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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

ガチャリ、とドアが開く音がして、しゆんさんが部屋から出てきた。 顔は既に生気が抜け落ちている。

ゆきむら。

ココア、飲む?

しゆん

…ん。

コクリと頷いたのを確認して、マグカップを二つ用意する。お湯が沸くのを待つ間に彼を盗み見ると、疲れた顔でスマホを眺めていた。

目が死んでる。

しゆん

…あ

そっと手からスマホを抜き取って、代わりにマグカップを渡す。彼の目の前にスマホを裏返して置くと、ちょっと驚いたような顔をして…また元に戻った。

絶対いつも何か無理してる。 そんなに僕は頼りないものだろうか。

ゆきむら。

しゆんさん。

しゆん

…?

彼がこちらを向く前に、思いっきり彼を抱きしめた。 親が小さな子供にするような、子供からすると苦しいようなやつ。

しゆん

…、…?!……!?!

肩に顔を埋めると、しゆんさんの匂いが僕を優しく包む。こうしたら、少しは話してくれると思ったけれど、流石に嫌…かな。

ゆきむら。

ごめん、嫌だったよね…?

そう言って僕が顔を上げたのと、手に生温い液体が落ちてきたのはほぼ同時だった。

しゆん

……っ、……っひぐっ…

ゆきむら。

ちょ、しゆんさんっ?!

我慢してたのか、しゆんさんの目からはとめどなく涙が溢れてくる。

しゆん

…ゆきむっ、おれ、だめなのかなぁっ…

しゆん

えごさとかッするとさ、しゆんの悪口ばっかながれてきてっ…

ゆきむら。

…うん。

しゆん

そんなに、みんなの理想になれてないのッかなぁ…!

泣き叫ぶ彼は今にも壊れてしまいそうだった。 ゆっくりと触れた背中は、なにかに怯えるように震えていた。

ゆきむら。

大丈夫、大丈夫だよ。しゆんさんはちゃんとやれてるよ。

しゆん

…ッ…しゆん、ちゃんとやれてる…っ?

ゆきむら。

うん。いつもかっこいいよ。大丈夫だよ。

しゆん

…っ…ううっ…うぅぅ…

しゆんさんはいつも誰よりも努力してて頑張ってるの、僕は知ってるんだから。

ゆきむら。

誰が何と言おうと、僕はしゆんさんの事、ずっと大好きだから。

しばらく背中をトントンしていると、静かな寝息が聞こえてきた。 疲れてたんだろうな。最近ずっと仕事だったみたいだし。

ゆきむら。

また、彼が心から笑ったところがみたいな。

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