頭で考え付く前に身体が動いていた。
今はただ、目の前にある存在を感じたくって、自分の腕の中に抱き止めていたくて。
悠佑
久しぶりに聞いた声。ふわりと香る慣れ親しんだ匂い。この存在をもう二度と失いたくないから、強く、強く抱き締めた。
アニキが死んでから、涙なんて出なくなったのに、今はとめどなく涙が溢れ出してきた。アニキは戸惑いながらも優しく背中を撫でてくれる。
悠佑
悠佑
それからしばらく涙は止まらなかったし、とても喋れるような状態じゃなかった。
数十分経ってからやっと涙が止まって、少しずつ喋れるようになった。
悠佑
ないこ
悠佑
にっと笑う顔は間違いなくアニキの笑顔だ。疑うつもりなんか元々なかったが、この笑顔を見て、本当にアニキがここにいるんだ、と実感する。
ないこ
悠佑
ないこ
ないこ
思い出したくはないが、アニキの最後はこの目で見たんだ。死者が生き返るなんてそんな漫画の様な話があるとは考えられない。
さっき触れられたから、幽霊ってわけでも無さそうだし。
じゃあなんでアニキがここにいるのか、
悠佑
悠佑
ないこ
普通なら、『気付いたらここに居た』なんて、信じれることではないけど、 実際、ほんとに突然現れたので、アニキの言ってることは本当なんだろう。
悠佑
ないこ
悠佑
悠佑
ないこ
俺は咄嗟に自分のスマホをアニキに見せた。
すると画面を見た瞬間、アニキの表情が固まった。
悠佑
ないこ
悠佑
悠佑
そう言われ画面を確認するが、特におかしい所は無かった。
ないこ
悠佑
ないこ
悠佑
悠佑
ないこ
ないこ
悠佑
悠佑
ないこ
ないこ
悠佑
ないこ
ないこ
疑問に思っていたことがようやく解けた。
触れられるはずのない身体に触れられたこと、聞こえるはずのない声が聞けたこと。
それは、今目の前にいるアニキが事故が起こる前のアニキだからだ。
まだ、俺たちが6人で「いれいす」として活動していた頃のアニキ。
ないこ
ないこ
死んでしまった人は、生き返らない。そんなのわかりきっていた事だ。
──それでも、「過去のアニキ」だとしても。帰ってきてくれた事は変わらない。
本来なら二度と会うことなんて出来なかった存在。
もう一度出会えたなんて奇跡としか言いようがない。
悠佑
ないこ
悠佑
ないこ
ないこ
悠佑
悠佑
表情を曇らせながら、アニキはぎゅっと俺の手を握る。
ないこ
俺を心配して、アニキが必死になっている姿に少し笑みが溢れた。
ないこ
ないこ
悠佑
ないこ
ないこ
まだ不安そうな顔をしてるアニキを、安心させるためにぎゅっと抱き締めた。アニキもそっと抱きしめ返してくれる。
やっぱり温かい。そりゃあそっか、だって目の前のアニキは生きてるわけだし。
しばらく抱きしめあっていると、扉の開く音がした。
ガチャッ
初兎
初兎
悠佑
──その姿を見たとき、俺は夢を見てるんだと一瞬思った。
彼が生きているなんて、都合のいい幻覚だと。
でも、その声が自分の鼓膜を震わせた瞬間、彼の声が酷く鮮明に聞こえた。
思わず、全身の力が抜けて床に座り込んだ。
悠佑
彼の声を聞くたびに、彼の姿が目に映るたびに、記憶が蘇る。
気付いたら俺の頬は涙で濡れていた。
初兎
悠佑
悠佑
ないこ
ないちゃんにそう言われて、悠くんは俺のもとに来た。そして、そっと抱き締めてくれた。
悠佑
悠佑
温かい手で頭を優しく撫でられる。
そのせいで余計に涙が止まらなくて、俺は悠くんを強く強く抱き締めた返した。
初兎
初兎
悠佑
子供みたいに声を出して泣いた。悠くんはその間もずっと励ましてくれて、そんな様子をないちゃんは安心したような、でも少し寂しそうな表情で見ていた。
コメント
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コメント失礼します!(*- -)(*_ _)ペコリ続きが、めっちゃ楽しみ‼️待ってま~す!( >ε<)頑張ってください✨🍀