コメント
7件
初コメ失礼します、 めちゃくちゃこっちまで泣きそうになりました、、 フォローも失礼します🙇♀️🙇♀️
フォロー&ブクマ&コメ失です!続きが楽しみです!✨
初コメ失礼します! 表現力とか言葉選びとか、もう全部神すぎます!!✨️ 嘔吐く表現ってすっごく難しいと思うのにほんとにリアルに表現されてて凄かったです フォロー失礼します!!
No.4 ストレス
嘔吐・過呼吸・青桃表現あり
るー様のコンテスト作品
きっと俺は究極の面倒くさがりやだ。
お腹が空いても食べることは面倒、髪は目にかからない限り切らないし、友達を作ることすら面倒だ。
そもそも人があまり好きじゃない。
一緒にいても自分を取り繕うだけで疲れるだけだ。
生きることって何でこんなに疲れるんだろう。
みんなどうせたどり着くのは死なのに何をそんなに頑張ったらいいんだろう。
"またないこはそう言うこと言って。みんなどうせ死にたどり着くからこそ、それまでの時間を一生懸命生きてるんやろ。"
俺とは正反対みたいなことをいっていた俺の恋人。
俺なんかみたいに捻くれてなくて夢に向かってまっすぐで優しい人だった。
こんな人とどうやって恋に落ちたかなんて俺だって全くわからない。
"ないこが別れたいっていうから別れたけど、その結果これはどうなん?"
その噂の元恋人に今詰められている
元恋人であり今は担任の猫宮いふに。
六月の蒸し暑い資料室、五畳半ほどの狭い部屋に男が2人、むさ苦しいったらありゃしない。
まろが教師を目指してたのは知ってたけどまさか俺の高校に赴任になるとは思ってなかった。
ま、あっちも名簿を見て自分の恋人の名前があるんだからびっくりしただろう。
俺も自分が行ってる高校の名前までは教えてなかったし。
入学して担任が夏だって知ってからすぐに自分から別れを切り出した。
俺はまろから別れたい、なんて言われたら耐えられないし、先生と生徒の恋愛なんて成功するわけがないんだから
ましては俺たち男だし。
答えはどちらとも否、だ。
でも、もう普通の先生と生徒なんだから勘弁して欲しい。
俺が食べてようが寝ていようが先生には関係ないし。
嬉しいくせにそうやって心に言い聞かせる。
下を向くと少し屈むようにして目線を合わされた。
相変わらず悔しくなるぐらいにイケメンだ。
これじゃあ女子生徒に騒がれているのも納得できる。
ヘラっと笑うと厳しい顔をされた。
相変わらず心配性だ。
そういうと、時計を見て渋いような顔をしたまろ。
ちょうど4時間目始まりを知らせるチャイムも鳴る。
先生が話終わる前に資料室のドアを閉める。この後の授業は確かLHR。
つまりどうせ担任であるまろとも向かう先の教室は同じだ。
気まずいのでひと足先に教室に向かって席につく。
それにしても暑い。
うちの学校はSDGsだかクールビズだかにかこつけて全ての教室のエアコンの設定温度は28度以下には下がらないようになっている。
第一の理由はお金がないんだろうとこのオンボロ校舎を見ればわかるけど。
それなくせして職員室は寒いぐらい冷房が効いてるんだから大人はやっぱりずるい。
もともとボロいエアコンのせいで28度まですら下がり切っていない教室に30人もの人がひしめき合えば湿度も高くかなりの暑さになる。
だから室内にいたって熱中症者が続出すんだよ。
