宝来鈴
いでよ、我が清き鈴!
鈴を鳴らして現れたのは とても小さな鈴だった。
神楽鈴
まだまだね
宝来鈴
うぅ……頑張ります
術で作り出す浄化用の鈴は、 大きければ大きい程広範囲に 音を響かせることができる。
しかし、宝来鈴が作り出す鈴は まだ指先程の大きさだった。
水琴鈴
清き鈴さん出ておいで〜
和柄鈴
清き鈴、出てこい!
一方水琴鈴や和柄鈴が作り出す鈴は 手のひらに乗る程の大きさ。
彼女達と宝来鈴の力の差は 圧倒的である。
神楽鈴
意外よね
神楽鈴
ほうらいが一番
真面目にやってるのに
真面目にやってるのに
宝来鈴
うっ
何気ない神楽鈴の一言が宝来鈴の 心を容赦なく貫いたところで、 本日の修行は終わりを迎えた。
宝来鈴
はぁぁ……
宝来鈴は自ずとため息が出る。
そこへ声をかけてくる者が一人。
本坪鈴
ほうらいちゃん
宝来鈴
あ……神主様
本坪鈴
そんなに落ち込ま
なくても大丈夫よー
なくても大丈夫よー
本坪鈴
自分のペースで
進もうねー
進もうねー
宝来鈴
……ありがとう
ございます
ございます
神主である本坪鈴の励ましに、 宝来鈴は礼を述べるのが やっとだった。
彼女は俯きながら歩く。
同時期に鈴乙女としての 修行を始めた三人。
けれども宝来鈴は明らかに 置いていかれている。
暗い感情を抱いていた彼女の歩調は 次第にゆっくりになっていき、 遂に止まった。
宝来鈴
私、向いてないのかな
呟いた瞬間、黒い靄が 宝来鈴を覆う。
けれども既に暗い感情に 呑まれている彼女に抵抗する様子は 見えなかった。
宝来鈴(闇)
……そうだよね
宝来鈴(闇)
私に鈴乙女の資格なんて
最初から無かったんだ
最初から無かったんだ
自嘲するように呟いた彼女の瞳は 黒く濁っていた。







