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3 - 第二章 「Ma」計画 -ホトケ-(1)

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2025年02月15日

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今回からほとけっちが出てきます

やっと、やっと青水要素大です

あ、ほとけっち女体化です

これは始まりの物語。

何から語りましょうか?

_____森の魔女は、青いスプーンをステッキ代わりに使うらしい。

そんな噂がモグラたちの間で広まっているのは、ほとけにとって憂慮すべき状況だった。

彼女は森で採れた果物やキノコを売ることで生計を立てている

小さなネムの村においては、村長の娘であっても労働から逃れる事は出来ないのだ。

別にその事自体は苦ではなかった。

少なくともずっと村の中に閉じこもっているよりはずっといいし、幸いにも客に困る事はほとんどなかった。村の東に広がる平原で働くモグラたちは、いつだって食料を求めているのだ。

モグラとは、遺物を発掘する者たちの事である。十二王都から入れ代わり立ち代わりやってくる彼らのせいで、今や平原は穴ぼこだらけになってしまったが、村でモグラに対する不満を漏らす者は少なかった。

彼らの落としていくお金がこの村を豊かにしているのは、紛れもない事実だからだ。

今、ほとけが操っている自動馬車だってそのお金で買った物だ。一応、所有者は父という事になっているが、彼がこの馬車を使った事は一度だってない。

村長は二年前に腰を痛めて以来、家に閉じこもりぎみになってしまった。

だから代わりにほとけが商売用の道具として活用させてもらっているというわけだ。

荷台にたくさんの森の幸を詰め込んだ馬車は、一番大きな発掘現場へと向かっていた。

馬車と言っても、本来のそれとは違い馬が荷台を引っ張っているわけではない。車輪を動かしているのは、ほとけの放つ魔力によって動く特殊な歯車だ。

この歯車もまた、モグラたちが発掘した遺物の一つなのだという。具体的にどんな仕組みなのかほとけにはさっぱりわからなかったが、とにかくこの馬車が本来ならかなりの高額な代物だというのは確かだった。

村長は昔の伝手のおかげで安く買えたと言っていたが、それでも一年以上は遊んで暮らせるくらいの値段はしたはずだ。母がまだ生きていたら大喧嘩になっていた事だろう。

元を取るためにも、この馬車を使ってたくさん稼がねばならない。

-hotoke-

「みなさーん、ごきげんよう。ホトケ=ズヴェズダの移動販売車がやってきましたよ〜」

発掘現場に到着するや否や、ほとけは大声で叫ぶ。

ちょうど昼時だったこともあって、屈強な男たちがわらわらと馬車の周りに集まってきた。

一番人気はプフィッフェルリングだ。このキノコを狩人から買った鹿肉と併せて料理するのが今、モグラたちの間での流行なのだという。

あとはトラウベン。果実そのものよりも、それを加工して作ったお酒の方がよく売れる。これは村長の特性品でもある。

ほとけが商売をしているすぐ近くで、モグラたちが火を起こして料理を初めていた。

先ほどほとけから買った食材をさっそく、鍋に放り込んでいる。

やがて出来上がった料理が銅製のボウルに乗せられ、それを受け取った男たちはそのまま地面に座り込み、食事を始めた。

その頃には荷台の食材もほとんど無くなり、ほとけは後片付けを開始する。すると気のいいモグラの一人がほとけに近づき、スープの入ったボウルを手渡してきた。

おすそわけだ。ありがたくいただく事にした。

-hotoke-

(あ……)

そこで、スプーンが無い事に気が付いた。

モグラ1

「おおっと、すまんすまん。忘れてたよ」

先ほどスープをくれたモグラがスプーンを持って戻ってきた。

-hotoke-

「ああ、大丈夫ですよ、スプーンなら_____」

持っています、と言いそうになったほとけは慌てて口をつぐむ。

-hotoke-

「……ありがとうございます」

そう言い直して、スプーンを受け取った。

-hotoke-

(……ふう)

心の中で息を吐く。

あの青いスプーンを、彼らに見せるわけにはいかなかった。

実際、今日もモグラたちは食事をしながら、例の「森の魔女」についての話題に花を咲かせていたのだ。

モグラ1

「また森の魔女が『 白軍』の奴らを追い払ったらしいぞ」

モグラ2

「ざまあねぇな。おかげで最近は、この発掘場も平和そのものだ」

白軍というのは、この辺り一帯を荒らす蛮族たちの事だ。

全員が白い髪を持ち、炎を操る術を使う。

元は東方から来た遊牧民だったらしいが、古くから森で暮らしていた「森の民」といさかいを起こしていたのがきっかけで、やがて蛮族から変貌していった……そうほとけは、父から教わった。

白軍は何百人もの森の民を殺している。 それに彼らはここで発掘される遺物も狙っているようで、以前は何度も発掘現場も襲撃していたらしい。

とにかくこの地で暮らす者たちにとって、白軍は厄介な事この上ない存在なのだ。

森の魔女はそんな白軍を成敗してくれる正義のヒーロー……少なくともモグラたちは、そんな風にとらえているようだった。

モグラ1

「でもよう、白軍の恐ろしい術に、どう森の魔女は対抗してるんだ?ペックの奴なんか、あの白髪野郎どもが放った炎で大やけどを負ったんだぞ?ありゃあ死んでもおかしくなかった」

モグラ2

「なんでも、森の魔女はとんでもない雷の術を使うんだとか。それで白軍が火を放つ前に、一瞬で灰にしちまうって噂だ」

モグラ1

「炎と雷の戦いってか、そりゃすげえや。でもあんまりやりすぎると、森が跡形もなく無くなりそうだな、ハハッ」

ほとけはスープを飲み終え、食器をモグラたちに返却した。

そろそろ村に帰らなきゃ……そう思った矢先だ。

北の方から、大きな叫び声が聞こえた。

モグラたちと一緒にそちらを向くと、遠くで砂ぼこりが待っているのが見えた。

また声が聞こえた。一人じゃない、大勢の声。

モグラ1

「ありゃあ……白軍の奴らじゃねぇか?」

モグラたちがざわめきはじめる。

モグラ2

「マジかよ。ここを襲いに来たのか!?」

モグラ1

「いや……違うな」

白軍の集団たちは、別の何かと争っているようだった。

大きな影に向かって、一斉に火を放っている。

モグラ1

「なんだありゃ、巨人か?」

モグラの一人がそう言ったのを、ほとけは心の中で、違う、と否定した。

あれは……たぶん、自動馬車だ。

それもほとけが乗ってきたものよりも、ずっと大きな。

白軍に襲われ、それから逃れようとしている……そんな風に見れる。

-hotoke-

(助けないと!)

ほとけは馬車に乗り込み、捜査台の水晶に魔力を込める。

命を引き込まれた馬車は勢いよく反転した後、砂ぼこりの舞う方向に向かって走り出した。

モグラ2

「おい嬢ちゃん!やめとけ、危ねぇぞ!!」

背後から誰かの声が聞こえたが、それを無視してほとけは馬車を走らせた。

◎●◎

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