教室のドアを開けるとムアッとした何とも言えない人の匂いが漂う。
別に臭いとかじゃないけどとにかく暑苦しい。
息がしにくいような感覚だ。
友人と呼べるのかも微妙な隣の席の××と会話を交わす。
完全に1人で孤立するよりも数人と浅く付き合う方がずっと簡単だ。
本鈴がなってみんな渋々と席に着き始める。
さっき別れたばっかりのまろも教室に入ってきた。
どうせ体育祭に関するLHRだ。
俺はなんの関係もない。
黙って顔を伏せた。
俺は小さな頃から人よりも環境に適応するのが苦手だった。
新しい環境になると必ずと言っていいほど体調を崩すし、自分の安心要素がなくなるとすぐに不安でたまらなくなる。
病院なんかに行ったらもしかしたら病名がつくかもしれない。
そんな俺にとって高校生活が始まったばかりの今、安心材料のまろを失ったことはかなり体に応えている。
それでもきっと自分から手放す方が、失ってしまうよりもきっと楽だ。
まろから別れてほしいなんて言われて仕舞えばきっと俺は生きていけない。
だが今、困ったのは体が食べ物を一切受け付けなくなったことだ。
食べ物を口に入れた瞬間味を感じる間もなく気持ち悪くて吐き出したくなってしまう。
もはや食べ物を想像するだけで気分が悪くなる。
水やゼリー、高栄養クッキーで誤魔化しながら生活してきてもうかれこれ2週間、そろそろ何か食べないとやばいだろう。
昼休み、騒がしくなった教室から逃げるべくさっさと自分の荷物をまとめる。
形だけだが水筒と弁当も手にしていつもの場所へ。
教室から少し離れたところにある元生徒指導室だ。
今は使われなくなって埃をかぶってはいるものの2つの机が並ぶだけの質素な小さな部屋は俺のお気に入りだ。
手首をパッと掴まれ教壇の前で足止めを喰らってしまう。
周りからは揶揄われて勝手に顔に熱が集まる。
逃げようにも左手がガッチリ掴まれていて逃げられない。
しかもまろは顔色ひとつ変えない真顔だ。
無言で手を引かれたまま歩き続け別校舎に移動する。
こいつ、どこまで俺を連れて行く気なんだろうか。
たどり着いたのは英語教室。
俺たちがいつも英語の授業で使う部屋だ。
言うまでもなくまろは英語教師で俺らの教科担当だ。
そんなこと言われて素直に座れる俺でもない。
黙ってドアの前に立ち続ける。
わざわざここまで呼び出して一緒に昼を食べよう?
何を話し出すかと思えばそれ?
呆れて言葉も出ない。
あー、馬鹿らしい。
さっさと教室にでも帰ろう。
…生徒、だって。
まろは顔もいいし簡単に次の恋人ができるんだろう。
俺はまろがいなくなってこんなになってるのにまろは相変わらずの涼しい顔だ。
これ以上まろの顔を見ていたら自分がもたないような気がして、後ろ手に引き戸を開ける。
自分から生徒だって言って線引きしたくせに。
そうやって変に俺に踏み込んで、心をかき乱してくるんだ。
そう言った瞬間まろの顔が悲しそうに一瞬曇った。
自分から、俺に踏み込んできたくせに、勝手に被害者みたいな顔すんなよ。
そんなまろの言葉にドキッとする。
嬉しい、望んでたことなはずなのに、全然嬉しくない。
もはや冷水を浴びせられたような気分だ。
…ッ、なんなんだよ、
結局聞いてくるのは俺にとってどうでもいいことばかり。
都合がいい時ばっかりそうやって、先生と生徒じゃないって言う。
まろは、何を思ってるの?
何で俺に関わってくるの?
