放課後の図書室は、いつもより少しざわついていた。 外は急な雨。屋根を叩く音が、ページをめくる音さえ飲み込んでしまう。 ジウンは、窓際の席でゆっくりと本を閉じた。 鞄を開けると、朝から探していたノートがやっと見つかる——と思った瞬間、濡れた紙が指先に触れた。
ジウン
雨で濡れたのではない。 見覚えのない字が、ページの端に小さく書かれている。 “ごめん。踏んだのはわざとじゃない。” 心当たりは一人しかいなかった。 リッキー。 朝、廊下でぶつかってきて、何も言わず行ってしまった背の高いあの子。 そのリッキーが、図書室の入り口で立ち止まっているのに気づいた。 ジウンと目が合った瞬間、彼は少しだけ顔をそらす。 ——逃げる気なんだろうか。 ジウンはノートを持ち、ゆっくり席を立つ。 近づくにつれてリッキーの肩がわずかに強張った。
ジウン
リッキー
リッキーは一度だけまばたきして、短く息を吐く。 謝り方が不器用すぎる。 けれど、その声はどこか焦っていて、ジウンは少しだけ力が抜けた。
ジウン
リッキー
ジウン
ジウンが軽く笑うと、リッキーも一瞬だけ口元を緩めた。 雨音の中で、その小さな変化だけが妙に大きく響く。 沈黙のあと、リッキーが視線を落としたまま言った。
リッキー
思ったより、ちゃんと気にしていたらしい。 ジウンはノートを抱え直して言う。
ジウン
リッキー
ジウン
リッキーはゆっくりとジウンを見る。 深い目の色。雨に濡れた髪。 その一瞬だけ、目をそらしたのはどちらだったか分からない。
リッキー
二人は傘もささず、校舎を出た。 降り続く雨は強いのに、不思議と足取りは軽かった。 ジウンはまだ知らない。 この濡れたノートが、二人の関係の最初の“合図”になることを。
主
主
主
コメント
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機能わかんないのあったら私が教えてやるわ
色恋の...予感♡