主
主
主
主
主
主
いふside
いふ
いふ
いふ
俺が用意しとるんはお菓子作りの材料
道具や材料は揃えてあるからこれで準備万端や
何故俺がお菓子を作ろうとしとるんか
それは日にちを考えれば明白や
明日は2月14日
そう、今日はバレンタインの前日なんや
いふ
ボウルにバターを入れて混ぜていく
クリーム状になるまで混ぜるらしいから、結構大変そうや
今回作っとるんはカップケーキ
工程がシンプルやから普段お菓子を作らん俺でも作れそうやからや
まぁ他にも理由はあるが一旦置いておこう
いふ
砂糖も加え、レシピの写真と同じような状態になった
次はここに溶き卵を加えていくらしい
いふ
いふ
いふ
卵を割って溶いていく
ダマにならへんように綺麗に混ぜていく
これをさっきにボウルに3回に分けて混ぜる
いふ
丁寧に一つ一つ作業を進めて行く
自分のために作るんやったらここまで慎重にやらへんやろう
そう、これは人にあげるために作っとるんや
その相手がほとけ
俺とほとけは恋人同士
バレンタインと言えば恋人にチョコを贈るもんや
カップケーキにチョコが入ってへんと思うかも知れんが、そこはちゃんと考えとる
チョコチップを混ぜてチョコカップケーキにするんや
いふ
粉を振るい入れ、しっかりと混ぜた
チョコチップも混ぜ終わったし、あとはカップに入れていくだけや
スプーンで溢れへんようにちょっとずつ入れていく
ここで失敗したら元も子もない
いふ
緊張からか腕が震えてきた
なんとか気持ちを落ち着かせて進めていく
いふ
なんとか均等に入れ終わることができた
あとは予熱しといたオーブンで様子を見ながら焼くだけや
ピッ
オーブンのタイマーが動き出したことを確認し、シンクの前へ移動する
時々様子を見ながら洗い物を進める
洗う量はそんな多くないが面倒くさい
やけど生地が付いとるから放置したら取れんくなりそうやから洗うしかない
コップぐらいやったら水に浸けて置いとくけどな
キュッ
考え事をしとるうちに片付けが終わった
暫くはゆっくりできる
いふ
いふ
ソファに腰掛け、一息つく
今のところカップケーキ作りが順調そうで安心や
無事に焼き上がることを願う
いふ
テーブルに置いてあったスマホを手に取ってレシピサイトを見る
バレンタインに因んだレシピがおすすめに表示される
クッキーやガトーショコラなどのチョコレートが主役なものが並んどる
カップケーキは初心者にもおすすめやと書いとる
俺も今回カップケーキを作った主な理由は失敗しにくそうやからやねんけどな
やけど、もう一個大きな理由がある
お菓子にはそれぞれ意味があるんや
例えば、バレンタインで定番のチョコレートは「あなたと同じ気持ち」
クッキーは「ずっと友達でいよう」
こんな感じや
中には特別な日に贈るのは避けたほうがええんもある
有名なんでいうと「関係がすぐになくなる」「あなたがキライ」っていう意味のマシュマロやろうか
そして今回選んだカップケーキにも意味がある
それが「あなたは特別な存在」
「永遠の愛を誓う」という意味があるマロングラッセは定番やけど、気恥ずかしい
それに手間が掛かるからとてもやないが作れそうにない
じゃあ買えばええと思うかも知れんが、バレンタインに手作りのお菓子を作るんが憧れやったんや
去年は手作りなんて重いかと思って、市販のを買って渡した
やから今年こそは勇気を出して長年の憧れを叶えるんや
いふ
そろそろ様子を見にいかへんと焦げるかもしれへん
それだけは絶対に嫌や
いふ
オーブンの中を覗くと半球状に膨らんだカップケーキが見えた
残り時間は3分や
焼き上がるまでずっと見張っとくことにする
ほとけにあげる時のことを考えると、今から緊張する
喜んで欲しいし、あわよくばカップケーキの意味に気づいて欲しい
きっとほとけのことやから喜んではくれるやろう
やけど意味に気づくかはわからへん
そもそもそれにはお菓子に意味があることをほとけが知っとるかが大きな問題や
無頓着な人は一生知らへんやろう
ロマンチストなら知っとるかもしれん
どちらかというとほとけはロマンチストな気がする
サプライズとか好きやし、記念日はしっかり覚えとるタイプや
でも、気づかれるんも気づかれるんで恥ずかしいな
気づいて欲しいくせに気づかれたら恥ずかしいなんて意味わからんな
ピー、ピー
オーブンから焼き上がりを告げる機会音が聞こえる
中から天板を取り出す
いふ
綺麗に焼き上がっとる
試しに竹串を刺してみると、生地がついてこない
ちゃんと火が通っとるみたいや
いふ
味見も兼ねて一つ食べてみる
