声優を辞めてからは
「生きなければいけない」
そのプレーシャーだけが俺を襲っていた
日本にあった本当の家はもう取り壊されていて
ネカフェで生活する日々が何日も続く
金自体は払っていてもニートとなったのは事実だ
通りすがる多くの人に嫌がられた
だけど一人だけは違ったんだ
いつも通りボーとしていると水色髪の高校生っぽい人に声をかけられた
「あの~」
「その本取って欲しい…です!」
初対面なのに凄いコミュ力
なんて思いながら渡してやると
表情が一気に明るくなって喜んでくれた
そのまま話していくうちに段々と仲良くなって
頻繁に会う仲になった。
そいつは「水」と名乗った
俺も合わせて「青」といった
話していくうちにお互いの過去についても触れる事が多くなってきた
俺の話を水は丁寧に聞いてくれた
そして優しい声で「頑張ったね」と褒めてくれた。
だけどそれと同時に
「勿体ない」
そう言った
帰国子女だとしても英語を話せるのは凄いことだよ
青くん…諦めちゃダメだよ。 僕も頑張るから…ね?と。
水に背中を押された俺は
TOEICという英語の試験を受けた
結果は満点。
水に報告すると自分の事のように喜んでくれた。
満点の実績
それだけで大手企業からも推薦を貰えて
俺はその会社に就職する事になった
声優時代に稼いだ金で家も建て
必要最低限の生活も出来るようになった
だけど
やっぱり一流企業。責任が重い仕事を任せられた俺は
ネカフェに行く頻度が減ってしまった
水もまた、その頃は
大学受験を控えていた時期。
なかなか会うことはなく
気づけば
2年の年月が流れていた
流行りの病でリモートワークが多くなった頃、
俺は「歌い手」という存在に興味を持った
この頃には俺も水のおかげで自分の意思でやりたい事を決めれる様になっていた
しばらく活動をしていると
「ないこ」という人に声をかけられた
グループを作りたい
そう言っていた
初めは疑っていたが
彼の計画性と人間性に惹かれ
仲間になる事にした
メンバーも集まって初めてリアルで会おう
そう決まって水の事をみつけた時は驚いた
「ほとけ」として活動する様になった水。
だけど
「久しぶりやな」
と声をかけてもきょとん、とされた
…まぁほとけは、馬鹿だから仕方ないか
活動を初めてからは
毎日が楽しかった
大変な事もあったが
大好きな仲間と支え合う事で解決していった
ないこが「すたぽら」というグループと仲良くなりだした
新しいグループをオーディションで作るそうだ
りうらも、ほとけも、初兎もアニキも
仲間が増えるのはいい事だと賛成していた
俺は今のままでもいいとは思ったが
ないこ達が選ぶメンバー
実際にいれいすを作ったのもないこだし人選間違えはしないと信じOKを出した
それが間違えだった
揃ったメンバーをみていると
本名「桜桃 亜蘭」 活動名 「LAN」 特技 「高音」 : :
というプロフィールをみつけた
桜桃は俺の事が嫌いだ
もし復讐を目的として入ったのだとしたら…?
