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鬱蒼と茂る緑を駆けるひとつの影。
その影は一通の便箋を握りしめて、ひたすらに駆けた。
しばらくすると白い漆喰の壁が周りの緑に良く生える一軒家が見えてくる。
その影は導かれたかの様にその一軒家へと足を運ばせた。
ちりんちりん
扉を開けると来客を報せる鈴が 音を立てる。
暗めの木の床にふんわりと香る 甘い匂いが部屋を満たしていた。
床の色に比べては少し明るい木でできたカウンターとその奥にある棚。
棚の中には様々な色をした飴玉が 沢山入っている瓶。
店主
黒猫
奥の部屋からすっと現れた女性。 その腕の中にはかわいらしい黒猫が抱かれていた。
大和
店主
大和
望み…?望みなんて急に言われても思い付くものはなんにもない。
強いて言うのならば勉強が出来るようになりたい程度だ。
店主
大和
店主
そう言って奥の棚を漁り始める女性。 いつの間にか黒猫はすたすたと自分の寝床であろうクッションで目を瞑っていた。
ことんと音がした方を見やると小さめの袋に綺麗な群青色の飴を詰めて出口を細い紐で蝶々結びにしている女性の姿。
店主
そう言って差し出された飴玉の袋を手にした途端視界がぐらつく。
店主
店主
最後に分かったのは、目の前の女性が綺麗なお辞儀をしたことだけだった。
大和
随分と、不思議な夢を見ていた気がした。
見慣れた部屋の天井と白い漆喰の壁。
そこにはいつも通りの日常がそこにある。
言い様のない安心感と共にふいに右手を見るとそこには、
見た事のある青い飴玉が自分の手の上でぼんやりと光っていた。