「ただいま」の断罪

ザアアア アスファルトの上、青いビニールシート 風でめくられないよう、四隅は金属で押さえられていた。 ケーキの箱が転がっている。潰れて、開いて、いちごが落ちていた

───6年前 妹を殺した───

ジリリリリリリ！

ガバッ！ 勢いよく布団をどかす

鼻で軽く笑う

昨日までぎゅうぎゅうだったゴミ箱は 空っぽだった

結乃の家は全部がリビングにある。 2階は使っていない。

靴は揃えてあり砂がない。 まるで新築の様だ。

玄関、キッチン、お風呂、トイレ、 ベットの周辺も、全部全部…… 何一つ汚れてない

[死んだ人ってほとんどが 家に憑いてるんだって！]

コツン…… 階段からなにかが落ちてくる

もうずぅと使ってない2階。 使えない。[使いたくない] だって、2階は妹の部屋だから

[なにか]が結乃の肩を叩く

ばっ！ 勢いよく振り返っても 誰もいない。

中には当然誰もいない。

部屋は真っ暗。

──ピラッ

8月5日 天気 晴れ 今日はとってもあつかったです おばあちゃんの家のかき氷が とってもおいしかったです。

8月6日 天気 晴れ 今日はバレエがありました お姉ちゃんがチョコをくれました とってもあまくておいしいです。

8月7日 天気 晴れのち曇り 今日はかさを買いました お姉ちゃんはお花でした わたしはリボンです とってもかわいかったです。

8月8日 天気 晴れ 今日はバレエのやく決めでした お姉ちゃんは勇気の精で わたしは花のワルツです。 わたしの方が振り覚えれるのに。

8月9日 天気 晴れ 今日はバレエでした。 わたしは振りを覚えました お姉ちゃんはまだ覚えてません みんな覚えてるのにお姉ちゃんだけ なのになんでいい役なの。

8月9日 天気 晴れ 今日はお姉ちゃんとケンカしました なかなおりしたいです なので明日ケーキを買います とっても暑かったです

8月10日 天気 雨 今日はお姉ちゃんにケーキをわたします ちゃんとお手紙も入れました お姉ちゃん、えがおになって くれますように

8月10日は、あの子の命日。 私のせいで命日になってしまった。

8月11日 天気 雨

背筋が凍る。 冷や汗が流れる。

8月11日 天気 雨 お姉ちゃんはずぅとないています 学校を休んでました。 かわいそうです

8月12日 天気 晴れ お姉ちゃんがかわいそうです。 ずぅとずぅと泣いています わたしがとなりにいてあげたいです

8月13日 天気 晴れ お姉ちゃんは[つみ]をしたそうです お姉ちゃんみたいにみんなが 悲しくならないには わたしが止めないとです

8月14日 天気 晴れ わたしがお姉ちゃんのところに 会いに行きます。

ピンポーン

汗が止まらない 呼吸が苦しい 空気が重い 苦しい

それでも恐る恐る階段を降り スコープを覗く

キィ……

時が止まるように 全部が静まり返る

バン！

息が荒くなる 呼吸が苦しい

じりじりと後ずさる

妹じゃない。妹を。 自分の家に、招き入れてしまった。

断罪だ。

6年前、私は妹を殺した。