俺は声優時代の事などメンバーに話していない
新しい自分として「If」という人生を歩みたかったから。
それなのにばらされてしまったら
もしかしたら嫌われるかもしれない
呆れられるかもしれない
捨てられるかもしれない
また……孤独にッ
だけどそんな心配はなかった
向こうも俺をみて驚いている感じだったから
桜桃が「元声優」という事実を公表する事には疑問を抱いたが
お互い過去のことは暗黙の了解で言わない事となった
体に異変が感じられる様になったのはそのあとすぐのことだった。
初めは腕や背中に赤い斑点が出てきただけだった
虫にでも刺されたのかと思ったが違った。
その赤い斑点が顔、手足、身体全体に広がっていったから。
虫刺されでこんな風にはならない
次に段々と動くことが苦痛になってきた
しんどい身体
次第に悪化しよく倒れ込むようになった
さすがにやばい
そう思った時には呼吸さえも苦しくなっていた
余りの酷さに
心配した先輩社員に勧められて
会社帰り、付近の評判の良い病院に向かった
担当医の名字が知り合いとかぶっていたが
よくあるものだったので大して気にはしなかった
その医師は
俺の身体をみて直ぐに
「全身性エリテマトーデス」という病気ではないかと言った
340種類程ある難病のうちの1つ
20~40代の女性に多くみられる
原因は不明だが本来身体を守る働きをする免疫系が自分自身を攻撃し
様々な体の部位に支障を起こす病気らしい
一生「完治」はしない病気
治ることの無い病気だという事は間違えではない
ただ、「寛解」と呼ばれる症状がない状態に持っていく事は可能
だけどその為には沢山の時間や費用がかかる
費用に関しては難病指定で国から多くの保証があるため問題はないが
時間が多く取られるのは活動者としてはかなりいたく大きな損傷となる
また、
治療は薬の中でもかなり強い「ステロイド剤」というものを使う
その薬を使えばかなり症状は抑えられるがその分副作用の影響は大きい
髪の毛が抜けやくすなったり
太りやすくなったり
それにもし「寛解」したとしても
日の光を浴びる事が難しかったり
ライブ等の激しい運動も控えなければいけない
メンバーに言えば
優しい奴らのことだ
活動の事はいいから寛解する事を優先として過ごして欲しい
そう言ってくれるだろう
それでも俺一人のせいで活動を遅らせたくないし
何より悲しませたくない
だから言わない。
それに、治療を選択したからって確実に治る訳では無い
死ぬ可能性だってもろにある
俺は人より多く、大切な人たちが命を落とす場面をみてきたが
その時の絶望は言葉では言い表せれない程だった
メンバーにはそんな想いをして欲しくない
死ぬなら1人で死ぬ
幼少期から孤独だった俺にはピッタリの結末だろ
それなら嫌われるのが1番手っ取り早い
俺は自分の事を嫌っているであろう彼奴を呼び出した
桜桃は怒り呆れながらも
話を聞いて
自分にも得する要素がある事に気づいたのであろう
怪しみながらも引き受けてくれた
実行日。各グループ同士今後の活動を決めていく会議で
桜桃は過呼吸を起こす
流石元声優
事情を知っている俺自身も騙されてしまいそうな迫力だった
俺もそれに合わせ
ないこが呼ぶ声を無視し
真っ暗なスマホの画面をいじる
不信そうに俺をみつめる
すたぽらのこえとれる。
この時はまだ俺の事など焦りで見えていない 、いるま
良かった。上手くいく
そう確信した
後はないこだけ、
ないこが嫌ってくれたら
あとは…
だけど、その瞬間
活動を初めてからの思い出が
次々と脳内に蘇る
繰り返すフラッシュバック
初めて会った日のこと
初めて動画を投稿した時のこと
LIVEをした時のこと
喧嘩したこと
笑いあったこと
喜びあったこと
そして
俺を合わせて
りうら
ほとけ
初兎
ないこ
アニキ
みんなで組んだ
暖かい円陣
俺が辛かった時は
夜中なのにも関わらず
全員が公園に集まってくれた
何をする訳でもない
何か特別な事をしてもらった訳でもない
それでも
誰にどんな言葉を言われるよりも
心が軽くなった
いれいすはメンバーは
俺の「家族」の様な存在なんだ
嗚呼…なんて皮肉な事だろう
あれだけ死にたいと願っていた時は叶えてくれなかったくせに
今となって
やっと希望をみつけた瞬間に
こんな事になるなんて
こんな事なら
幸せなんて知りたくなかった
ずっと
孤独の方がマシだったよ
”チクタクチクタク”
