テラーノベル
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教室の窓から差し込む光が、いつもより優しく感じた。
緑 。
緑が笑顔で挨拶をしてくる。
変わらない声。変わらない表情。
でも、私の返す笑顔は、少しだけ違っていたと思う。
桃 。
その言葉の裏には、もう"期待"も"願い"もない。
ほんの少し前までは、緑の笑顔がすべてだった。
あの人の目に映りたい、あの人の隣にいたい_
そんな想いばかりが胸を埋めつくしていた。
でも今は違う。
緑が笑ってくれるなら、それでいいと思える。
たとえその笑顔の理由が、私じゃなくても。
心臓は、まだ少し痛む。
緑を見るたびに、どこかがきゅっと締めつけられる。
だけど、それはもう"苦しみ"じゃない。
きっと、"大切だった"って証。
教室の隅で、橙と並んで話す緑の姿を見ながら、私は思った。
この恋は、私のものだった。
誰にも奪えない。 誰にも真似出来ない。 私だけの、たった一つの恋だった。
桃 。
声には出さなかったけど、心の中でそう伝えた。
好きになってよかった。
失恋して、苦しくて、それでも。
あなたのことを本気で想った日々が、私をちゃんと強くしてくれた。
放課後。
昇降口を出てふと空を見上げると、夕焼けが雲を赤く染めていた。
あの色に、私の私の初恋を預けて、そっと歩き出す。
君が笑うたび、心臓が痛い_でも、それが恋だったんだ。
[完]
コメント
5件
完結した~🥲🥲 まじで良すぎた!!もう比喩表現とか情景とか心情とか、言葉遣い上手すぎるし、辛さとかも伝わってくるし、感動したし、見習わないとなって思えた!! 本当にありそうな恋だからこそ、そう感じれるよね!! 私もあいみたいに上手く書けるよう頑張るね😎
完結おめでとうございます。冗談抜きでマジの涙が出ました。切なくて見てるこっちも悲しかったけど終盤の桃さん凄く人としてかっこよかったです。ありがとうございました。