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たまたま緑色のカトラリーセットを持って来ただけなのに、もしかしてNがテヒョンなんて考えてしまうのは随分早とちりというものだ。
何十年と生きてきた中で、こんな特殊なメッセージのやり取りが勿論初めてでちょっと神経過敏になってる部分がある。 しょうがないといえば、しょうがないけど。
でも兎に角テヒョンは番号を変えてないし、それならテヒョンではないのは明らかだ。 それに、例えば番号を変えてたとして、テヒョンがあんな回りくどいやり方をするかって。
もう何年も幼馴染みで、しかも好きにさせるって。 テヒョンが?いやいやそんな事ーーー
ジミン
今日は割と暇で少し早めに昼食にしようと、冷蔵庫から持参したサンドイッチを取ろうとした矢先。
ホソク
ジミンがやって来た。 黒いバケットハットを深々と被っているが、今日はマスクをしていない。
ホソク
ジミン
テヒョンと同じく欠伸をしたジミンだが、手で軽く口を覆っていた。 頭身にミスマッチな可愛らしい手にシルバーの指輪がいくつか付いている。
ジミン
しばらくしてからそうジミンが言ったから、直ぐに準備に取り掛かろうとしたのだけれど。
ジミン
それよりも早くジミンが言葉を続けてコーヒー作りは後回しだ。
ジミン
ジミン
何を見てなのかと思えば、ジミン自身が着ているニット。 裾のあたりを持って少し広げてデザインを見せてきて、そのニットの色が
ホソク
ホソク
鮮やかな緑色だ。 だからうっかりジミンの質問に答えてあげられず、逆に俺が質問してしまった
ジミン
でもジミンはそれを気にする様子もなく、ニットから手を離すとカウンターに両手で頬杖をついて
ジミン
ジミン
愛嬌のある笑顔で小聡明あざとい台詞をさらりと口にした。 こういうジミンに不覚にも多少ドキッとさせられてしまう事を、ジミンは知る由もない。
ホソク
ジミンのその質問を今度は敢えてスルーして、いよいよコーヒーの準備に取り掛かった。 そうしながらもジミンに話しかけた理由は、勿論テヒョンと同じ理由。
ホソク
テヒョンでもジミンでもなくても構わない。 でも、とりあえず聞くだけでも可能性の有無くらいは把握できるというものだ
ジミン
ジミン
ジミン
ホソク
ホソク
テヒョンみたいに"なんで?"と聞かれる前に嘘八百を並べながらコーヒーをカップに注ぐ。 ジミンが独り言のような小さく短い言葉を何か言ったけど聞き取れなかった。
そうこうしてるうちに氷をたっぷり入れたアイスアメリカーノが出来上がって蓋をして。 それとほぼ同時くらいにエプロンのポケットの中の俺の携帯が鳴った。
確実に着信だったのだけれど、すぐに切れてしまって
ジミン
ジミン
ジミンが自身の携帯を顔の横で軽く振って見せた。 だからコーヒーをジミンに渡した後で、その言葉に従って携帯を確認すると確かに"ジミン"と着信表示があった。
とすると、ジミンでもないという事だ。
ジミン
コーヒーを片手に持ったジミンがカウンターから身体を起こして、緑色のニットがよく見えるようになった。
ジミン
ジミン
ホソク
ここでしょっちゅう会うけどね、と思ったけれどジミンの優しい言葉をそのまま受け止める事にした。
ジミン
ジミン
柔らかい笑顔のまま店のドアを押したジミンだったが、'あ'なんて少し大きい声を出して振り向いて
ジミン
やや険しい顔で言って出て行った。 女の相談ならわかるけど、なぜ男? とにかくNの事はジミンにも言えなくなってしまった、という事だ。
テヒョンもジミンもやっぱり番号の変更無し。 親しい人の中に当てはまりそうな人物がいないなら、ほぼ面識のない人という可能性が高くなる。
でも納得出来ない矛盾点がある。 俺の電話番号の入手だ。
今のところネットにも載せていないし、お店の何処かにも掲載はしていない 載せた方がいいのかと思った事もあるが、載せないかわりにお店の事はSNSで発信してるから必要がないと判断した。
質問はSNSのDMで来るし、別段お客さんから連絡先がないから不便だとか言われた事もない。
昼休憩の多忙のピークを過ぎた時、見ても意味がないのだけれどNからのメッセージを見返した。 番号だけじゃなくて俺の名前も知っている。 普通のお客さんなら俺の事を"店員さん"って呼ぶから名前は知らないのに。
一体この人は誰なんだろうーーー 辿り着く疑問は必ずそこだ。
グク
Nからのメッセージを読み切った時に、ジョングクがドアを勢いよく開けて入って来た。 その手にはビニール袋があって
グク
なんて差し出すから、俺もそれで'あ!'と。
ホソク
ホソク
冷蔵庫の中のマカロンだ。 ジョングクからビニール袋に入った何かを貰って、またマカロンを渡す羽目になるとは。 N探りに夢中ですっかり忘れていた。
ジョングクは俺が渡した紙袋を、俺はジョングクに貰ったビニール袋をお互いに覗き込んだ。
グク
グク
ホソク
ホソク
グク
ジョングクが持って来てくれたのは、最近近くに出来た洒落たドーナツ屋のドーナツだった。 ちゃんと一個だけってのがありがたい。
紙袋をまだ覗いてるジョングクの口はマスクで覆われていて見えないが
グク
そう呟いたくっきり二重の目は目尻がやや下がっていて、確かに微笑んでいるんだと分かった。