時計の秒針だけが
僕の止まった世界に鳴り響く
一旦会社自体を閉じる事を決めた
今日の会議
解散後は
何となくいれいすのメンバーと話すのも気まずくて
初兎ちゃんに声を掛けられた気がするが
無視して家に帰ってきてしまった
このままじゃいけないなんて分かっているけど
やっぱり いふ君のことを悪役に仕立て上げるらんさんが許せなくて
何も疑わずにいふ君の事を責めるシクフォニの皆が怖くて
それでもやっぱり
仲間として過ごしてきた時間は宝物になって
楽しかった時間が全て無くなってしまうのは何としてでも止めたかった
VOISING結成日にタレント全員で撮った集合写真
みんな笑顔でこちらを向いている
こうみると皆、1年前とすごく変わった
お互い遠慮なく気楽に過ごせるようになったし
笑顔でいることも多くなった
いふ君なんて…
いや…青くんなんて
いれいすの「-hotoke-」と「If」
として出会う前
ネカフェで良く会っていた
年上の男の人
全てを諦めた様な顔をしていた彼は
暗く、今とは別人のようだった
だけど「いれいす」に入ってからは
そんな過去など無かったかの様に輝いていた
「久しぶり」
そう声を掛けられたときは
返事をするか凄く迷った
だけど
彼の過去を知らない人しか居ない方が
向こうにとってはやりやすいと思って
忘れた振りをした
本当は忘れた日などなかったよ
だって
1度たりとも言ったことなかったけど
僕は元々彼の、岩崎 風雅さんのファンだったからね
だからこそ
らんさんが
ライバルであった彼を恨んでいることに気づいてしたし
彼以上に警戒もしていた
声優の世界なんて僕には想像もつかないくらい過酷のものだろうけど
それでも…大切な人は守りたい
推しを
仲間を家族を守りたい
そんな事を考えていると
リスナーさんから1つのDMが来た
🎲H
「@hotoke_imudayo_」さん 突然のDMごめんなさい! 本当はないこさんに言うべきだと分かっているのですが平日はお仕事だと言っていたので💦 えっと…いふさんの個人配信がまだ始まっていなくて…もう30分くらい遅れているのですが報告がないので。 何も無ければ良いのですが一応メンバー様にお伝えさせていただきました!
彼の配信は9時半から
時刻はもう10時を過ぎようとしていた
あの時間に厳しい彼が報告無しに遅れるなんて
活動してきた中で1度たりともなったった
心配になり連絡をするが
なかなか出ない
これはまずいと思い
いふ君急用出来ちゃったらしくて配信はおやすみします!! 楽しみに待ってくれていた子ごめんね💦
とだけポストしてから
何かあった時の為に一応合鍵を持って彼の家に向かった
彼の家について
インターホンを押すがやはり出なかった
電気は付いていたため
家に居ることは確かなのに
合鍵、持ってきておいて良かったと思いつつ
家のドアを開けると
玄関の前で苦しそうに倒れている彼がいた
🎲H
🎲H
🎲I
呼吸も荒く
身体中が真っ赤なブツブツに染まっている彼
🎲H
🎲H
🎲H
🎲H
🎲I
🎲H
🎲H
🎲I
🎲H
僕は直ぐに病院に連絡を入れた
運の良かった事に空いている時間帯で直ぐにみてもらえるそうだ
派遣された救急車に乗って
僕たちは病院へ向かった
無事を祈りながら
「彼を助けて」
ずっとそう囁きながら
時系列、分かりにくくてごめんなさい。 一応順番的には いふ君とらん君が公園で出会う ⬇ 欠席連絡(その場面はありません) ⬇ 会議 ⬇ いふ君の過去 ⬇ ほとけ君side∽らん君の過去 ⬇ ⬇ 病院に行く みこと君side ⬇ 病院に行く
という感じです。 「いや、図にされても分からんがな」って方は💬ください。出来るだけ丁寧にお知らせします。 要は言いたいことは、いふ君とらん君の過去順番的には逆に書いちゃっいました…という事です…笑 なので、らん君たちが病院に着く頃にはいふ君たちいます! 瞬間移動したわけでは無いのでそこだけお願いします。
コメント
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うち何となく当たってた...?!✨ はい、待ってます✨((もう凄すぎて言葉ないです。(?)
続き来たー! すごい…凄すぎる…(笑) 主さんもしかして医療系の学校に通われてますか?全身エリテマトーテス?私は医療系学校に通ってるけど聞いた事のない病名だったので!!