第1話~優衣編~
中学1年生の優衣は、放課後、校門の前で友達を待っていた
優衣
あ、美優!こっちこっち!

美優
優衣~遅くなってごめんね!

美優
委員会が長引いちゃって

優衣
全然大丈夫だよー帰ろー🎵

美優
ねーねー優衣って隼人のこと好きなんだよね?

優衣
う、うん!

美優
告白とかしてみないの?

優衣
こ、告白なんて絶対無理だよ!

優衣
それに…

優衣
小学校でクラスが一緒だったのは1回だけだったからだから

優衣
隼人くんは私のこと、なんとも思ってないよ

美優
大丈夫だよ!優衣ならいけるって!
小1のときから頑張ってきたじゃん!

美優
今年はせっかく同じクラスになれたんだし、
勇気だして告白するチャンスだよ!

優衣
そ、そうかなあ

優衣
じゃあ私、告白してみる…!

優衣
隼人くんに気持ち伝えてみるね!

美優
うん!優衣なら大丈夫だよ!

美優
頑張れ!

優衣
うん!美優ありがとう!

優衣
じゃあまた明日ー!

美優
ばいばーい!

第1話~隼人編~
委員会が終わり、教室から出ていく生徒達を見ながら
席を立ち上がった隼人は、夕陽で赤く染まっていく廊下に出た
隼人
あー委員会長かったなー

廊下を歩いていると、窓の外から聞き覚えのある声を聞き、窓に近寄った
隼人
あれは…優衣?

校門の近くでクラスメイトの優衣が美優に手を振っているのが見えた
優衣
あ、美優!こっちこっち!

美優
優衣~遅くなってごめんね!

隼人の目に、笑顔で美優に手を振る優衣の姿が目に入った
隼人
優衣って…

隼人
あんなに可愛かったっけ…?

裕希
隼人!おい!

隼人
うわっ!

裕希
うわっじゃねーよ!

隼人
なんだ裕希か。どうしたの?

裕希
どうしたのって、一緒に帰る約束してたじゃん!

隼人
あ、そうだった

裕希
忘れてたのかよ~
ずいぶん待たされてたんだからな

隼人
ごめんごめんw

裕希
で、何見てたんだ?

隼人
いや!何でもねーよ!

裕希
窓の外になんかあんのか?

隼人
うあああ!何でもねーよ!それよりはやく帰るぞ!

裕希
なんかあやしーな…

隼人
なんもねーよ!

隼人
(あぶねー…裕希に好きな人がバレるとこだった…それより、優衣、可愛かったな)

裕希
ん?隼人、顔赤いぞ?大丈夫か?

隼人
ばっ!い、いいからはやく帰るぞ!

裕希
お、おい!待てよ!

第2話~優衣編~
美優と分かれてから1人で歩いていた優衣は、告白の練習をしていた
優衣
好きですっ付き合ってください!

優衣
ん~なんか違うなー

優衣
ずっと前から好きでした!付き合ってください!

優衣
これも何かな~

優衣
どうしよう~なんて言えばいいのかな…

優衣
あ!これなら!

優衣
隼人くんのことが、ずっと前から、、

優衣
(え?)

でも、身体に激痛が走り、赤く染まっていく地面と遠ざかっていくトラックが
視界の隅に見えたところで、優衣はようやく理解した
優衣
隼人くん…

第2話~隼人編~
自分の部屋のベットに横たわっていた隼人は、さっきのことを思い出していた
隼人
何であんなに可愛い子が近くにいたのに、
今まで気がつかなかったんだろう

隼人
笑顔、可愛かったなー

隼人
優衣のこと、もっと知りたいな

隼人
もっと仲良くなって、ちゃんと優衣のことを
知れたら告白しよう!

母
隼人ー、夜ご飯できたから下りてきなさーい

隼人
はーい

隼人
明日、優衣に話しかけてみよう!

隼人
🎵

隼人は鼻歌を歌いながら一階に下りていった
遠くの方から、救急車のサイレンの音が聞こえてきた
第3話~優衣編~
気がついたら優衣は、いつもの通学路に立っていた
優衣
…あれ?私、何でこんなところに…てか、もう朝?

