逃避行 ニキしろ

含みのある笑みで、シードは俺に近づいた。

どこまで気づいている、いつからバレていた？

焦りで口が回らない。

ただ、逃げなければと思っていた

肩を掴まれた。

好きだから俺はあいつから逃げたんだよ。

ねえ、ほんとに逃がしてくれんの。

誰にもなんにも言わずに、このまま地元で暮らしていけんの

触れている手が震えていた。

泣き出しそうな顔をしたシードを見ていられなくて、顔を伏せる

あ、こいつガチなんだ。

俺ってもしかしてちょーモテモテ？なんて頭のどこかで考える。 そうやって茶化していないとおかしくなってしまいそうで。

そんな、優しいだけの甘言に惹かれてしまうのは。 今の俺が弱っている証拠だと思った。

でも冷静に考えたってその提案は魅惑的で

悔しいほどにそうなってしまいたいと思うのだった。