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母親というものが
どんなものなのか
私は、よく分からない
ただ子供は親を愛して
信じるしか無いものだと思っていた
たとえ
その親が自分のことを見ていなくても
たとえ
何度置いていかれても
それでも帰ってきたら『おかえり』と言う
それが子供にできることなんだから、と
そう言い聞かせていた
私の母親は昔から
男の人が途切れたことがない
綺麗な人だった
今でも、街を歩けば振り返られるくらいには
男の人に褒められるのも
好かれることにも慣れていた
新しい男の人ができると、母は家を空ける
何日も帰ってこない日があった
帰ってきたと思えば
見た事のない服やバッグを持っている
お母さん
お母さん
嬉しそうに笑う母を
私はいつも黙って見ていた
お母さん
お母さん
そういって私にも何かを渡してくる
高そうな服だったり、アクセサリー
時には封筒に入ったお金だったり
果たしてそれが愛なのか
私には区別がつかない
渡された手前『いらない』とは言えなかった
母がくれたものだから
でもその男の人と別れると
母はまた帰ってくる
玄関が開く音がする
靴を脱ぐ音
そして、泣きながら私の部屋に入ってくる
お母さん
ベッドに座る母の隣に
私は黙って座る
お母さん
〇〇
何度言ったか分からない
〇〇
そういうと母は私を抱きしめる
その時だけは
母親が私だけのものになった気がした
でも数週間もすればまた新しい男の人ができる
そして母はいなくなる
その繰り返しだった
私はそんな母親を
好きなのか嫌いなのか分からない
嫌いだと思うことはある
どうして私を1人にするの
どうして私ばかり頼るの
どうして
私よりも男の人を選ぶの
何度も思った
それでも、母親が帰ってくると安心した
だからきっと
私は母親が好きなのだ
子供は親を愛して
信じるしかない
それがどんな親であっても
私はそうやって、十八歳になった
学校ではあまりしゃべらない
友達がいないわけではない
ただ、大勢で騒ぐのが苦手だった
休み時間は本を読んでいることが多い
放課後になると
私は真っ直ぐ家には帰らない
図書室に寄る
誰もいない席に座って
鞄から原稿用紙を取り出す
鉛筆を握る
頭の中に浮かんだ言葉を
ひとつずつ紙に置いていく
小さい頃から
これだけは好きだった
母が家を空ける夜
まだ小さかった私は
ひとりで家にいるのが怖かった
そんな私に母が渡してくれたのが、1冊の小説
『これ読んで待ってて』
母はそう言って出ていった
最初は寂しさを紛らわせるためのものだった
でも
読み始めると止まらなかった
知らない世界
知らない人たち
私のいる場所とは全然違う人生
本を閉じた頃には外が明るくなっていた
それから私は本を読むことが増えた
いつしか、自分でも書いてみたい
そう思うようになっていた
誰かが作った世界に逃げ込むだけじゃなくて
私も
誰かの夜を少しだけ
忘れさせるようなものを書きたい
それが私の夢になった
『小説家になりたい』
1度だけ母に話したことがある
お母さん
お母さん
母は笑っていた
〇〇
お母さん
お母さん
〇〇
お母さん
お母さん
何も言えなかった
母の言ってることが
間違っているとは思わなかった
小説家になれる保証なんてない
売れる保証もない
それでも私は書いた
母が帰ってこない夜も
母が誰かと喧嘩をしている夜も
何もすることがない休日も
家の中に私しかいない時
私はいちばん自由だった
だから私は書く
十八歳
高校三年生
夢は小説家
それ以外は、まだ何も決まっていない
この先
自分がどんな人生を歩くのかも
誰を好きになるのかも
何を失うのかも
十八歳の私は
何も知らなかった
コメント
2件
岩泉のストーリー始まった‼️😃 まだハイキューキャラ出てきてないけど 1話の時点で主人公の家庭環境が凄いってわかった👍🏻🤍
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