優衣
学校から家に帰ってたはず…うーん

優衣
とりあえず、家に帰ってみよう。何かわかるかもしれない

家に向かっている途中に、横断歩道の近くに人だかりができていた
近所の人達
可哀想にね…

近所の人達
これからやりたいこと、たくさんあっただろうに…

優衣
ん?なんだろう

近寄ってみると、道路の脇にたくさんのお菓子やジュース、花が置かれていた
その近くの地面は、まるで何かを落としたかのように黒い染みがついていた
優衣
こんなにお供えものがある…

優衣
誰かが亡くなったのかな……

優衣は家に行く途中だったことに気がつくと、手を合わせてから
再び家に向かって歩き出した…
第3話~隼人編~
隼人が朝、ホームルームギリギリで教室に着くと、
クラスメイトの様子がおかしいことと、
優衣がクラスにいないことに気がついた
隼人
おはよー、なぁ優衣は?

クラスメイト
隼人っヤバイよ!優衣さんが…

先生
皆さん!自分の席に戻ってください

先生
今日は皆さんに大事なお話が、

クラスメイト
せ、先生!優衣さんが亡くなったって、ほんとですか⁉

隼人
え?

クラスメイト
ほんとなんですか⁉

先生
……優衣さんは昨日の放課後、家に帰る途中に…トラックに…ひかれ…て…………

美優
う、嘘…

裕希
嘘だろ…

隼人
優衣…

先生
先生は今から優衣さんの親にお話に行くので、今日は1日自習です

隼人
嘘だ…優衣…優衣…

先生が出ていった教室の中は、誰も喋ることなく、
ホームルームの終わりを告げるチャイムが虚しく鳴り響いた
第4話~優衣編~
家に着いた優衣は、玄関のドアを開けて家の中に入った
優衣
お母さん、いる?

母
優衣…?優衣なの?

優衣
お母さん!ただい…

母
あれ?今ドアが開いた音が聞こえたのに…誰もいない…

優衣
お母さん?私、いるよ?

母
優衣が帰ってきたと思ったのに……優衣…

優衣
お、お母さんっそういう冗談はやめてよ…びっくりするからさ

父
どうしたんだ…お母さん

優衣
お、お父さん!

父
こんなところで…何があった

母
優衣が、帰ってきたと思ったのに…

父
優衣が帰ってくるはずないだろう…

父
優衣はもういないんだから…

母
優衣…帰ってきて…優衣…優衣…

優衣
お、お父さん?お母さん?いないって、何?私、ここにいるじゃん!

先生
おじゃまいたします

優衣
せ、先生!

母
優衣の担任の先生…

先生
この度は、本当に、悲しい事故で…

優衣
先生まで、どうしちゃったの…?

優衣
…事故?