咄嗟にまろから目を逸らすと棚のガラスに映った自分の顔。
普通のいつもの顔だ。
なんでっ、いつもまろはこんなに分かってしまうんだろう。
反射し映った自分の顔が少し歪む。
俺だけ熱くなって、まろは相変わらず優しくて冷静。
それがどうしようもなくムカつく。
まろといると、苦しくなる。
こんなふうに真っ直ぐに考えられて、優しく生きられる人もいるんだって苦しくなる。
自分が汚いような気分になる。
最後最後ってさっき言ったくせに。
それでもまろの気迫に嫌、と言うこともできずされるがままに椅子に座る。
久しぶりに聞いたまろの真面目なちょっと怒ったような声。
もうまろの機嫌なんか伺う必要ないのにその声を聞くと喉がギュッと詰まった感じになる。
まろはコンビニの袋から唐揚げ弁当を取り出す。
俺も自分の包みを開けるといつも母さんが用意してくれる普通の二段弁当。
仕事が忙しくて滅多に家にいないくせにいつも弁当だけは用意してある。
久々に見た弁当は綺麗に盛り付けられていて、いつも食べずに捨てていたことを少し申し訳なく思った。
相変わらずまろは綺麗に箸を使う。
俺も箸を取り出してハンバーグをとりあえずつかんだ。
久しぶりに口にするまともな食べ物。
まだ何も口に入れてないのに唾液が溜まる。
まろも唐揚げを食べながらこっちの様子を伺っているのが分かる。
ハンバーグを見ているだけで嫌な感じが腹から湧き上がってきた。
自分で一緒に昼食おうって言ったくせに。
むかついてハンバーグを勢いよく口の中に入れる。
ゆっくり噛むと、弁当ならではの少し固まった脂の味がしたような気がした。
すぐに吐き出したい衝動に駆られるのを無視して咀嚼を続ける。
飲み込んだらそのまま逆流してくるような気がしてハンバーグがただの肉の塊になるまで噛み続けた。
…気持ち、悪いかも。
いくら噛んでも喉の手前で飲み込めないハンバーグ。
飲み込もうとすると胸の辺りから何かが込み上げてくる感覚がある。
目の前に数枚のティッシュが差し出される。
その時に素直に吐き出せばよかったのに意味もなくそれをしたくない。
胸から込み上げてくる吐き気を無視してハンバーグを喉の奥まで押し込んだ。
胃が痙攣してそれに伴って肩がヒクヒクと動く。
気持ち悪い。
それしか頭に浮かばない。
口の中が吐く前の独特の味のする唾でみたされる。
何度も喉にハンバーグが込み上がってくるのがわかった。
もうまろに反抗なんて考えられるわけもなく、袋を口に強く当てた。
まろに背中が波打つタイミングで強く背中をさすられる。
口まで胃のものが込み上げてきたものを咄嗟に飲み込む。
苦しくて、気持ち悪くて、泣きたくなる。
まろがなんか俺に向かって言ってたけどただの意味をなさない音、だ。
もう、はきたいのに、はきかたがわからない。
胃はヒクヒクして、物を出したがってるのに、喉の真ん中をずっと行き来している。
ゲップみたいな汚い音がずっと自分の喉からなる。
いきをするたびに、いがビクビクするからうまく、いきが、すえないッ、もう、はきたい、のにッくるしい、くるしいッ、
もう、くるしくて、きもちわるくてしょうがなくて、これからかいほうされるならなんでもよかった。
頭を下に向けさせられて吐き気が強くなる。
胃の辺りを思いっきり押された瞬間さっきまで出てこなかったのが嘘かのように熱いものが喉を込み上げてきた。
吐いても吐いても胃が痙攣してきて、込み上げてくる熱いものにただひたすら気持ち悪い。
袋に質量のあるものがどんどん溜まっていく。
しばらく吐き続けて袋が重いのにまだ気持ち悪い。
頑張って胃に押し込んだ栄養がどんどん口から出ていく。
もう吐くものもないのにまだひくひくする胃。
気持ち悪くて辛くて涙が出てくる。
はいてー……すって、はいてー……すって
まろの声に合わせて息をゆっくり整える。
今更まろの青白い顔と額に滲んでいる汗が目に入る。
まろはそんなにおれのこと、しんぱいしてくれたの?
しんぱいでかおがしろくなるぐらい?
足に力を入れて立ちあがろうとするとまろにグッと手を掴まれた。
そう言われて一応試したものの、足がプルプル震える。
立つことはともかく歩くことは無理そうだ。
歩いてる途中にこけて他の生徒に笑われる自信がある。
まろがたまにするニヤッとしたいたずらっ子みたいな笑い方、好きだった。
諦めて目の前の広い背中に飛びつく。
よいしょ、と言いながら、ゆっくり立ち上がったまろ。
もう、こんなの、いやだ。
まろの一挙一動に好きだっていう気持ちが湧き上がる。
赤くなった耳を隠すためにまろの肩に顔を埋める。
ほんのり香る香水はずっと変わらない。
ちょっとだけ甘い優しい匂い。
クスッと笑ったまろの声が耳元で響く。
まろの背中はいつも大きくて暖かくて優しい。
おわり