ふわふわとした食感にチョコチップの味がアクセントになっとる
くどくない優しい甘さで美味しい
いふ
無事作ることができたことに安堵する
いふ
粗熱が取れたカップケーキを袋に入れていく
袋の上を彼を連想する水色のリボンで結ぶ
いふ
綺麗にラッピング出来たことに安心すると同時に、そのかわいさに惚れ惚れする
お店で売っているもの、とまではいかへんけど手作りの割には綺麗に仕上がったと思う
明日渡すんが楽しみや
ガチャ
いふ
今日はついにバレンタイン当日
イベントの日であろうと仕事はある訳で
仕事を終わらせて足早に帰ってきたおかげで早めに帰ってくることができた
いふ
ソファに座ると共にカバンからスマホを取り出す
某トークアプリを開き、彼の名を探してスクロールする
トーク画面を開き、メッセージを入力していく
いふ
ほとけ
ほとけ
いふ
ほとけ
いふ
無事に承諾を得ることができ、一安心する
早速ほとけの家に行く準備に取り掛かる
スーツのままもあれやから私服に着替える
暖かさも重視したいが、せっかく恋人と会うんやしオシャレしたいところではある
いふ
シンプルなニットにスキニーのパンツ
そこに厚手のコートを羽織る
まとまりがあるコーデになったように思う
カバンに貴重品とカップケーキの袋を詰める
いふ
いふ
気合いを入れながら、玄関のドアを開けた─────
ピンポーン
インターホンを押すと軽快な音を立てながら鳴り響く
冬の夜道の冷え込みに身震いしながら扉が開くのが今か今かと待ち浴びる
ガチャ
ほとけ
明るい笑みを浮かべながら俺を迎え入れてくれるほとけ
その姿を見て、やっぱり好きやなぁ…なんて思う
いふ
そんなことを思っとる自分が恥ずかしくなって家の中に足を進める
ほとけ
ほとけ
いふ
ほとけのリビングのソファに二人で腰掛ける
淹れてくれたお茶を口に運ぶ
いふ
いふ
冷え切った体に温かいお茶が沁み渡る
心まで温かくなっていく
ほとけ
いふ
ほとけ
いふ
ほとけ
いふ
いふ
カップケーキの入った袋をほとけに渡す
照れくさくて素っ気なくなってしまう
こんな時まで素直になれへん自分に少し嫌気が差す
ほとけ
いふ
ほとけ
ほとけ
いふ
目を輝かせながらほとけの顔を見とったら、嬉しくなる
自分が頑張って作ったものを喜んでもらえることがこんなに嬉しいなんて思ってもみんかった
この笑顔を見れたら俺はもう満足や
ほとけ
いふ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
いふ
それだけ喜んでもらえると、頑張って作った甲斐がある
誰かのために作るなんて滅多にせぇへんが、たまにはええかもな
ほとけ
いふ
ほとけが食べている姿を見るのに夢中で自分が食べるのを忘れていた
いふ
いふ
いふ
昨日一人で食べたものと同じなはずやのに昨日より美味しく感じる
甘味と食感をしっかりと感じる
好きな人と一緒に食べると更に美味しく感じるという話はホンマみたいや
ほとけ
いふ
ほとけ
ほとけ
いふ
その確認するような言葉に自分の思惑が全てバレていたことを悟り、 体温が上昇する感覚がする
心臓がドキドキと波打って止まない
自分の呼吸音と鼓動だけが反響しているように感じる
ほとけ
いふ
いふ
いふ
恥ずかしさでどうにかなってしまいそうになりながらことの経緯を話す
ほとけの顔を真っ直ぐ見れへん
ほとけ
ほとけ
ほとけに抱きしめられる
温かくて心地よいその感覚にずっと浸っていたくなる
身長差なんて感じないほどの安心感
いふ
ほとけ
いふ
ほとけ
いふ
驚いた
まさかほとけも俺にバレンタインのプレゼントをくれようとしとったなんて
ほとけ
いふ
確かにこの時期はバタバタしとって、俺も諦めようかと何度も悩んだ
一ヶ月ぐらい前から準備しとったからなんとか予定組むことができた
やから仕方ないように思う
ほとけ
ほとけ
いふ
ホワイトデーで何をくれるんか今から楽しみや
ホワイトデーはバレンタインより自由度が高いように思う
お菓子に限らず、物をあげることも少なくないと思う
ほとけ
急にこっちを向き直ったほとけ
びっくりしながらも俺も向き直る
いふ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
いふ
優しく触れるだけの口付けをされる
愛しそうに見つめるその瞳に飲み込まれそうになる
いふ
いふ
ほとけ
珍しく自分からキスをする
今日ぐらいは、素直になろう
バレンタインを口実に──────────
コメント
4件
書き方好きすぎます、、! フォロー失礼します!!
好きです…⸜❤︎⸝