なんか俺だけおしゃれしてないみたいで少し嫌だった
置いてかれてるみたい
If
ないこ
If
ないこ
あまりピンとこない
If
If
ないこ
まろのほうが断然かっこいいと思うけど…?
そう思いつつも言葉にすることはできなかった
If
ないこ
If
ないこ
If
ないこ
If
ないこ
あまり覚えていないのかピンとこない
If
ないこ
If
え、なに?中3になってもなお俺のことまだ子供だと思ってたの?
ないこ
If
ワシャワシャッと頭を撫でられた
ないこ
If
ないこ
If
ないこ
なんともないこういう会話がやっぱり楽しいんだよなぁ
ふとそう思った
はなし続けて1時間が経った
もう6時
もうすぐ暗くなる頃だ
ないこ
If
ないこ
If
ないこ
ないこ
ベンチから降りまろの方を見つめる
ないこ
明日もここで話しませんか?
If
一瞬苦しそうな顔をしていたように見えた
If
ないこ
ないこ
If
まろの返事を聞き終わる前に俺はまろから離れていった
ないこ
少し違和感を感じたが気のせいだろうとそのまま帰っていった
それからまろがそのベンチに来ることはなかった
来る日も来る日もまろを待って座っていた
だけど何時間待っても来ることは一度もなかった
その日の帰り家に入ると
まろの母親が俺の母親に寄り掛かりながら泣き崩れていた
ないこ
母
ないこ
母
母
ないこ
一瞬何がなんだかわからなくなった
母
母
衝撃を受けすぎて涙すらも出なかった
その場で目を見開いたまま動くことができなかった
その1週間後
まろの葬式が始まった
部屋中にまろの家族や親戚のすすり泣く声が響いていた
だけどまろが死んだという感覚が湧かないのか
葬式の中でも一粒も涙を流すことはなかった
葬式の前半が終わり火葬をする準備が始まった
最後に一目見ようとまろとの思い出の詰まった糸電話を持って俺はまろに近づいた
棺桶の中に目を閉じ薄っすらと微笑んでいるまろ
途端に視界が揺らんだ
頬から雫がポタポタ滴っているのがわかる
やっと自覚したんだ
もう会えないことに
もう…声すらも聞けないことに……
そう思うと涙が止まらなくなった
棺桶の前で泣き崩れた俺
立つ気力すらも残っていない
俺は薄汚れた糸電話を胸に抱き泣きじゃくった
親が肩をポンッ…ポンッ…と優しく叩いてくれた
『気が済むまで泣け』というメッセージだったのか
俺はそのまま泣き続けた
気が落ち着き再度まろに目を向けた
目を閉じたままのまろ
もう開くことはない
だけど最後に5年前から一度も使わなかったこの糸電話で
ないこ
糸電話の片方をまろの耳にあてた
つけた途端に聴こえるまろのこきゅうする声すらも聞こえない無音の空間
そこに俺は口を開きこういった
ないこ
俺は紙コップ同士を繋ぐ糸を2つに千切った
ブヂッ___
千切ったもう半分をまろの入った棺桶の中に…
まろの耳の隣にそっと…置いた
ないこ
あれから10年後
ふと思い出の詰まった紙コップに目が行った
受話器の横に置いてある糸の付いた紙コップ
だけどその糸の先は何もなく
ただ糸が千切れていた
昔葬式で棺桶に糸電話のもう半分を入れて火葬した
これもまた…、1つの思い出だ
もう半分はもう…この世に存在しない
切れたものはもうもとには戻らないのだから
俺は紙コップの飲み口の部分を耳に当てそっと呟いた
ないこ
返事の返ってくるはずのない途切れた糸電話
だけどもう会えない彼に届いてほしくて
一言こう…呟いた
ないこ