先生
これ…どうぞ…優衣さんの好きだった花です

母
まあ…ありがとうございます…あの子も喜ぶと思います

先生
今日は、優衣さんのことで、お話に来ました

父
こちらにどうぞ…

優衣
な、なんなの?みんなして…

優衣
っ…

優衣
もしかして、さっきの横断歩道のところのお供え物って…

優衣
ハァ…ハァ…着いた…

道路の脇には、お供え物がたくさんある
その中には、亡くなった方への手紙もあった
そっと、その手紙を手に取る
優衣
‼

手紙の入っている封筒に、
「○○優衣さんへ」
と、自分の名前が書かれていた
優衣
嘘でしょ…そんな…

優衣
うっうっううっ……

第4話~隼人編~
1回目の自習時間(1時間目)が、とくに何の合図もなく終わった
隼人
な、なんで優衣が…

美優
ねえ、隼人

隼人
何…美優…

美優
優衣のことなんだけど…

隼人
…

美優
昨日私が、家まで優衣のこと、送っていけば、優衣は死なずにすんだよね…

隼人
お前のせいじゃねーよ

美優
優衣…ごめんね…ごめんね……優衣…

隼人
…

隼人
お前のせいじゃねーから…気にすんな

美優
うぅ…優衣ぃ…

隼人
…

第5話~優衣編~
ようやく泣き止んだ優衣は、涙を拭いて立ち上がった
優衣
泣くだけ泣いたっ

優衣
もう泣かない

くしゃくしゃになってしまった手紙を元の場所に置いて立ち上がった
優衣
あっ…

ふと下を向くと、足のくるぶしから下が消えかかっていた
優衣
私、ほんとに死んじゃったんだね…

また溢れてきそうな涙をぐっとこらえて優衣は前を向いた
優衣
よし!私は、

優衣
今しなきゃいけないことをやらないとっ

第5話~隼人編~
隼人は、優衣の机の前に立っていた
隼人
もう…何でこんなことになったんだよ…

隼人
優衣…戻ってきてくれよ…

美優
隼人っ

隼人
美優…

美優
さっきはごめんね、急に泣いちゃって

隼人
ううん、大丈夫…
こっちこそなんも言えなくてごめんな

美優
隼人は慰めてくれたから…ありがとう

隼人
…優衣、ほんとに死んじゃったのかな…

美優
…優衣ね、隼人のことずっと好きだったんだよ

隼人
え、そ、そうなの!?

美優
うん。昨日、明日告白するって、言ってたんだよ

美優
優衣、小学生のときからずっと隼人のこと想ってたんだよ

隼人
そんな…

美優
好きなのに、1年生の時以降は同じクラスになれなくて、
アピールしても振り向いてもらえなくて、すっごい悩んでた

美優
好きな人のためにこんなに頑張れるなんて、この子はほんとにすごいなぁって、
いつも横で思ってた

隼人
…

美優
それがもう、隼人のそばにいることもできないなんて…

隼人
ごめん

美優
え?

隼人
俺が、もっとはやく、優衣の気持ちにきづいていたら…

隼人
ごめんな、優衣…

美優
…

隼人
戻ってきてよ…優衣…

優衣
やっぱり、無理かな…

優衣
死んじゃった人に告白されても迷惑なだけだよね…

優衣
でも…

優衣
やっぱり、このままじゃ駄目だよね

優衣
ちゃんと気持ち、伝えなきゃ!

優衣
よしっ

優衣
隼人くんっ

隼人
誰⁉

隼人
えっ⁉ゆ、優衣?!

隼人
な、なんでここにいるの?!

優衣
隼人くんに会いに来たの

優衣
ずっと、会いたかった

優衣
でね、隼…

隼人
優衣!!今までどこに行ってたんだよ!心配してたんだぞ!

優衣
隼人くん…

隼人
俺、優衣のことが好きだ!もう絶対離さないから!
だから…もうどこにもいかないで…ずっとそばにいて…

優衣
ありがとう、隼人くん…

優衣
でも、ごめんね

優衣
私もう、死んじゃったみたいなの…だから…
隼人くんとずっと一緒に生きていくのは、できない

隼人
そ、そんな…あっ!

隼人
ゆ、優衣、足が…

優衣
あぁ…そっか…もうお別れか…

隼人
ゆ、優衣!

優衣
隼人くん、今まで私の好きな人でいてくれてありがとう

優衣
隼人くんのこと、大好きでした

隼人
行かないでっ!俺とずっと一緒にいて!

隼人
優衣がいなくなるなんて、そんなの無理だよ

優衣
泣かないで、隼人くん

隼人
ずっと一緒にいて…

優衣
隼人くん

優衣
私はずっと、隼人くんのそばにいるよ

優衣
だから、見ること、触れることはできなくても

優衣
隼人くんを想う気持ちは変わらないから

隼人
優衣…

隼人
俺も、優衣を想う気持ちは、絶対に変わらないから!

隼人
優衣の分まで、生きるから、俺のことずっと見守っててください!

優衣
うん!

きえてしまった優衣を最後まで抱き締めた隼人は、
抱き締めたままの姿勢で泣き崩れた
隼人
優衣、大好きだよ
